1969年 ランチア フルヴィア スポルト 1.3S

予告篇

「ランチアはイタリアの小さな宝石だ」という小林彰太郎氏の名言で始まるフルヴィア・スポルトのCGインプレッション記事は今でも忘れない。残念ながら記事を読んだ学生当時、ランチアというメーカーのクルマを目にすることは地方都市では皆無だった。

時代は巡り日本はバブルに沸き、神戸で(伝説の)モンテミリアという旧車イベントが行われ、フルヴィアの実車を初めて見た。それは熊倉CG編集長(当時)のエントリーしたフルヴィア・クーペ。そのスリークなデザインは美しく、少しばかり初代日産シルビアを思い出させた。

そんなバブルの時代も通過してモンテミリアやランチアのことは記憶の片隅に追いやられていた頃、突然我が身にフルヴィアの身請け話がやってきた。それも車種はレアなスポルト1.3S。

スポルトの一番の特徴はもちろんザガート製デザイン。ベースコンポーネントはフルヴィア・クーペと共用しながら流麗なファーストバックのボディである。エレガントなイメージのクルマだがサーキットレースで活躍した実績もある。

私の入手したスポルトは10年以上稼動していないレストアベース車だが特に欠品もなくボディの錆びもさほどでない様子(実際はひどかった)。車検証は昭和44年登録の右ハンドル正規輸入車。前オーナーの話しからすると何とCG誌インプレッションに掲載されたクルマそのものとのこと。何という巡り合せなのか。

元色のブルーから赤そして黄色に塗り替られた

狭角V4エンジンとソレックスツイン。横に開くボンネットはFRP製(オリジナルはアルミ製の筈?)

オリジナルが保たれたコックピット。4速マニュアル、右ハンドル

レストア開始

取り敢えず動かしたいという思いでエンジンを降ろす。

挟角V4エンジンの特異なヘッド部。ガスケットが破れてシリンダーに水が入り腐食している

パーツは英の"OMICRON"というフルヴィア専門ショップに注文。

キャブレターOHキット、エンジンガスケット類、バルブ、バルブシートなどを入手する。

しかしバルブシートのサイズが合わない。ヘッド部は腐食により面研が必要な状態だがこれまでにも面研を受けたことがあるのか削る余地がほとんどない。

中断....そして突然の別れ

こうした問題でいったん作業を中断していたが、何とクルマを預けていた友人の整備工場が閉鎖するという。私もたまたま自宅建設中で余剰資金、クルマを置いておく場所がないという最悪な状態に。

今後の決断を迫られ、結局フルヴィア・クーペを愛用されている同好の士にお譲りすることとなった。

将来の復活はあるのか、現時点では不明であるが是非に生き返って日本の道路を走れるようになって貰いたい。