小林青年インタビュー
赤い文字は最後に脚注があるから読んでね
Q 今回は「持ち込み映画祭」と「A」の担当チーフということですが、そもそもこの映画祭に関わろうと思ったきっかけは何ですか?
A もともと、映像を作る仕事をしてたというのもあるんですけど、自分としては「A」をどうしてもやりたいってのがあって、映画祭に最初から関わったらそれができるんじゃないかなって入ったのが始まりで、はいってみたらなんか「持ち込み映画祭」っていう面白そうな企画があったので、ずるずるという感じですかね。
Q 岡山映画祭の中でも異色の、「とにかく集まった作品を全部上映しよう」という太っ腹企画なんですが、それに対して反対とかはなかったんですか?
A いや勿論ありますよ。スタッフの中にも自主製作している人がいて、クオリティが保証されないから、まず審査してからという声や、前回の時も出品した人から「自分の作品をこんなレベルの作品と同時に上映するのはひどい」とかあったらしいですけど、でも、なんとなく楽しいのが来るかなっていう確信はありましたよ。大体審査なんて僕達ができるわけもないしね。
Q 今回は特にジャンル分けも面白かったですよね。それぞれを「春夏秋冬」にあてはめていくやり方というのは、小林さんの考えですか?
A これは、スタッフの話し合いです。送られてくるものがフィルムやビデオのソフトの問題から、製作規模の違いや、従来の劇映画とドキュメンタリーの区別なんか関係なくやってくるわけだから、どうしても内容で分けるしかないんですよ。でも内容といっても「笑える」とか「泣ける」なんてのも変でしょ。だったらいっそのことその作品のもつ季節感で分けるのが自然のような気がして。
Q 例えば「海に続く滑走路」なんて映画は、アクションとかコメディとかで分けるより「真夏の映画」と言った方が映画の本質に近付ける感じですよね。そういえば、あの作品の監督さんも、上映日に福岡から駆け付けてくれて「こんな枠のない映画祭はない」と誉めて(たぶん)ましたが・・・。
A 枠のことも考えたんですよ。ビデオで何時間もあるものが来たらどうしようとか、重複応募可というのも映画祭のオリジナリティの問題でどうかとか・・実際ぴあのフェスティパルでも入選するようなものも幾つかありましたし、既にビデオで販売してるようなものもあったんですけど、でも基本はとにかく全部やると決めたんだし、枠に入らないものこそ見たいっていうひねくれたところもあったんで、何時間でもやってやろうじゃないかって・・・。
Q 確かに「これは長すぎるだろう」というのもありました。
A ビデオは長く撮っても安いというのが一番いいところなんで・・・いやホントは時間枠を100分にしようという声がかなりあって、半分決まりかかってはいたんですが、でもそうしたら今回の「楓牙」は上映できなかったわけですから、結果的には正解なんですよ。
Q 上映すること以外に、作者への働きかけというのは?
A まず、全作品のリストの掲載パンフは作者に送りました。その上で、上映作品をビデオにまとめた作品集はできないかと問合せはしたんですが、半分くらいの監督は既にネットを使ったりして販売や公開をしてたので、それは断念しました。また、確かに太っ腹な企画ではあるんですが、上映の場所を確保したというだけで、作者に還元する方向にはまだ向いていないんです。
Q というと?
A これは映画の関係者に言われたんですが、映画を善意で集めているだけで、つまりは上映してやってるんだという意識がどこかにないのかって。実際作者には上映にあたってフィルム代金という形での支払いはできてないわけですし、タダで集めたと言われたらそれはそうなんですよ。でも、例えば賞品をだすなんてのもどっか違うと思うし、そのあたりが次へ繋げる努力とでも言いますか・・・。
Q でも作者にとっては上映場所の確保というのが切実なんじゃないですか?現に「九州は自主上映の映画祭がない」とか「インターネットで検索したら、新潟とここ(岡山)しか私の映画は応募できない」という声も聞いてますが・・・
A そう言ってもらえるのがホントはうれしいんですけどね。でも、岡山へやってきた監督達はお互いにこの場所で知り合って、ネットワークを作っていったみたいだし、インターネットの掲示板を使って上映した作品の批評やなんかを交換しあってるようだから、「持ち込み映画祭」がやろうとしたことは意外に速いスピードで広まるんじゃないですか。僕らもできる限り続けていきたいと思いますし、その意味では続くんじゃないかな。
11/23 「A」上映会場にて
脚注 「持ち込み映画祭」
「持ち込み映画祭2000・春夏秋冬」は作品総数41作品。総合計時間1440分で五日間にわたり、奉還町公会堂を会場に上映後、11/23にはアンケートをもとに「千日前ホール」でアンコール上映が行われました。春夏秋冬のテーマのもと、スタッフもそれぞれの季節感溢れる衣装で会場入りし、サンタの横をセーラー服のおねいさんが行き交い、寒空の商店街をアロハ姿の若者が走るという尋常ではない空間に、吃驚した方も多かったでしょう。ごめんなさい。でもきっと次回も続くよ。
「海に続く滑走路」
福岡の浦辻純子さんの作品。高校三年の夏休み、もてない女子高生のミミは、公園のボートから海沿いの遊園地へと辿り着く。そこでは、自称テロリストの女がピストルを武器にあばれまわっていた・・アクションコメディです。と紹介されてはいたが、やがて閉園となる遊園地が、ミミの心象風景と一体となり、夏が終りに向かうことでそれぞれの時代の終わりを告げることを象徴的かつリリカルに表現した傑作。「必要だと思ってるひとのことを誰も考えちゃくれない」というテロリストの言葉は胸をうつ。
「楓牙」
既に、テレビなどでも取り上げられていて、見た人もあるかもしれないけれど、「世界観を大切にしたエンターテイメント映画」という看板に偽りはありません。梅崎雄三監督作品。この人は近い内にメジャーに出てくるでしょう。そうじゃなければ、きっと日本のプロデューサーたちは無能です。この作品自体もきっと色んなところで上映されるでしょうから、一度見て下さい。(ふうが)といいます。