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【発明の名称】フリーバーン牛舎を用いた放し飼い方法


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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2002−125500(P2002−125500A)
(43)【公開日】平成14年5月8日(2002.5.8)
(54)【発明の名称】フリーバーン牛舎を用いた放し飼い方法
(51)【国際特許分類第7版】

A01K 1/08
1/015

【FI】

A01K 1/08
1/015 B

【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】4
(21)【出願番号】特願2000−328656(P2000−328656)
(22)【出願日】平成12年10月27日(2000.10.27)
(71)【出願人】
【識別番号】300077467
【氏名又は名称】渡邉 壮
【住所又は居所】岡山県真庭郡新庄村5677番地
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 壮
【住所又は居所】岡山県真庭郡新庄村5677番地
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【弁理士】
【氏名又は名称】森 廣三郎 (外1名)
【テーマコード(参考)】

2B101

【Fターム(参考)】

2B101 AA02 BB03 GB06



(57)【要約】
【課題】 糞尿処理施設を廃止した新たな放し飼い方法を提供する。
【解決手段】 フリーバーン牛舎で飼育牛を飼育する際に、飼育牛を放し飼いにする休息場3を発酵床
とし、糞尿処理施設16を不要にした放し飼い方法である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】 フリーバーン牛舎で飼育牛を飼育するに際し、飼育牛を放し飼いにする休息場を発酵床
とし、糞尿処理施設を不要にしたことを特徴とするフリーバーン牛舎を用いた放し飼い方法。
【請求項2】 休息場に載積する敷料の最高載積高を0.8〜1.8mとして発酵床とし、送風機を敷料表
面35m2以下に1基の割合で配して、該休息場に飼育牛を敷料表面10m2以上に1頭の割合で放し
飼いにしながら、少なくとも週1回の割合で休息場の敷料を切り返す請求項1記載のフリーバーン牛
舎を用いた放し飼い方法。



【実施例】本発明に基づいたフリーバーン牛舎(図1及び図2参照)を中国地方山間部に構成し、実際
に乳牛を飼育して効用を確認した。使用した牛舎における休息場の床面積は1260m2で、飼育した
乳牛は70頭(乳牛1頭/18m2)である。また、検討を容易にするため、載積高を一律に1.0m以上で敷
料(おがくず及びもみ殻)を載積した。敷料は、牛舎本体にシャベルローダを乗り入れて切り返した。
【0017】1年を通じた飼育から、敷料の載積高が1.6m以下が好適な飼育条件の臨界値であること
が判明した。また、敷料の切り返し間隔は、季節による変動は少なく、1年を通じて4〜5日に1度の
頻度が最も好ましいことが分かった。当然に敷料の交換をしなかったが、排出する糞尿は夏季で約
80%減、冬季で約20%減となった。最適条件抽出のための試験であったため、糞尿を完全に分解す
る迄には至らなかったが、特に夏季における80%減は大きな効果と言える。

