魚類寄生虫 2001年8月5 日



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 魚を調理するとき、一般的には「まずは生で食え、それができなきゃ焼いて食え、捨てる前には煮てから食え」と言われますよね?この順序で食べるのが魚を美味しく食べるコツだと言われています。そしてこの順序は魚の鮮度を順に並べているのですが、特に生で食べるときには腐敗してないかと同時に寄生虫のことが気になりますよね。腐敗はご存知のように有害な細菌の繁殖によって起こります。そして細菌と言えども生物ですし、寄生虫はもちろん生物でこれらは主に蛋白質で構成されています。だから二番目以降の火を通す場合は安全な状態と言えます。しかし、細菌によっては生きているうちに毒素を生産し、これはいくら熱を加えても分解されないものがありますので、注意が必要です。細菌についてはまた別の機会に述べるとして、本題の寄生虫に移りましょう。
 「月刊釣り情報」に依頼され寄生虫のことをまとめたことがあるので、それを転載させて貰います。もちろん許可は頂いています。一般の主婦からの投書に答えたものです。
月刊釣り情報, 1999年8月号, 174〜176, ミリオンエコー出版株式会社, 広島市  から転載

タイトル漫画 質問漫画


 魚の寄生虫は数えきれないほどの種類がいる。ほとんどの寄生虫は無害で、人体に入っても消化されてしまうか、環境が合わず死んでしま う。  けれども、少数だが人体に入ると害を及ぼす寄生虫もいる。中国・四国地方で釣れる魚の寄生虫で、危険(比較的害の大きいもの)なものは、アニサキス、サナダ虫(広節裂頭条虫)、有棘顎口虫(ゆうきょくがくこうちゅう)、横川吸虫の4種。

 人体への害は少ないか、あっても無視できる程度だけれど、知っておいた方がよいものは、棘口吸虫(きょっこうきゅうちゅう)、クドア、異型吸虫類、イカの精莢(せいきょう)などだ。


アニサキス

漫画アニサキス

 アジ、サバ、サケ、タラ、スルメイカなどに寄生する。アニサキスは蛔虫(かいちゅう)の仲間で、終宿主はクジラやイルカ。人間は宿主ではないが、第2中問宿主の魚やイカを食べることで感染症を引き起こす。

 アニサキスは意外によく見かける。釣ったサバの内臓に10o〜30oの白い糸くず状の虫が、うごめいているのを見つけたことはないだろうか?

 それがアニサキスの第3期幼虫だ。普通、人体では1週間から2週間で死んでしまう。

 生きたアニサキスが人体に入ると1回目は軽い腹痛や下痢で終わるが、2回目以降は1回目の時にできた抗原抗体の反応が激しくなるため、激しい腹痛、吐き気などを伴うアレルギー性の激症アニサキス症を引き起こす。

痛みが激しい場合は開腹手術が必要となる。特に、「しめサバ」を食べたことによる寄生例が多い。この病気がアニサキスの

 幼虫によって引き起こされることが判明したのは35年ほど前。昔から「サバの生き腐れ」といわれ、サバは活きがよいものを食べても腹痛を引き起こすことが知られていた。これはサバのヒスチジンによるアレルギーの一種とされていたが、案外アニサキス症も含まれているのではないか。

 アニサキスは熱に弱く、50度〜60度以上では数秒以内で死ぬので、魚を加熱調理して食べるとよい。マイナス20度以下で24時間以上冷凍しても死滅する。物理的な破砕にも弱いため、よく噛んで食べるのも効果的だ。

 酒や酢塩、しょうゆ、ワサビなどではアニサキスを退治できないが、生姜(しょうが)はある程度の効果がある。薬味に生姜を使い、魚を細かく切る「アジのタタキ」は昔からの知恵といえる。



サナダ虫
(広節裂頭条虫、こうせつれっとうじょうちゅう)

 マス類、サケ、スズキなどに寄生する。魚に寄生するのはプレロセルコイドと呼ばれる段階で、幅2o〜3o、長さ10o〜20oのひも状。色は白色。魚の皮下に近い筋肉に寄生していることが多い。成長すると長さ2m〜9mの条虫になる。

 人体では小腸に寄生し、一般的な症状は下痢、便通の増加、胸やけ、食欲不振など。めまいやどうきが起きることもある。

 病院で適切な処置を受ければ生命の危険はないが、駆除 しても頭部が残ると1,2カ月で再生してしまう。

 寄生を予防するには加熱による調理をすること。マイナス20度以下で24時間冷凍しても死滅するので、サケをルイベにして食べるのは理にかなっている。


有棘顎口虫
(ゆうきょくがっこうちゅう)

