2025年7月16日
統計データの一部を更新しました。
2025年7月12日
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ご不便をおかけして申し訳ありませんが、ブックマークの変更をお願いいたします。
2025年7月5日
気になるデータを2つ。
ひとつは、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の今年1-3月の運用益が8.8兆円の赤字になったというデータ。4月以降、世界的に株価が急回復しているので、そのかなりの部分は取り戻せていると思うが、株価下落時のリスクの大きさを改めて気づかせてくれた。
もうひとつは、2024年度、日本の株式の32.4%(時価総額)を外国人が所有しているというデータ。
内閣府によると、2003年3月末における外国人の株保有比率は17.7%。20年でほぼ倍増したことになる。このままのペースで増加が続けば、あと20年余で日本の株式の過半数を外国人が保有することになる。
ちなみに、資本取引の国際化が日本より進んでいるとされるアメリカの数字は日本よりかなり低い。内閣府によれば、2003年6月末、アメリカの株式の外国人保有比率は7.8%と日本の半分以下。
最近はどうかといえば、米財務省によれば、2024年6月末時点での外国人の株保有比率は21%と日本よりかなり低いうえ、この十年あまり変化していない。
日本企業は株主還元に消極的で、海外投資家の日本パッシング(通り抜け)を引き起こしているといわれ続けた。しかし、最近は、潤沢な内部留保や資産をつかった配当、自社株買いの大判振る舞いがおこなわれ、その結果、株式の過半数が外国人所有になる可能性が見えてきた。
東証によれば、2024年度末、外国人が保有する日本株の時価総額は306兆円。これに対し、財務省によれば、日本の対外資産は貸付金や国債が中心で、株の対外保有は188兆円にとどまっている(投資ファンドを除く)。かなりのアンバランスである。
このような変化を受け、今後、労働分配率がどう変化していくのか注意してみていきたい。
2025年7月2日
今年の4月3日からアメリカに輸入される自動車に25%の追加関税が課せられた。価格転嫁はまだその途上であるが、下の図にあるように、4月から6月のアメリカ自動車販売台数はメーカーにより明暗がわかれた。


* テスラは推計値。
* ステランティスを除く
価格転嫁が進むにつれ、どのような変化が生じるのか注意して見ていきたい。
(参考) アメリカの毎月の自動車販売台数はこちら。
2025年5月12日
ニュージーランドのビクトリア大学でお世話になったグレイム氏が来日。ニュージーランドの近況をお聞きすることができた。
驚いたのは、先週、賃金平等法(Equal Pay Act)の修正が成立し、女性が賃金の不平等を訴えるのが難しくなったということ。
ニュージーランドは、1972年、同一の職務のみならず、異なった職務であっても実質的に同等とみなせる職務(技能、責任、経験など)について男女の賃金格差を設けることを禁止する賃金平等法を成立させた。いわゆる同一価値労働同一賃金法(コンパラブルワース)の成立である。
しかし、先週、与党(国民党、ACT党、ニュージーランド・ファースト党)は、賃金格差の証明を厳格化し、その結果、現在おこなわれている多くの訴えをすべて無効(リセット)にする法改正を成立させた。
ニュージーランドは、世界ではじめて女性の参政権を認めるなど世界でもっともリベラルな国のひとつであったが、1980年代から逆向きの動きが目立つようになっている。

NZにおける女性参政権運動の中心人物のひとりケイト・シェパード。写真は、NZ国会内の銅像。
2025年4月23日
4月9日、トランプ大統領は4月2日に発表したばかりの相互関税(日本24%など)を90日猶予すると発表した。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、株価急落をとめるため、ナバロ貿易・製造業担当上級顧問の不在中に、ベッセント財務長官(元ヘッジファンド・マネージャー)とラトニック商務長官(元証券会社CEO)がトランプ大統領を説得して90日猶予を決めたと報じている。これにより、米株価は大反発し急落がとまった。
ナバロ氏は、前政権時代から高関税による製造業の国内回帰を主導している人物(ライトハイザー氏は今回の政権には入ってない)。ナバロ氏は2021年の連邦議会襲撃事件について下院での証言を拒み、4か月の禁固刑となったことから、トランプ氏の信任は絶大と言われている。
90日の猶予期間後、相互関税がどうなるのか世界中が注目している。

2025年4月3日
日本ではアメリカの税金の歴史があまり知られていない。
トランプ大統領の関税引き上げ演説にあったように、アメリカで恒久的な連邦所得税が誕生したのは1913年のことで、建国以来それまでは関税と酒・たばこの物品税で財政がまかなわれていた。しかも、長い間、課税最低所得(いわゆる103万円のカベ)が非常に高く設定されていたため、一般の労働者が連邦所得税を支払うようになるのはなんと第二次世界大戦がはじまった後のことであった(詳しくは拙稿参照)。
トランプ氏の言うように、そうしたなか19世紀末から20世紀初頭にかけて、鉄鋼、自動車など大規模な産業が急速に発展し未曽有の好景気−金ぴか時代−が到来した。
トランプ氏は、今回の関税引き上げにより、国内に製造業が回帰するとともに、所得税などの大幅引き下げが可能になり、金ぴか時代が再来すると主張している。
ところで、トランプ氏の説明でひとつ抜けている点がある。それは、1920年代に共和党が所得税率を大幅に引き下げたが、その後、所得格差が拡大し大きな社会問題になるとともに、行き過ぎた投機により1929年の大恐慌が引き起こされたという点である。
これからいよいよ減税の議論がはじまる。はたして1920年代の轍を踏むことはないのか、注意してみていきたい。

2025年3月31日
2025年3月27日(木)、トランプ大統領は、安全保障にかかわるという名目により、100万人以上とも推計される連邦職員から組合加入の権利をはく奪する大統領令を発令した。
一方、トランプ大統領は民間労組に対してはいまのところ融和的な姿勢をみせている。
アメリカには、労働組合の承認などをおこなうNLRB(全国労働関係局)という重要な機関があるが、トランプ大統領はこの長官にリベラル派のチャベス・デアマイア(Lori Chavez-DeRemer)氏を指名。2025年3月10日、米上院は民主党から多数の賛同をえて同氏を67対32で承認した。デアマイア氏は下院議員時代に労働組合の権利を強化する法改正(Protecting
the Right to Organize Act)に賛成していたことが知られている。
トランプ大統領の当選にはラストベルトなどの民間ブルーカラー労働者の支持が大きな役割をはたしたことが知られている。
2025年3月21日
2025年3月17日、トランプ大統領は連邦政府との契約企業に17.75ドルの最低賃金を義務付けたバイデン大統領の大統領令を廃止した。
この結果、2022年1月30日以前に連邦政府と契約関係に入った企業は、オバマ大統領の大統領にもとづき(こちらは廃止されていない)13.3ドルが最低賃金となる。それ以降に契約関係に入った企業には、7.25ドルの連邦最低賃金あるいは州の最低賃金のどちらか高い方が適用されることになる。
最低賃金の引上げは、党派を問わず人気が高く、共和党が強い州でも一部で引き上げが進んでいる。今回の決定が、今後、各州での最低賃金引上げの動きに影響を与えるかどうか気になるところである。
2024年12月18日
「1840-1857 ニュージーランドにおける世界最初の8時間労働の実現:イギリス、アメリカ、オーストラリアとの比較」という論文が出ました。興味のある方は読んでいただけると幸いです。

上の写真は、ニュージーランドで8時間労働を最初に実践したサミュエル・ダンカン・パーネルのお墓。墓碑には「8時間労働の父。1840年に(8時間労働を)実践したことが、すべての労働者の8時間労働の礎となった」と記されている。
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