[懶惰]
【白馬山荘殺人事件】
|東野圭吾 | 講談社文庫 | 文庫 | 1986|
「マリア様はいつ家に帰るのか」という手紙を最後に「白馬山荘」で"自殺"した
兄の死の真相を探るため、ちょっぴり聖白百合学園チックな女史二人組が
活躍する物語。
こういう、素朴っちゅーかストレートな密室トリック、実は好きです。
ゴテゴテしたのもいいけどシンプルなのもいいね。きちんと複線も張られてるし。
マザーグースの歌になぞらえた謎のほうは、宝の在処に関して某恐怖新聞に同じようなネタが
あって、思わずそれを彷彿としてしまいました。
あっちのほうでは悪者が『ああーーーーーーーーッッ!!!』とか叫びながら滝壺に落ちるんですけどね。
まぁどうでもいいやそんなこと。
なかなか面白かったと思われマス大山。
【名探偵の掟】
|東野圭吾 | 講談社文庫 | 文庫 | 1991|
完全なメタ小説。探偵小説の様々な「お約束」をあげつらってゆく短編集。
意図はわかるんだけど、なんちゅーか、読むのがツラいです……。
【回廊亭殺人事件】
|東野圭吾 | 講談社文庫 | 文庫 | 1991|
通称「回廊亭」と呼ばれる旅館で起こった放火殺人事件の真相を究明するため、
事件の生き残りの女性が身内の老婆に変装して回廊亭へ乗り込むが……てな話。
老婆に変装するというハジけ気味の設定からもわかるように、普通の推理小説とは
形式が少し異なっています。謎解きやその他の部分に関しては同じように出来てる
ものの、探偵役のキャラが復讐に燃えているっていうのは、やはりちょっと
感情移入しづらい部分がありますな〜。
個人的には、いまひとつかな。
【仮面山荘殺人事件】
|東野圭吾 | 講談社文庫 | 文庫 | 1990|
結婚を直前に事故死した女性の家族、元フィアンセ、友人が山荘で一夜を過ごすが、
彼女は本当に事故死だったのかという疑惑が一応を困惑させる。そして山荘に
逃亡中の強盗達が押し入ってきたその夜、殺人が行われるも、強盗犯達は
自分たちがやったのではないと云い……ってな話。
んんん。プロットとしては良くできてると思います。ただぶっちゃけた話、
この小説の中で"殺人"は一件も行われていないのです。やはり
事件があって犯人が居て明晰な探偵役が居て……というオーソドックスな
作品が好きな自分としては、何か物足りないというか、妙な読後感が
あるのは否めません。
作品中の設定や事件が、現実に即して云えばおかしい:有り得ないというのは
あまり気にならないタイプですが、小説内部の出来事であっても『そりゃさすがに
あり得んだろ』というツッコミを入れたくなるのはリアリティ(便宜的な言葉です)が
感じられない、というのもあるし……。
良くできてるんですけども。
それから「解説」で折原一が書いている作品というのはおそらく己が以前読んだ「仮面劇」
だと思われます。奇遇にも。
【どちらかが彼女を殺した】
|東野圭吾 | 講談社文庫 | 文庫 | 1996|
気持ち良いくらいのパズル。
この人の作品って映画にもなった「秘密」しか知らなくて、まぁミステリ専門の人では
ないんだろうななんて偏見じみた事を思ってたんですが、これぞ新本格だと云わんばかりに
良くできた作品にちょいとビクーリ。
風評に流されて読んでみて良かったです。
正直、文庫版巻末の「推理の手引き」が無かったら己は確実に解けてませんが、
最後の最後まで犯人の名前を明らかにせず投げっぱなしジャーマンのような
かたちで終わらせておきながら、純粋推理で解けるという、マニア垂涎の
シロモノなわけです。この本。
探偵役が「解答編」で全ての謎を明かす他のミステリとはちょっと毛色の違う作品です。
でもキチンと解けるようになっているので安心パパ。
こいつは、面白いです。正直。
【仮面劇】
|折原一 | 講談社文庫 | 文庫 | 1992|
んんん。
一応、叙述だし、なるほどなと思わせる二転三転の仕掛けはあるんですが、
僕は何というかこういう、団地奥様不倫の巻というか、家政婦はみた!保険金殺人のような
話がけっこう苦手なのです。
その意味では同じ系統のミステリばかりを読んできたのだと思ふ。
【人形は遠足で推理する】
|我孫子武丸 | 講談社文庫 | 文庫 | 1991|
基本的に「こたつ」と同じ。
ただこちらは遠足でバスジャックされた話で一冊。
すべてバスでの出来事なので展開に乏しい感じもしますが、推理モノとしては
なかなかよくできてます。
んーむ。面白いシリーズなんだけど、続作はもう一冊しかないみたいで、惜しいなァ。
【人形はこたつで推理する】
|我孫子武丸 | 講談社文庫 | 文庫 | 1990|
腹話術師を二重人格と設定することにより、「人形」が探偵になるという発想が
面白い。
