書斎
いろんなものがここへ入っています。


 1    デザイン
更新日時:
2013/08/18

ちょっとデザインした作品です。

 2    ある夏の夜
更新日時:
2013/08/18
 ある蒸し暑い日。日も沈み、路地裏をなま暖かい空気が漂い、塀の上では猫が昼間の暑さのせいか気怠(けだる)そうに欠伸(あくび)をしながら夜の散歩の前の毛繕いをしている。電柱についている電灯には羽虫が群がっている。
 
 その路地裏の袋小路にある、いかにも風通しが悪そうで今にも壊れそうな古びいた屋敷。中からは何かを貪(むさぼ)り啜(すす)るような音。塀の隙間からのぞくと、三人の子供らが口から首の辺りまでを真っ赤に染めながら、争うように何かを食べている。時折「ぺっぺっ」と何かを吐き出したいる。少し離れたところで子供らの父親らしきものがどっしりと構えて見守っている。こわそうな顔をしてはいるが、瞳にはやさしい光が宿っている。
 
 少し場所を変えてみると、やせた女(たぶん母親だろう)が人の頭のようなものに包丁を入れようとしている。力がないのかそれとも固いせいなのかなかなか切れそうにない。女は一度包丁をまな板の横に置き、何度か深く息をしたあと意を決するように両の手で包丁を握りしめ、まるで大太刀(おおたち)を上段に構えるように頭上高くまで振り上げて一気に振り下ろした。その瞬間、人の頭のようなものは真っ二つに割れ赤い汁がまな板を流れて女の足元へしたたり落ちる。女は慌てて足につかないように後ずさった。二つに割れたものに人数分の匙(さじ)を突き刺して、まな板に載せたままみなのほうへ持っていった。
 
 またもとの場所へ戻り、中の様子をうかがう。女が襖(ふすま)を開けて部屋の奥から出てきた。まな板の上には半分に切られ、匙(さじ)が三本ずつ突き刺さったものを運んできている。縁側の端の方から紫色の煙が動物を象(かたど)った陶器からすじを引きながら立ち上っている。何かのまじないだろうか。子供らが女にまとわりつき、匙(さじ)の刺さった半分に触手のように6本の腕を出す。子供らは縁側へそれを持ってゆき、それを取り囲むようにし、匙(さじ)で争うようにすくい取っては口へ運んでいる。縁側のはしから踏み石のあたり一面に赤い汁とときおり吐き出す黒い粒が入り交じって流れている。
 
 父親らしき男が部屋の奥の(ここからはよく見えないが)黒く小さくなっているものへ向かって、大きくはないが野太い声でひとこと言った。「お袋、西瓜をお岩が切ってきた。食べないか?」
         おわり



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