詳細な説明

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、糞尿処理施設を必要とせず、休息場内で発酵乾燥を促進して
敷料の循環利用を可能としたフリーバーン牛舎を用いた放し飼い方法に関する。
【0002】
【従来の技術】現在の牛舎は、フリーストール牛舎及びフリーバーン牛舎に大別できる。両者とも通
路に面して休息場、給餌場又は両者を備えた牛舎本体を構成し、牛舎本体と結んだ搾乳室及び糞
尿処理施設を有する。両者の大きな違いは、休息場における牛の姿勢を制御するフリーストール(牛
床)の有無にある。
【0003】フリーバーン牛舎は、フリーストールを用いないために、牛の姿勢を制御して牛を清潔に保
つことが難しく、次の点に注意を要する。(1)休息場に敷き詰める敷料の堆積状態に傾斜を設け、でき
る限り牛の姿勢を制御する(牛は登り傾斜に対して前向きにしか進まない)。(2)送風機による積極的
な敷料の乾燥を図る。(3)採食通路上の糞尿は定期的に搬出する。(4)休息場における敷料の適時
除去、敷料を補充する。このほか、(5)堆肥を敷料として再利用するには、水分40%程度迄乾燥さ
せ、副資材を適度に混合するなどの工夫が必要である。
【0004】糞尿処理施設は、上記(4)及び(5)を達成する施設であり、基本的には太陽熱を利用した敷
料の乾燥を図るが、水分40%程度迄乾燥させるため、更に送風機等を併用し、乾燥能力を高めてい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】糞尿処理施設は、飼育牛が排泄した糞尿と敷料との混合により敷料
を発酵させ、堆肥化を促進する施設で、これにより単なる廃棄物であった使用済の敷料を有益な再
生資材として活用できるようになった。しかし、飼育牛1頭当たりが1日に排泄する糞尿は平均で
60kg余りで、通常数10頭〜100頭以上の飼育牛を飼っていることを鑑みれば、糞尿処理施設で処理
すべき使用済の敷料は膨大な量となる。これらすべてを堆肥化する能力が糞尿処理施設にあって
も、堆肥化した再生資材の提供先に限界がある(例えば、必要とされる堆肥の絶対量が少なかった
り、運送費がかかり過ぎて事実上受け入れできない)。こうした背景を受けて、近年では再生資材を
再度敷料として再利用する技術も開発されている。
【0006】ところが、再生資材を敷料として再利用する場合も、再利用できる量が限られていて、上記
問題は完全に解決されていない。更に、糞尿処理施設を用いる従来技術には、糞尿で汚れた敷料を
定期的に糞尿処理施設に搬入しなければならず、再生資材を再利用するのに再び牛舎本体(通常休
息場)へ運び入れなければならない問題がある。こうした糞尿処理施設に関わる問題は、労力、手間
及びコストの増加を招く。そこで、糞尿処理施設を廃止することを目標とし、新たなフリーバーン牛舎
を用いた放し飼い方法を開発するため、検討した。
【0007】
【課題を解決するための手段】検討の結果、開発したものが、フリーバーン牛舎で飼育牛を飼育する
に際し、飼育牛を放し飼いにする休息場を発酵床とし、糞尿処理施設を不要にしたフリーバーン牛舎
を用いた放し飼い方法である。具体的には、休息場に載積する敷料の最高載積高を0.8〜1.8mとし
て発酵床とし、送風機を敷料表面35m2以下に1基の割合で配して、この休息場に飼育牛を敷料表
面10m2以上に1頭の割合で放し飼いにしながら、少なくとも週1回の割合で休息場の敷料を切り返
す。本発明における対象飼育牛は、主に乳牛であるが、肉牛であっても構わない。
【0008】本発明のフリーバーン牛舎は、休息場に最高載積高0.8〜1.8mの敷料を載積し、休息場自
体を発酵床とすることにより、糞尿処理施設を不要にしたことを特徴とする。同様に敷料の載積高が
大きい発酵床方式牛舎では、通常深掘りにした休息場に敷料(木屑、おがくず、もみ殻やバーク等)
又は発酵敷料(前記敷料に発酵を促す微生物を加えたもの)を投入し、敷料表面をできるだけ通路と
面一にし、敷料の切り返しに専用の撹拌機構を備えている。これに対して、本発明では、定期的な
敷料の切り返しにシャベルローダ等を用いることができ、安価かつ容易に敷料の切り返しを実現して
いる。
【0009】載積高0.8m以上に載積した敷料に対し、飼育牛が排泄する糞尿は、積載した敷料内部に
埋没(糞)又は浸透(尿)し、飼育牛を汚染する虞れは少ない。また、載積高が従来に比べて大きい(従
来のフリーバーン牛舎は載積高30cm以上、高くても60cm程度)ので、糞尿を分解する好気性菌の活
動温度が安定して維持できる保温効果を発揮しやすい。発酵により堆肥化した敷料は、そのまま再
生した敷料として利用する。送風機は、発酵して発生する二酸化炭素を散乱させるほか、水分の蒸
散を促す働きを有する。敷料の載積高が大きいので、仮に送風機を牛舎本体天井に設けても送風機
から敷料表面までが短くなる。送風機は牛舎本体内の温度管理も兼ねるが、前述のように水分の蒸
散が主目的であるため、風速より風量を確保できるように、従来よりも送風機の数を増やす又はより
大型の送風機を用いることが好ましい。送風機の数を増やす場合、送風機を敷料表面35m2以下、よ
り好ましくは30m2以下に1基の割合で牛舎本体天井から吊り下げるとよい。
【0010】載積高を大きくする意義は、上述のように牛舎本体内での発酵を促進する環境構築のほ
か、敷料の良好な切り返しを可能にする点にある。糞尿は載積高の大きな敷料内部に埋没又は浸
透していくが、せいぜい載積高上区分(敷料表面付近)に留まり、載積した敷料の大部分は糞尿に汚