内容は短編集で、保母さん一人称の柔らかな文体と相まってサクっと読めます。
90年の作品なので当然まだメディアに「いっこく堂」が登場する前なんですが、
パ行バ行の発音ができる等、思わず彼とかぶってしまう感じの腹話術師にちょっと
ヴォイスイリュージョンの片鱗をみました。
それからこの作者、どうも名前がひっかかっていたところ、SFCゲーム「かまいたちの夜」の
制作者(シナリオ)だと分かったのは最近の話です。そりゃエンドロールで何度も
みてるはずだわ……。
【鬼面村の殺人】
|折原一 | 光文社文庫 | 文庫 | 1989|
叙述トリック作品の代表みたいな感じで紹介されていたので読んでみたところ、
どうやら叙述ばかりを書いているわけではないらしく、結構などんでん返しと
大がかりな物理トリックがビシシと効いた作品で、なかなか面白かった。
ただこの人、文章がちょっと……。くだけた表現が多いというか、
「ムチムチとした」なんていう形容は森作品じゃまずでてこないだろうなァと
思ってしまった(w
ちょっとフランス書院のテイストがほんのり。
次は叙述が読みたいなと。
ソレと分かって読む叙述は面白みが半減しまくりのような気がしないでもないですが、
まあ、いいや。
【殺人方程式 切断された死体の問題】
|綾辻行人 | 光文社文庫 | 文庫 | 1989|
真相を見破るための材料を全て読者に提示する「本格派」の作品としては上手く、面白く
できてると思います。何故死体を切断しなければならなかったか? という命題も
うまい具合に必然性を持たせているし、(個人的に)ネタが分かっても『へぇそうなんだ』と
なってしまいがちな物理トリックにも色々と仕掛けがしてあって、単調にならないので良。
犯人の推理もなるほどと思わせる理詰めなんですが……これって、裏を返せば、○○オチ以外
有り得ないってことかな(苦笑
【探偵映画】
|我孫子武丸 | 講談社文庫 | 文庫 | 1990|
我孫子武丸の四作目。
作者自身もあとがきで定義の問題を書いているように、厳密にはミステリではないような
気もします。ネタバレですが、あくまで「探偵映画」という映画を題材に進む話なので、
現実世界(「探偵映画」小説内部の実世界……ええい、ややこしい/笑)では
殺人事件は起きません。
でもこのネタの発想はすごく面白いと思う。登場人物が未完の映画の
終わり方をいろいろ模索し、いったいどうなってんだろう? と思わせておいて、
意外かつ『なるほどな〜』と思わせるオチ。
こういう、アイデア電波がビシビシ伝わってくるのも、良いであります。
【マリオネットの罠】
|赤川次郎 | 文春文庫 | 文庫 | 1977|
思えばこの作品を読もうと思ったきっかけは某所の「どんでん返しがすごいミステリ」で
名前が挙がっていたことなんだなァ、と最後まで読んでから気づきました。
確かに意外な結末が待っています。ただ最近のいわゆる「新本格」といわれる作品群
(といっても極度に狭い範囲でしか読んでいないんですが)と読感が違うのは、
いったん整合性のある話をつくっておきながら各所に配置された複線を支点にして
ひっくり返すという構造ではなく、悪く云えば「後付け」で処理する部分がある
ということでしょーか。
あと犯人について、計画性に疑問…というか実際問題そんな事ぁしないだろうという
無粋なミニツッコミは入ったりしますが、それでもプロット全体でみれば本当に
良くできてると思います。
うーむ……この人、他の作品がどれくらい「ミステリ」なのか、ちょっと気になってきました。
【メビウスの殺人】
|我孫子武丸 | 講談社文庫 | 文庫 | 1990|
我孫子武丸の三作目。
この人の作品って、スカッと読める割には云うほど単純じゃなくて、、毎回なにかしらの
コンセプトのもとに読者をひっかける仕掛けを用意してくれてるところが面白いと思う。
ただ今回は、構造は面白かったものの、そのネタ自体に現実味があまり感じられなかった
(このへんは個人差カモ)のが惜しいなぁという感じ。
そのへんを煮詰めている(らしい)「殺戮にいたる病」にほんのり期待。
【0の殺人】
|我孫子武丸 | 講談社文庫 | 文庫 | 1989|
著者自ら『スカッとさわやか某炭酸飲料水のようなミステリです』というように、
手軽に読めるわりには、巻頭の「作者からの注意」がのちのち上手い形で活きてくる
展開や意外な真実が面白い、我孫子武丸の2作目。
ミステリとしてはわかりやすい構造で読みやすいし、真相を安易に想像させておきながら
裏切る手際(「100人に1人」は気づいたのかも知れませんが己はもちろん99人のほうです)
がなかなかに見事。
しかしこの人、あまり小説の新刊は出していないみたいだけど、今は作家活動やってない
