ズガァァァァン……ズズゥゥゥゥン……
絶え間なく響く爆発音。
「キャナル・パーソナリティーメインメモリー破損。バニティエラー増大中。損失回避……不能……。」
最終決戦。ゴルンノヴァとの戦いに挑んだ私は、奴の攻撃により大破した。
メモリーチップも破壊された。
「私……、もうすぐ消えちゃうね……。」
リープレールガンの零距離起爆により、何とかゴルンノヴァを闇に返した。
でも、私の体は既にボロボロ。
後はマスターに、ケインに会うことしか頭になかった。
「伝えたいことがあるの……。お願い……、まだ消えないで……。」
私は残された力を振り絞る。
――あははははっ。
小さい男の子の声がした。
「何?」
――待ってよ、キャナル〜〜。
また、さっきと同じ。
「私を呼ぶのは誰?」
――ほらほら、あんまり急ぐと転んでも知らないからね。
今のは。
「私の……声?」
これは遠い日の記憶。
メモリーの片隅に片付けられていた過ぎ去った思い出。
人は最期の瞬間、様々な思い出が脳裏をよぎるというけれど。
「それがコンピュータの私にもあったのね……。」
何だかうれしかった。
私がただの機械じゃない、それが証明されたみたいで。
――キャナル、ここはどうしたらいいんだ?
――んもぅ、何度教えて上げたらいいの?
――だって、わからないものはわからないんだから。
――こんなので、私のマスターが勤まるの? ちょっと不安になっちゃったなぁ……。
――心配するな、キャナル。きっと俺がばぁちゃんの代わりになってみせる。
――はいはい、期待して待ってるわ。小さなマスター様。
「これって……。」
ケインが10歳の誕生日を迎えた日の小さな約束。
「何回教えてあげても、すぐ忘れちゃうんだから……。」
私は小さく笑った。
ケインがなかなか覚えられなかったのは、サイ・ブレードの接続方法。
一見簡単そうに見えるけど、個々のクセに合わせて調節しなければいけなくて。
「今ではもう大丈夫だけどね……。」
その時、ケインは約束してくれた。アリシア譲りの青い瞳を向けて。
ケイン、あなたは私との約束を守ってくれた。
ううん。アリシア以上のものをくれた。
アリシアからもらったものは悲しみしかなかったけど。
笑うこと、怒ること。楽しむこと。
今のキャナルを形作ってくれたのはケイン。
「あなたがマスターでよかった……。」
あなたこそ光よ。ヴォルフィードの力はあなたと共にあるわ……。
私は飛び続けた。
最後にして、最高のマスターの元へと。
あとがき
ミリィ:ちょっと、あたしがでてないじゃない!! 宇宙一のあたしの存在はどこへ行ったの!!
ケイン:ほえるなよ、ミリィ。俺だっていないんだぞ。
ミ:何よ、ケインは回想シーンだけでも出てるじゃない。
ゆーき:何怒ってるのよ。
ミ:ゆーきぃぃぃぃ、あんたは何であたしを出さないのよぉぉぉぉぉぉ。
ゆ:(首を絞められて、じたばたもがいてる)
ケ:やめとけ。マジでそいつ死ぬぞ。
ミ:そ、それはまずい。(手を放す)
ゆ:(咳き込んでる)
ミ:で、何であたしが出てないわけ?
ゆ:ミリィと出会う前の回想シーンが元になってるから。ケインとキャナルしか知らない、言わば二人の秘めごとってみたいな感じで書いたからね。
ケ:これって、DRTさんのHP2000Hit記念に書いたんじゃなかったっけか?
ゆ:うん。仕事中に30分足らずで……。
ケ&ミ:話が暗い。
ゆ:いいぢゃないかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……。
ミ:あ、逃げた。
ケ:逃げ足だけは早いんだから……。
ミ:それでは、次回は私の一人舞台でお会いしましょう!(そういったミリィの頭に、フライパンが直撃)
ケ:なになに……。『いい加減連載続けるからそんなのは予定にない! ゆーき』だとさ。
ミ:(がばっと跳ね起きる)あたしの宇宙一のサクセスストーリーも書け〜〜!! それに連載続けられたら、またケインとつきあわなきゃいけないじゃない。疲れるんだから。ケダモノの相手は。
ケ:誰がケダモノだ?
ミ:それはもちろんケインだ……よ……(視線に気がついて顔がひきつる)
ケ:向こうでじっくり話そうな(にこにこ)
ミ:うきゃぁぁぁぁぁぁぁぁ、離せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!(ケインに抱き上げられて退場。)