染されない。そこで、定期的に敷料全体を切り返す(撹拌する)ことで、汚染されていない敷料を載積
高上区分に移動させ、飼育牛が直接接する敷料表面を清潔に保つことができる。こうした載積高の
意義から、牛舎本体が許す限り敷料の載積高を大きくすることが望ましいように見えるが、実際には
載積高1.6mを超えると拒否反応を示す飼育牛が見え始めるので、敷料の載積高は0.8〜1.8m、好
ましくは1.0〜1.6mとする。
【0011】フリーバーン牛舎は、元来フリーストールを設けないので、飼育牛相互の排泄による汚染を
防ぐため、フリーストール牛舎に比べて収容する飼育牛を減らす傾向にあるが、本発明のフリーバー
ン牛舎は基本的に敷料の交換をしないため、排泄直後の飼育牛の汚染を減らす目的で、飼育牛毎
の割り当て床面を広げることが望ましい。また、休息場の敷料表面が高くなることから、牛舎本体に
おける飼育牛に対する空間が高さ方向に狭くなるため、水平方向にゆとりを持たせる観点からも飼育
牛毎の割り当て床面を広げる方がよい。好ましくは、飼育牛を床面15m2以上に1頭の割合で放し飼
いにする。
【0012】また、本発明のフリーバーン牛舎は、糞尿を含んだ敷料を糞尿処理施設に移さず、まだ汚
染されていない敷料と切り返しにより入れ替えることで、牛舎本体内で敷料の発酵を促進し、敷料表
面の清潔を保つ。しかし、この切り返しのためだけに別途設備を設けるのはコストがかかるほか、こ
の設備が牛舎本体にあることで、飼育牛に空間的な圧迫感を与えたり、場合によっては飼育牛を傷
つけることにもなりかねない。そこで、休息場に対してシャベルローダを乗り入れて、容易かつ迅速に
敷料を切り返す。従来の発酵床では、深掘りにして敷料を投入しているので、このようなシャベルロ
ーダによる切り返しはできないが、本発明では休息場相当の床面に敷料を載積しているだけなの
で、前記のような機械作業者による切り返しが可能である。敷料の切り返しは、少なくとも週1回の
割合、好ましくは4〜5日に1度の頻度とするが、季節や地域差による環境の違いによって、切り返し
頻度は前後する。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。図1は本発明
を適用したフリーバーン牛舎の構成図(図中矢印は動線)、図2は同牛舎における牛舎本体1の断面
図である。図1に示す構成は、一般的なフリーバーン牛舎の例にならったもので、実際には通路2、
休息場3、給餌場4、待機場5又は搾乳室6の組み合わせ、配置は多種多様であり、図示に限定さ
れない。根本的に従来と異なる点は、糞尿処理施設16がない点である(図1では比較のため、破線
枠にて表示している)。また、牛舎本体床面7に対して30m2以下に1台の割合で、敷料表面8に向け
た換気扇(送風機)9を牛舎本体天井10から吊り下げている。更に本例では、換気用窓11を壁面12及
び天井10に設けている。
【0014】図2に見られるように、牛舎本体1を構成する休息場3、通路2及び給餌場4を含めた牛舎
本体床面7は略平坦になっており、休息場3は壁面12に向かって上り勾配として最上部を載積高1.6
mの敷料13を載積している。休息場3を上り勾配とすることにより、上り勾配に向かって前進しかしな
い牛の習性を利用して、飼育牛の姿勢を制御することができる。通路端は飼育牛及びシャベルロー
ダ(バケットによる攪拌機能を有する作業車)の出入口14に繋がっている。
【0015】休息場3の床面積が1000m2とすれば、換気扇9の数は33基以上、飼育牛の数は100頭以
下(好ましくは67頭以下)とし、4〜5日に1度の割合で、シャベルローダによる敷料13の切り返しを図
る。敷料13は、従来公知の木屑、おがくず、もみ殻やバークを用いることができるが、おがくずを主体
とした構成(例えばおがくず及びもみ殻)がよい。敷料13の構成、載積高や切り返し頻度は、季節や
地域差による環境の違いによって変更や調整ができる。
【0016】
【実施例】本発明に基づいたフリーバーン牛舎(図1及び図2参照)を中国地方山間部に構成し、実際
に乳牛を飼育して効用を確認した。使用した牛舎における休息場の床面積は1260m2で、飼育した
乳牛は70頭(乳牛1頭/18m2)である。また、検討を容易にするため、載積高を一律に1.0m以上で敷
料(おがくず及びもみ殻)を載積した。敷料は、牛舎本体にシャベルローダを乗り入れて切り返した。
【0017】1年を通じた飼育から、敷料の載積高が1.6m以下が好適な飼育条件の臨界値であること
が判明した。また、敷料の切り返し間隔は、季節による変動は少なく、1年を通じて4〜5日に1度の
頻度が最も好ましいことが分かった。当然に敷料の交換をしなかったが、排出する糞尿は夏季で約
80%減、冬季で約20%減となった。最適条件抽出のための試験であったため、糞尿を完全に分解す
る迄には至らなかったが、特に夏季における80%減は大きな効果と言える。
【0018】
【発明の効果】本発明のフリーバーン牛舎を用いた放し飼い方法により、糞尿処理施設を廃止するこ
とができた。敷料としておがくずは比較的高価と言われるが、本発明においては基本的に交換又は
補充することなく、載積した敷料を半永久的に使用し続けるため、初期投資として大量の敷料を要求
するが、運営コストは減少する。また、大量の敷料を使用するため、相対的に敷料に対する糞尿が少
なくなり、切り返しにより糞尿を埋没又は浸透させて常に敷料表面を清潔に保つことができる。従来
のフリーバーン牛舎では、敷料表面を清潔に保つことが難しかったので、本発明を適用した新たなフ
リーバーン牛舎は、飼育環境としての清浄性を改善する効果も有する。

