アプリリア・モト6.5

なれそめ

フィリップ・スタルクによるモト6.5の出現はハンス・ムートのカタナのデビュー程ではないが衝撃的だった。96年初頭には正規輸入されているが、マイナーな機種ゆえ地方では実物を見る機会はなく今回自分で実際に購入して初めてその奇妙な形を目の当たりにすることが出来た。

オレンジのタンクが印象的、でも一つ問題が...(後述)

モト6.5の面白さ

これは何と言っても見た目のユニークさからくる注目度が一番。バイクにあまり興味のない人でも、あの造型(でっかいオレンジのタンク)はビックリするようだ。

全体の奇天烈さにもまけず個々のパーツも細かくデザインされている。

メーターは3連(速度計、水温計、各種インジケーター)でハンドル形状もユニーク。画像には写っていないがトリップメーターのデザインも凝っている。

エンジンを右側面。シリンダー後方に得体の知れない補機類?

鍵を差し込むと...単なる工具入れの蓋!

ブレーキペダルもデザインされている

巧みにフレームと一体化したマフラー(単気筒ながら左右2本出し=中央部は連結し容量を稼いでいる)

リアフェンダーにはスタルク氏のサイン入り

ラジエターは冷却高率を無視して凸型

Fブレーキはシングルディスク&ブレンボ

このバイクの乗り味は基本的にはオフ車のそれで、前後のサスの当たりはオフ車並みに柔らかく乗り心地良好(フワフワ)。

エンジンはモダンシングルらしく振動は最低限で軽やかに回るが高いギア+低回転でのドコドコ走りは苦手。また低回転時のエンジンノイズ(ガチャガチャと壊れたような音)は何とかならないものか?

最終減速比は高めで100km/h+のクルージングも容易。但しアップライトなポジションなので風圧大。

大きなハンドルと初期の動きのよいサスにより、鋪装路面の荒れた狭い山道をグイグイあがっていくのが得意。

シートは外人サイズで座面が広く快適。シート高があるため見晴らしも良く、街乗りしやすい。伊車には珍しくハンドル切れ角も大きい。

水冷エンジンのため夏場の走行では電動ファンが回りっぱなしで股が暑くなる。

モディファイ

へたに触るとバランスを崩しそうだが、積載能力向上のためサドルバッグを装着。純正品は左右合わせると価格が10万円近いというのに恐れをなして、汎用品を個人輸入($100)して装着した。

卵ケースのような素材で出来ているサドルバッグ

燃料タンクの怪

カタログ上では燃料タンク容量16リットルとなっているが、いくらリザーブで粘っても10リットル程度しか給油できたためしがない。不審に思い燃料タンクを外してタンク容量を測定してみた。結果はフューエルコックONで9リットル、リザーブ2.3リットル、合計11.3リットル。リザーブを使い切ってもタンクはまだ重いぞ?タンクを逆さまにするとまだ4リットル以上も残っているではないか!燃料コックの位置が高すぎ(シルバー塗装部の前下端に装着されている)、オレンジ塗装部の下部に燃料が残ってしまうようだ。この部分がデッドスペースになり使用不可のガソリン4リットル強を常時バラストのように乗せて走っていることになる。これは明らかな設計ミスと思われますが今更どうしようもない。

その後の調べでこの不具合は現在は解消されていた。改良後は燃料コックの位置を前下端に移し、燃料コックより高い位置のキャブレターには電磁ポンプでガソリンを送るようになっているようだ。

モト6.5の入手法

私は走行170Kmの登録済み車を通販で購入した。通販というと危ない話しを良く聞くし(実際大外れをつかまされた経験有り)、購入した店がキチンとしたところで、何のトラブルもなく東京から配送(陸送費3万円也)されて来た。不人気車ゆえバイク中古雑誌やボスコモト(輸入元=当時の)のHPを見ていると低走行車が売りに出ている。

モトの本領

フワフワのサスペンションと高回転型エンジン+ハイギアード(極低速が苦手)、このバイクは何を目指しているのか?

兄弟車BMW F-650のようなデュアルパーパスではない。(転かすのが勿体ない外装)。郊外の空いた道をムキにならないペースで流し、洒落たカフェでお茶してくる(そんな場所にはカフェなどなく道の駅しかないかも知れないが)のが最適だろう。

外観から受ける印象のごとく文化系(芸術系)ライダー御用達である。(但し体格は外国人サイズが適当)。武闘系、ハーレー系とも相入れない文化人の為に。