自主上映講座

Lesson 1 会場を決めましょう

 自主上映にあたっての会場選びは、上映する映画の性格で変わってきます。
 常設の映画館とは異なり、制約も場所によって様々です。
 今回は、主に考えられる会場を三種類に分類してみます。

A 美術館 市民会館 公民館などの公的なホール
B ライブハウス、貸ホールなど
C 喫茶店、画廊などの店舗

長所

短所

借料が安い 

キャパシティが広い 

駐車場の心配があまりない 

知名度が高い 

美術館などの企画として上映できる可能性もある

規則が多い。

時間の制約がある。

申込み倍率は高い

時間に幅をもたせられる。 

セッティングが簡単。

飲食可のところが多い。

なんといっても借りるお金が高い。 

時間の幅がある。

飲食可の場合もある。 

借料が比較的安い。

狭い 

映写室等の設備がない。

音響からのセッティングも必要。

場所がわかりにくいところが多い。

 

さて、会場が決まったら、作品の時間に応じて、上映スケジュールを組みますが、上映前の準備と撤収にかかる時間を多めにとっておく必要があります。もちろん、休憩時間も若干の余裕をもってとっておくと、万一準備が間に合わず、開始時間が遅れても、調節が可能です。

90分の映画を美術館のホールで上映するのなら、こんな感じでスケジュールを組むといいのでは・・。

08:30 準備開始
10:00 一回目
11:30 一回目終了。スタッフの食事時間
13:00 二回目
15:00 三回目
16:30 上映終了 片付け
17:00 撤収

 上映スケジュールが決まると、様々な交渉が始まりますが、まずは次のチェックシートを参考に予算を考えるといいと思います。赤い字のところで出費が必要です。
 
映写機材が(ある・ない

映写技師が(いる・いない

暗幕やスクリーンが(ある・ない

音響設備が(ある・ない

機材の運搬車が(ある・ない

ゲストの招待が(ある・ない)
         
 また、会場によっては冷暖房費を別に請求される場合がありますので、事前によく確認するといいでしょう。


Lesson 2  宣伝材料(宣材)が届きます。

一般的な宣材キットのは以下のものが入っています。

1・ポスター
2・パンフレット
3・プレスシート
4・チラシ
5・スチール写真

 これらの代金が、フィルム代とは別に請求されることもあります。
 また、各々を別注文しなければならないこともあり、フィルムの交渉の時に確認しておかねばなりません。また、印刷された前売り券が用意されているかどうかも事前に確認しておかないと、自分たちで作る場合の準備が必要になります。
 それでは、各々を使って宣伝をしていきましょう。

1・ポスター編

 ポスター貼りは、なじみの喫茶店とかショップを回って交渉しましょう。
 屋外は意外に効果が少なく、また街頭では軽犯罪法にもふれることが多く、お勧めできません。(貼っている途中で現行犯逮捕された人を多く知っています
 資金が豊富にあればポスターを大量に使うこともできますが、ポスターを貼ってもらった店にチラシや前売り券をおいてもらったほうが効果的です。もちろん、当日の宣伝と販売用に余裕をもって用意しておくといいと思います。

2・パンフレット編

 宣伝というより当日の販売がメインになるとは思いますが、ショップやマスコミを回る時に事前情報として持っておくと幅広く対応できます。
 もっとも、資料としておいていってくれと言われる場合も多く、そこで売ってしまう猛者もおりますが、気の弱い人はあらかじめ多めに購入しておくのが無難です。

3・チラシ編

 これに関しては、消耗品と割り切って大量に準備するほうがいいと思います。
 また、一般的にチラシの裏面の下、何分の一かは個別の上映会情報を印刷できるよう白くなっています。自分たちの上映会の情報を印刷する場合、印刷所への注文は千枚単位でおこなうのが普通ですから、その辺も考慮しておくとよいでしょう。
 宣伝方法は、

○ポスターを貼ってもらった店に置かせてもらう。
○大きなイベントのある会場の前で、あるいは、休日の繁華街で直接手渡す。
○関連のイベントで配られる資料の中にはさみこんでもらう。

 などがあります。いずれも事前に許可をとっておくのは当然です。特に、街頭は事前に警察に届けなければならないことが多いので気をつけましょう。
 また、大量に消費するために、配給からの正規のチラシとは別に、コピーした手作りのチラシを配布するという手もあります。千枚単位で使うものですので、この経費は馬鹿になりません。
 一斉に配る時にアルバイトを使って勝負するということも考えられます。
 スタッフが少なくて・・・と言うあなた。短期決戦の時はいいかもしれません。

4・プレスシート、スチール編

 これらがキットにはない場合もありますが、主にマスコミ向けの宣伝で使います。

 新聞社の文化部で映画の担当者に渡す時、写真のあるなしでは扱も変わります。上映会自体を記事にする場合にはもちろんのこと、上映の告知だけの場合でも、映画の内容がわかっているのといないのとでは記事の分量に若干変化があります。まして、映画の一場面のスチールはネタ不足の新聞にとっては救世主になるかもしれず、ぜひ有効に利用することをおすすめします。
 テレビ局でも、スチールは有効です。ローカルニュースの中で使われればかなりの宣伝効果になりますし、一般配給ではない自主制作フィルムでは予告編もないでしょうから、プレスシートとスチールで内容を知ってもらうのが一般的です。もちろん、自分が出演して自主上映活動についてインタビューを受けるというのもありです。
 意外に効果があるのはラジオ局(特にFM)かもしれません。
 どの局も割と頻繁に映画について語るコーナーを放送してますし、催しものの紹介でもオーケーでしょう。理想的にはやはり自ら出演して語るというのがいいとおもいますが、プレスシートを渡しておけば、構成して、あたかも見てきたように話してくれるので◯です。
 地元のタウン誌もあなどれません。映画担当の人の中にはほんとうにオタク(褒め言葉)が多いので、時として結構大きな扱いが期待できます。

