岡山大学に通う小川みづきは、半年前に母親を亡くし、その借金のため大学をやめることを決意した。同じ頃、20年前に母娘を棄てヨーロッパを放浪していた父、信三が日本に戻ってくるという手紙が届く。 自分はこれからどう生きていけばいいのか? それさえも解らないまま過ぎていく日々。 やがてふいに出会う父と娘。 しかし、みづきは信三を許すことはできなかった。 そんな中で同じ小学校に通っていた二階堂さゆりとの再会や、謎の青年内田啓介との出会い。更には信三を昔から知るバルカンや水野照子との話を通して、みづきは自分の中で何かがゆっくりと変わっていくのを感じた。 「昨日はそうだった。今日はこう。明日はまた別。そういうことかな」 「私、大バカじゃったね」 「大バカでええんよ。大バカじゃねえとおえんのよ」
岡山の夏を舞台に、虚構と現実が交錯する不思議な物語を、福間健二監督が、新人西脇裕美ほか、岡山の娘たちをフューチャーして撮りあげた話題作。 |
小川みづき母に反発しながら、母のそばを離れられなかった。生意気さ、芯の強さ、人に甘えたくない気持ちがある。中学の頃から農学部に進もうと思っていた。母の死後、とくにどう生きていいかわからなくなった。何ができるのだろう。「女盗賊」という言葉に漠然と憧れている。もしかしたら本当はラッキーガールか。 |
二階堂(篠崎)さゆり小学生の時、みづきと同じ学校に通っていた。高校を卒業すると同時に、元暴走族のトラック運転手と結婚。19歳で娘を生んだ。 一年前に夫が喧嘩で殺された。不良性とたくましさ。青果市場で働いている。将来は女実業家。 |
倉田智子将来は有名な作家になる。冒険心、好奇心旺盛。「女性白骨遺体事件」や死刑囚「宇井リョウジ」に興味を持つ。みづきに関心があるのは、みづきのことを小説に書こうと思っているからでもある。ワルの雰囲気を持つ年上の男とつきあっている。好きな作家はジム・トンプスン。「こんな國滅んでしまえ」が口癖。 |
内田啓介孤児院で育ち、同性愛的な傾向があった。天使的な優しさの持ち主だが、犯罪者になりかねない大胆さも。現実と想像の区別がつかなくなる危険性もある。時々錯乱する。アゴタ・クリストフの描いた双子の兄弟の一人に自分の運命を重ねている。映画好き。幻の傑作を一本撮って、その後行方不明になるのでは。 |
バルカン詩人。どうやって生計を立てているのかわからない。信三の教え子で、奈津子(みづきの母)とつきあっていたこともある。やくざも警察も恐れないような破滅的なところがある一方で、信三に対しては昔と立場が逆転して保護者的。 |
水野照子ズバリ、いい女。クールなおばさん。四回結婚して離婚した。魔女的。この世の奥にあるものをシニカルに見抜きながら、どこか人のよいところも。みづきは昔からこの人が苦手だが、智子は憧れるだろう。 |
立花信三元岡山大学の英語教師。みづきの生きてきたのと同じ時期を、ウェールズ、マケドニア、スペイン、バスク、フランスなど、ヨーロッパを放浪して過ごした。 詩人にも革命家にも商売人にもなりそこなった。トロツキーを文学として愛読。ただの酔っ払い。男のズルさ、いいかげんさ、やさしさが同居している。 |
バルカン・啓介・盛ちゃん
さゆり・みづき・啓介・三船・信三
青果市場のみづきとさゆり
演出中の福間監督