漫画顎口虫

 ライギョ、フナ、コイ、ウナギ、ドジョウ、ナマズ、ハゼなどに寄生する。日本全国にわたって分布している。赤みを帯びた太く短い寄生虫で長さ10o〜50mm。

 魚に寄生すると約ーカ月で長さ3o〜4oの幼虫になり、やがて皮膜に包まれた直径1oくらいの皮嚢幼虫に成長す る。魚の筋肉内に寄生し、腹側筋、せき柱側筋に多い。

 人問への寄生はライギョ、フナの生食が原因の場合が多い。虫体が体内を動きまわるために痛みを伴い、重要な臓器に達した場合は死を招くこともある。人体では数年から十数年生きる。

 特に有効 な駆除剤はない。寄生の予防は生食を避けること。東南アジア諸国ではかなりの高級ホテルでもライギョなどの刺し身が出される。出張や旅行のときは注意が必要 だ。


横川吸虫
(よこがわきゅうちゅう)

天然アユに100%寄生


 アユ、ウグイ、シラウオなどに寄生する。魚に寄生するのは幼虫のメタセルカリア。鱗やヒレ、皮下組織にいる。成虫は長さ1o〜2o、幅O.4o〜0.7o。体表には鱗状小棘が密生している。寿命は長くて1年、多くは3カ月程度で死んでしまう。西日本の主な河川の天然アユに は、ほぼ100%寄生しているという。

 河川形態の変化で第1中問宿主であるカワニナが一時減少し、横川吸虫も少なくなった時期があった。しかし、最近はホタル保護のためにカワニナの保護が進み、横川吸虫も増加している。

 人問には小腸上部の粘膜内に寄生する。少数の寄生では症状がほとんど出ないが、多数が寄生すると腹痛、粘液便、下痢が起きることがある。症状が軽く寄生虫の寿命も短いため、人問ドックなどで初めて寄生が発見される場合も多い。

 寄生を防ぐ方法は加熱による調理。静岡県のある都市での調査では、「せごし」など天然アユを生食する機会の多い人たちほど、感染率が高い傾向があった。一種のグルメ病といえよう。


棘口吸虫
(きょっこうきゅうちゅう)


 アユ、モロコ、シラウオ、ドジョウ、タナゴなど各種の淡水魚に寄生する。棘口吸虫類は非常に種類が多い。一般的には柳葉形をしている。大きさは長径3o〜9o、幅0.4o〜2.7o。

 少数の寄生ではほとんど無症状で人問の感染例も少ないが、腹痛や下痢が起きることがある。前述の魚は生食を避けたほうが無難だ。


異型吸虫・有害異型吸虫
(いけいきゅうちゅう・ゆうがいいけいきゅうちゅう)


 ボラ、メナダ、ハゼなどに寄生する。偏平な西洋ナシ形で長径O・9o〜1.1o、短径0・4o〜0.5o。体表面には小さな棘が密生している。

 人体に寄生すると腹痛や下痢を引き起こす。寄生例は瀬戸内海沿岸が多く、笠岡市や高松市でボラの「あらい」を食べたことによる感染例が報告されている。症状が出ても適切な処置を受ければ生命の危険はない。


クドア


 サワラ、マゴチ、コイチ、トラフグなどに寄生する。寄生率は低く、数百匹中に1匹〜2匹寄生が見つかる程度。

 O・001o前後の小さな 胞子が集まって1o前後の袋状になり白い粒のように見える。サワラなどの卵が散らばっているようにも見える。魚の筋肉、エラ、中枢神経、囲心腔などに寄生するため、魚を外見しただけでは寄生しているかどうか判断できない。

 魚類をはじめとする冷血動物に寄生し、ほ乳類には寄生しないため人問には大きな害を及ぼさないとされている。しかし、まれに気持ちが悪くなったり、吐き気をもよおすことがあるので、寄生されている魚は加熱調理したほうが無難だ。


イカの精莢
(イカのせいきょう)

精子が入った袋


 スルメイカなどの精子が入った袋。幅約1o、長さ約5oで白色または黄白色。寄生虫のように見えるため頻繁に問い合わせがくる。

 スルメイカは雄のほうが先に成熟して精莢を発射する。精莢は雌の口周辺の軟らかい部分に突き刺さって産卵するまで保存される。精莢が残っ た雄イカを生で食べた場合、精莢が発射されて口の中に突き刺さることがある。口の中がチクチクあるいはヒリヒリするが、人体に害はない。


以下に各寄生虫の症例写真を示す。

症例写真

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