のかな。あと4,5冊しか読めるのがないです。なんだか惜しいかも。
【ドグラ・マグラ】
|夢野久作 | 角川文庫 | 文庫 | 1935|
……エッ……コンナ……奇妙でオドロオドロしい物語……現実なのか妄想なのか……
アッ……始まりも終わりも良くワカラナイ…………不意に挿入される論文……
チャカポコ、チャカポコ、異様な言葉のグロテシズムと妖しい自我……ソンナ……
原因も、結果も、意味も、理由も、有るのか……無いのかさえ……ワ……解らない……
全ての謎は……闇の中……イヤ……ボ、僕の…………脳髄の中に…………。
胎児よ
胎児よ
何故躍る
母親の心がわかって
おそろしいのか
【ホンキイ・トンク】
|筒井康隆 | 角川文庫 | 文庫 | 1973|
星新一のようなショート・ショート系SF作家とは多少異なり、時代の状況を
シニカルに描いたり、SFと時代物を組み合わせてみたり、様々な作風のある作家のようです。
筒井康隆。
これは短編集だったんだけど、なかなか面白そうなので多量にある他のも読んでみようかなとか
思ったり。モルツCMの裁判長役が筒井康隆だったと知って吃驚したり。
【三毛猫ホームズの推理】
|赤川次郎 | 角川文庫 | 文庫 | 1984|
赤川次郎はライトのベル系の人だと思っていたので読むつもりはほとんど無かったんですが、
某所で本書のトリックについてみかけたので読んでみました。
トリックはホントにちからわざ(苦笑)なものの、複線との絡み合わせ、猫が探偵役という
コミカルな設定、総量の割には読みやすい(350Pで3時間かからない)文体で、
サクッと楽しめました。
其所でも云われていたように、電車の時間待ちとかちょっとした時間つぶしに読むには
最適の作家だと思いやす。
あと「マリオネットの罠」という初期作品が話題になってたんだけど、ほとんど絶版らしいので
また古本屋に頼ることになりそうです。
【鴉】
|麻耶雄嵩 | 幻冬社 | 文庫 | 1997|
なんだかんだ云いながら麻耶作品を読み続けてるわけですが、この「総てを疑いながら
読む」というヒネくれた姿勢が他にも伝染しないことを祈るばかりです。南〜無〜。
さて今作ですが、今度という今度は騙されないぞニャローメという意気込みで読んでいたら
予想していた展開に近い形でした。ピッタシじゃなかったけど。
面白かったのは作中の叙述トリックとでもいうべき部分で、これは純粋にヤラレタと
思ってしまった。その結果得られる事実は、良くも悪くも麻耶雄嵩節ですが……。
いちおうメルカトルも登場。処女作を読んでる人はおっと思うような設定がでてきます。
メインで活躍はしてなくて、最後に真相を明かす形。
その真相に関わる事実(判別能力に関する話)については、科学的根拠について
議論もあるようですね。
麻耶作品の中ではわりあい特異性が低い作品なので、一般向け(笑)としても
面白いかも知れません。読んでる人が『どれから読んだらいいですか?』と聞かれて
勧めるものにも、これか、「メルカトルと美袋のための殺人」が多いみたい。
己も勧めるとしたらその二つなんだろうけど、『麻耶雄嵩けっこう面白いじゃん!』
といって「夏と冬の奏鳴曲」に手を出すのを想像すると……。
やめてっ! 本を壁に投げつけないで〜〜っ!!
【8の殺人】
|我孫子武丸 | 講談社 | 文庫 | 1989|
我孫子武丸デビュー作。
上から見ると数字の「8」の形をしている館で起きる殺人事件の話。レビューとかみてると、
もうこの設定の時点でトリックにあたりがついたって人もいるみたいですが……
当然己はわかりませぬ。ニチャ。
この人の続作「0の殺人」「殺戮に至る病」が書評であがっていたため
読もうと思っていたんですが、万が一……万が一、ネタバレがあると鬱だと思い、
順番に読んでいくことに。
文体のおかげか、とても読みやすいという印象を受けました。サクサクいける。
ユーモアにも富んでいて、内容もなかなか面白いです。
最近、麻耶作品を立て続けに読んでいたためか、良い意味でものすごく普通に
思えるなぁ……(苦笑
【メルカトルと美袋のための殺人】
|麻耶雄嵩 | 講談社 | 文庫 | 1997|
短編集。
一本一本が短いので読みやすい。さすがに短編ではトンデモなことは出来ないらしく、
殺人があってトリックがあって動機があって……という形式もちゃんとしてるし、
パズル的な推理モノとして良くできてます。
なかなか面白かった。
しかし何故、麻耶雄嵩は、メルカトルが遺体に唾を吐きかけたり足蹴にしたりするのを
描写するんでしょうか。あまりに唐突なんで最初読み間違いかと思った(w
あと、この人、ネーミングにアニメネタ(or特撮系など)が多いっていうのは
有名な話ですが、さすがに地名"小土茶"には度肝抜かれたヨ!