 さて、宣材キットの他に考えられる方法はダイレクトメールがあります。
 他の団体の名簿を使う時には、充分注意しないと、その団体の信用問題になります。
 独自の名簿が有れば、上映の情報に加えて、そのDM自体を前売り券として利用するのもいいでしょう。
 ハガキを持参してくれた方は当日精算として、前売り料金とか、割引料金で入場できるという風にすれば、仕事の都合で前売りが買えないという人達にも喜ばれます。
 ただ、ハガキで来てくださるお客さんは、発送した10〜20%くらいです。経費の点と相談してやっていくのが賢明かとも思います。

 と、ここで肝心なことを忘れていましたが、前売り券はもう準備できてますか

 先に少し触れましたが、前売り券やチラシが配給の方で準備される場合には、上映会の情報を印刷するスペースが白くなっていることが一般的です。
 そのため、それらを早めに手にいれて、印刷所へ持ち込む必要があります。
 個々の場合で異なりますので、詳しくは書きませんが、やはり、最低百枚単位での注文となるはずですから事前によく確認したほうが無難です。
 また、最近はパソコンで印刷したものもあなどれません。(余談ながら、新機種のプリンターがでる度、そのサンプルを見てひっくり返って驚く私です)必要な枚数に応じて対応しましょう。

 で、前売り券が準備できましたら、先に書いたショップや喫茶店にでかけて臨時のプレイガイドを作ってもらいましょう。ポスターやチラシを見て興味をもった人が、すぐそこに前売りもあれば思わず買ってしまうのが人情というもの。正規のプレイガイドでは、手数料も必要ですが、それはそこ、あなたの交渉の腕しだいでなんとかなるもの。
 もちろん、正規のブレイガイドでは、きちんと手数料の交渉(売り上げの何%か)と引き上げの期日などの確認をしておきます。ここで必ず必要なことは、前売り券全部の半券部分に通し番号をつけておくということ。
 これをしないと、回収の際大混乱になります。
 どのナンバーを、どこに何枚渡して、代金の回収はどうなっているかということをノートに書いておくのは鉄則です。この番号は後々の流通の分析にも使えます。


Lesson 3  その他の準備は

 情宣活動に平行して行うことは、むしろ主催者のアイディアによるところが多いので、独自の企画で進めていただければと思いますが、

1・独自の資料作り。
2・アンケート用紙の制作
3・スタッフ試写

 などはやっておくと後で役に立つことが多いです。
 中でも、スタッフ試写は条件の許す限り必須事項です。
 フィルム状態のチェックは言うまでもなく、当日は雑用に追われて肝心のスタッフが見ることができなかったということはよくあります。音響のチェック、切り替えのタイミングなど事前に知っておかなければならないことは一杯です。


Lesson 4  さて当日は

 いよいよ上映会の日。
 では、持っていくもののチェックをしましょう。

1・フィルム 
2・文房具セット
3・釣銭
4・宣材、アンケート

 1のフィルム関連では、万一の切断に対応できるスプライシングテープ(カメラ店で購入可能 おそらく取り寄せ)があれば、安心です。ただし、配給に返却する時にはテープをはずして切断箇所に紙切れをはさむという方法が一般的でしょうか。

 トラブルがあった時は早めに配給元に連絡して、指示を仰いだ方がいいでしょう。

 文房具セットは テープ類 はさみ カッターナイフ 白黒画用紙 紙箱 アンケート用えんぴつなどが必要です。なかでも黒画用紙は、会場の非常灯をかくす時役立ちます。(本当は消防法で禁止。ただ会場によってはやたらと明るいものがあり、これは映写の敵と割り切って隠します)紙箱は釣銭入れたり、アンケートを回収したりとかなり重宝。あとは、受け付けで色々書いたり切ったりが多いので・・

 釣銭も忘れがちですが、上映日は金融機関の定休日が多いと思うので、直前で慌てないように事前に準備しましょう。

 さあ、会場に着きました。
 映写のセッティング、受け付けの設営、内外装はてきぱきと。
 アンケートや他団体のチラシなどの配布物は一人分をきちんと分けてすぐに手渡せるようにとか、飲食禁止の会場ではそのことを大きく書いて掲示したりとか、やること一杯。センスの勝負。

 また、当日の受け付けも、お客さんはまんべんなく来るのではなく、短時間に集中して来る場合が殆どなので、チケットと物品販売担当は分けておくほうが無難でしょう。 さらに、どうしても中途入場者がいるので、この人たちはどうするのかも事前にきっちりと決めましょう。(絶対に認めないのか、認めるなら会場の中を座席に誘導するくらいの心配りも必要です)

 では、上映開始です。
 撤収時間の厳守は当然ですね。


Lesson 5 上映後

 前売り券の回収、精算はできれば当日のうちに。
 ポスター、チラシもできるだけ早く外しましょう。

 謝礼が必要なところは、これも迅速に。
 後始末ができないということは、自分たちだけでなく、他の上映団体にも迷惑をかけます。
 アンケートから観客名簿を作ったら、アンケートのコピーを監督に送ると、たとえ罵詈雑言が書き連ねてあっても製作者としては嬉しいもんです。次回作の上映の打診があったり、稀に、次回作の資金援助の要請があったりして、スリリングです。

 いかがですか、これで自主上映なんて怖くないでしょ?


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