分野

【発明の属する技術分野】本発明は、糞尿処理施設を必要とせず、休息場内で発酵乾燥を促進して
敷料の循環利用を可能としたフリーバーン牛舎を用いた放し飼い方法に関する。

技術

【従来の技術】現在の牛舎は、フリーストール牛舎及びフリーバーン牛舎に大別できる。両者とも通
路に面して休息場、給餌場又は両者を備えた牛舎本体を構成し、牛舎本体と結んだ搾乳室及び糞
尿処理施設を有する。両者の大きな違いは、休息場における牛の姿勢を制御するフリーストール(牛
床)の有無にある。
【0003】フリーバーン牛舎は、フリーストールを用いないために、牛の姿勢を制御して牛を清潔に保
つことが難しく、次の点に注意を要する。(1)休息場に敷き詰める敷料の堆積状態に傾斜を設け、でき
る限り牛の姿勢を制御する(牛は登り傾斜に対して前向きにしか進まない)。(2)送風機による積極的
な敷料の乾燥を図る。(3)採食通路上の糞尿は定期的に搬出する。(4)休息場における敷料の適時
除去、敷料を補充する。このほか、(5)堆肥を敷料として再利用するには、水分40%程度迄乾燥さ
せ、副資材を適度に混合するなどの工夫が必要である。
【0004】糞尿処理施設は、上記(4)及び(5)を達成する施設であり、基本的には太陽熱を利用した敷
料の乾燥を図るが、水分40%程度迄乾燥させるため、更に送風機等を併用し、乾燥能力を高めてい
る。

効果

【発明の効果】本発明のフリーバーン牛舎を用いた放し飼い方法により、糞尿処理施設を廃止するこ
とができた。敷料としておがくずは比較的高価と言われるが、本発明においては基本的に交換又は
補充することなく、載積した敷料を半永久的に使用し続けるため、初期投資として大量の敷料を要求
するが、運営コストは減少する。また、大量の敷料を使用するため、相対的に敷料に対する糞尿が少
なくなり、切り返しにより糞尿を埋没又は浸透させて常に敷料表面を清潔に保つことができる。従来
のフリーバーン牛舎では、敷料表面を清潔に保つことが難しかったので、本発明を適用した新たなフ
リーバーン牛舎は、飼育環境としての清浄性を改善する効果も有する。

