名月を観れば観るほど微笑みの
    顔におもほゆ浄土の夫の
年の瀬に後光輝く新宮の
  誕生なりて明るき未来
幾許の余命と知りつ歌を詠み
  生くるを謝して友の逝きたり
八十歳独りで祝うバースデー
  生きいる喜び謝する遺影に
補聴器をはめれば聴こゆ風鈴に
  亡き夫との旅の想い出顕てり
採りたてのほうれん草のお浸しを
   一品添えて独りの夕餉
予期せぬに宅急便は妹よりの
   釘煮に鮮魚心して食む
吾娘に付きアズマイチゲの観察や
   写真撮る間をわれは歌詠む
添削の心こもれる朱筆文字
  納得するまで詠みてみがかん
待ちまちし豪華外洋クルーズ客船の
   クルージングは夢五月の台風
八十路にて初めて習いし絵手紙を
    浄土の夫に真っ先に出す
年賀状表も裏も筆で書き
 下手は下手なり満足の吾
恩寵に八十二歳を生かされて
  悔いなき余生を短歌に託す
微笑める夫の遺影に励まされ
   謝しつつ生きる八十四歳
梅が香や吹屋の豪商偲びつつ
    水琴窟の音色聴きいる