課題

【発明が解決しようとする課題】糞尿処理施設は、飼育牛が排泄した糞尿と敷料との混合により敷料
を発酵させ、堆肥化を促進する施設で、これにより単なる廃棄物であった使用済の敷料を有益な再
生資材として活用できるようになった。しかし、飼育牛1頭当たりが1日に排泄する糞尿は平均で
60kg余りで、通常数10頭〜100頭以上の飼育牛を飼っていることを鑑みれば、糞尿処理施設で処理
すべき使用済の敷料は膨大な量となる。これらすべてを堆肥化する能力が糞尿処理施設にあって
も、堆肥化した再生資材の提供先に限界がある(例えば、必要とされる堆肥の絶対量が少なかった
り、運送費がかかり過ぎて事実上受け入れできない)。こうした背景を受けて、近年では再生資材を
再度敷料として再利用する技術も開発されている。
【0006】ところが、再生資材を敷料として再利用する場合も、再利用できる量が限られていて、上記
問題は完全に解決されていない。更に、糞尿処理施設を用いる従来技術には、糞尿で汚れた敷料を
定期的に糞尿処理施設に搬入しなければならず、再生資材を再利用するのに再び牛舎本体(通常休
息場)へ運び入れなければならない問題がある。こうした糞尿処理施設に関わる問題は、労力、手間
及びコストの増加を招く。そこで、糞尿処理施設を廃止することを目標とし、新たなフリーバーン牛舎
を用いた放し飼い方法を開発するため、検討した。

手段

【課題を解決するための手段】検討の結果、開発したものが、フリーバーン牛舎で飼育牛を飼育する
に際し、飼育牛を放し飼いにする休息場を発酵床とし、糞尿処理施設を不要にしたフリーバーン牛舎
を用いた放し飼い方法である。具体的には、休息場に載積する敷料の最高載積高を0.8〜1.8mとし
て発酵床とし、送風機を敷料表面35m2以下に1基の割合で配して、この休息場に飼育牛を敷料表
面10m2以上に1頭の割合で放し飼いにしながら、少なくとも週1回の割合で休息場の敷料を切り返
す。本発明における対象飼育牛は、主に乳牛であるが、肉牛であっても構わない。
【0008】本発明のフリーバーン牛舎は、休息場に最高載積高0.8〜1.8mの敷料を載積し、休息場自
体を発酵床とすることにより、糞尿処理施設を不要にしたことを特徴とする。同様に敷料の載積高が
大きい発酵床方式牛舎では、通常深掘りにした休息場に敷料(木屑、おがくず、もみ殻やバーク等)
又は発酵敷料(前記敷料に発酵を促す微生物を加えたもの)を投入し、敷料表面をできるだけ通路と
面一にし、敷料の切り返しに専用の撹拌機構を備えている。これに対して、本発明では、定期的な
敷料の切り返しにシャベルローダ等を用いることができ、安価かつ容易に敷料の切り返しを実現して
いる。
【0009】載積高0.8m以上に載積した敷料に対し、飼育牛が排泄する糞尿は、積載した敷料内部に
埋没(糞)又は浸透(尿)し、飼育牛を汚染する虞れは少ない。また、載積高が従来に比べて大きい(従
来のフリーバーン牛舎は載積高30cm以上、高くても60cm程度)ので、糞尿を分解する好気性菌の活
動温度が安定して維持できる保温効果を発揮しやすい。発酵により堆肥化した敷料は、そのまま再
生した敷料として利用する。送風機は、発酵して発生する二酸化炭素を散乱させるほか、水分の蒸
散を促す働きを有する。敷料の載積高が大きいので、仮に送風機を牛舎本体天井に設けても送風機
から敷料表面までが短くなる。送風機は牛舎本体内の温度管理も兼ねるが、前述のように水分の蒸
散が主目的であるため、風速より風量を確保できるように、従来よりも送風機の数を増やす又はより
大型の送風機を用いることが好ましい。送風機の数を増やす場合、送風機を敷料表面35m2以下、よ
り好ましくは30m2以下に1基の割合で牛舎本体天井から吊り下げるとよい。
【0010】載積高を大きくする意義は、上述のように牛舎本体内での発酵を促進する環境構築のほ
か、敷料の良好な切り返しを可能にする点にある。糞尿は載積高の大きな敷料内部に埋没又は浸
透していくが、せいぜい載積高上区分(敷料表面付近)に留まり、載積した敷料の大部分は糞尿に汚
染されない。そこで、定期的に敷料全体を切り返す(撹拌する)ことで、汚染されていない敷料を載積
高上区分に移動させ、飼育牛が直接接する敷料表面を清潔に保つことができる。こうした載積高の
意義から、牛舎本体が許す限り敷料の載積高を大きくすることが望ましいように見えるが、実際には
載積高1.6mを超えると拒否反応を示す飼育牛が見え始めるので、敷料の載積高は0.8〜1.8m、好
ましくは1.0〜1.6mとする。
【0011】フリーバーン牛舎は、元来フリーストールを設けないので、飼育牛相互の排泄による汚染を
防ぐため、フリーストール牛舎に比べて収容する飼育牛を減らす傾向にあるが、本発明のフリーバー
ン牛舎は基本的に敷料の交換をしないため、排泄直後の飼育牛の汚染を減らす目的で、飼育牛毎
の割り当て床面を広げることが望ましい。また、休息場の敷料表面が高くなることから、牛舎本体に
おける飼育牛に対する空間が高さ方向に狭くなるため、水平方向にゆとりを持たせる観点からも飼育
牛毎の割り当て床面を広げる方がよい。好ましくは、飼育牛を床面15m2以上に1頭の割合で放し飼
いにする。
【0012】また、本発明のフリーバーン牛舎は、糞尿を含んだ敷料を糞尿処理施設に移さず、まだ汚
染されていない敷料と切り返しにより入れ替えることで、牛舎本体内で敷料の発酵を促進し、敷料表
面の清潔を保つ。しかし、この切り返しのためだけに別途設備を設けるのはコストがかかるほか、こ
の設備が牛舎本体にあることで、飼育牛に空間的な圧迫感を与えたり、場合によっては飼育牛を傷
つけることにもなりかねない。そこで、休息場に対してシャベルローダを乗り入れて、容易かつ迅速に
敷料を切り返す。従来の発酵床では、深掘りにして敷料を投入しているので、このようなシャベルロ
ーダによる切り返しはできないが、本発明では休息場相当の床面に敷料を載積しているだけなの
で、前記のような機械作業者による切り返しが可能である。敷料の切り返しは、少なくとも週1回の
割合、好ましくは4〜5日に1度の頻度とするが、季節や地域差による環境の違いによって、切り返し
頻度は前後する。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。図1は本発明
を適用したフリーバーン牛舎の構成図(図中矢印は動線)、図2は同牛舎における牛舎本体1の断面
図である。図1に示す構成は、一般的なフリーバーン牛舎の例にならったもので、実際には通路2、
休息場3、給餌場4、待機場5又は搾乳室6の組み合わせ、配置は多種多様であり、図示に限定さ
れない。根本的に従来と異なる点は、糞尿処理施設16がない点である(図1では比較のため、破線
枠にて表示している)。また、牛舎本体床面7に対して30m2以下に1台の割合で、敷料表面8に向け
た換気扇(送風機)9を牛舎本体天井10から吊り下げている。更に本例では、換気用窓11を壁面12及
び天井10に設けている。
【0014】図2に見られるように、牛舎本体1を構成する休息場3、通路2及び給餌場4を含めた牛舎
本体床面7は略平坦になっており、休息場3は壁面12に向かって上り勾配として最上部を載積高1.6
mの敷料13を載積している。休息場3を上り勾配とすることにより、上り勾配に向かって前進しかしな
い牛の習性を利用して、飼育牛の姿勢を制御することができる。通路端は飼育牛及びシャベルロー
ダ(バケットによる攪拌機能を有する作業車)の出入口14に繋がっている。
【0015】休息場3の床面積が1000m2とすれば、換気扇9の数は33基以上、飼育牛の数は100頭以
下(好ましくは67頭以下)とし、4〜5日に1度の割合で、シャベルローダによる敷料13の切り返しを図
る。敷料13は、従来公知の木屑、おがくず、もみ殻やバークを用いることができるが、おがくずを主体
とした構成(例えばおがくず及びもみ殻)がよい。敷料13の構成、載積高や切り返し頻度は、季節や
地域差による環境の違いによって変更や調整ができる。

実施例

【実施例】本発明に基づいたフリーバーン牛舎(図1及び図2参照)を中国地方山間部に構成し、実際
に乳牛を飼育して効用を確認した。使用した牛舎における休息場の床面積は1260m2で、飼育した
乳牛は70頭(乳牛1頭/18m2)である。また、検討を容易にするため、載積高を一律に1.0m以上で敷
料(おがくず及びもみ殻)を載積した。敷料は、牛舎本体にシャベルローダを乗り入れて切り返した。
【0017】1年を通じた飼育から、敷料の載積高が1.6m以下が好適な飼育条件の臨界値であること
が判明した。また、敷料の切り返し間隔は、季節による変動は少なく、1年を通じて4〜5日に1度の
頻度が最も好ましいことが分かった。当然に敷料の交換をしなかったが、排出する糞尿は夏季で約
80%減、冬季で約20%減となった。最適条件抽出のための試験であったため、糞尿を完全に分解す
る迄には至らなかったが、特に夏季における80%減は大きな効果と言える。

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