[懶惰]



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【ロートレック荘事件】
|筒井康隆 | 新潮社 | 文庫 | 1990|


某所でもやたらと勧める声が多かったものの、「メタ・ミステリー」という 文庫の紹介文になにやらキナ臭いものを感じながら読んだのですが……。
んんんやああぁぁ〜〜、ものの、見事に、やられました。さすが「言葉のプロ」 と云いたくなります。筒井康隆はミステリに関しては数えるくらいしか 書いていないみたいですが、まさに筒井ならではの「トリック」で 楽しませてくれました。

断筆騒動の時、差別表現問題について「筒井は特例ってことにしときゃいいじゃないか」と 云った某の言葉も、筒井作品読めば理解できそうな気がします。 才能のある人が悪意でなく(使いようによっては)差別的になりうる要素を エンターテイメントの一環として用いたにもかかわらず、それに対して 自主規制を"強要"するのはやはり不条理ですね。
例えば身体障害者を小説に登場させちゃいけないとかなんとか……。 まったくもってナンセンス。

あ。話がずれちゃった。
けど面白かったよ。(取って付けたように





【星降り山荘の殺人】
|倉知淳 | 講談社 | 文庫 | 1996|


話の区切りごとに、例えば
まず本編の主人公が登場する
主人公は語り手でありいわばワトソン役
つまり全ての情報を読者と共有する立場であり
事件の犯人では有り得ない

などのように注意書きがあり、"あくまでもフェアに読者に真っ向勝負を挑む"という 異色のミステリ。

いやぁ…………トリックなどのネタバレをしなくても、レビューした時点で ネタバレになってしまうという類のミステリは、非常に感想が書きにくいのですが(苦笑)。
とか云った時点でもう駄目なんですけどね。ああん。
『すごく面白かった』で終わらせてもいいような気もしますが……。 見事に緻密な論理の積み重ねをしておきながら、ある一つのピースを嵌めることによって 全く全体像が変わって見えるという構図は、いつもながら非常に面白いと思う。
"陸の孤島"パターンはもう出尽くしているのかもしれないけれど、 こういうミステリを読むとまだまだ可能性を感じてしまいます。

ん〜む。面白い。





【ノルウェイの森】
|村上春樹 | 講談社 | 文庫 | 1987|


52氏に勧められて読んでみました。
こういうの好きな人多いでしょうね。
ただ、おそらく、支持する人も多く広く一般に認められている作品ではあるけれど その面白さが己には解らない作品、という予想は残念ながら当たっていたようです……。
僕、パンクロックが好きなんですが、例えばボサノヴァやジャズを聴いても、 それが好きな人は多いだろうなということは分かってもどこがどう良いのか ということは解んないんですね。ん〜〜〜。

キャラで云えば永沢がわりかし好きだったんですけど。
『だからね、ときどき俺は世間を見まわして本当にうんざりするんだ。どうして こいつらは努力というものをしないんだろう、努力もせずに不平ばかり言うんだろうってね』
『僕の目から見れば世の中の人々はずいぶんあくせくと身を粉にして働いているような 印象を受けるんですが、僕の見方は間違っているんでしょうか?』
『あれは努力じゃなくてただの労働だ』
……こういうのは本来の楽しみ方ではないんだろうなぁ……。

本来味わうべき部分すらわからないのはアレなのでちらっと検索などしてみたのですが、だいたい 以下のようなことらしいです。
http://www04.u-page.so-net.ne.jp/ga2/tyasu/sakuhin2/norway/norway.htm
その他にも「人間関係に悩んでつらくなったらこの小説を読むのが一番いいかもしれない」とか 「「ノルウェイの森」を読むとほっとします」という感想が多いようなので、そういう ジャンルの小説みたいですね。
己はどっちかといえば読後に思い悩んで心かき乱されるほうが好きなので(w)、 ちょっとゾーンが違ったかな。無念。





【黒死館殺人事件】
|小栗虫太郎 | 社会思想社 | 文庫 | 1934|


「戦後三大ミステリ」のひとつ。

なんというか、やはり己はアームチェア・ディテクティブ(安楽椅子探偵)が 『おいおいホントかよ』ってくらいバッサバッサと事件を斬っていく タイプの方が好みのようで、こういうタイプのミステリはど〜も 嗜好に合わないみたいです。

おそらく形式としては「これぞ古典」と呼ぶべきものなんだろうと思います。 "超"名探偵・法水鱗太郎が事件の度に現場(といっても同じ屋敷の中ですが)に足を運びつつ、 明晰とも突飛とも云える推理で真相に迫っていく……という展開なのですが、 どうもその、「実は推理が外れていた→次の事件発生」というパターンが ままみられるため、探偵の存在感がいまいちクッキリしないという印象を 抱いてしまうのです。

しかし、この小説の特徴の一つとも云われている、小説自体に詰め込まれた膨大な知識の量は まさに圧巻。要る知識、要らん知識、トリックに関係する知識、しない知識、とにかくふんだんに 詰め込まれています。
名作と呼ばれる作品にはこういったものが多いような気がします。やはり多様な楽しみ方が 出来るからなんでしょう。

ちなみに、戦後三大に竹本健治「匣の中の失楽」を加えて「戦後四大ミステリ」と呼ばれることも あるそうですが、『四大から「匣の中の失楽」を除いて「戦後三大ミステリ」と呼ばれることもある』 という云い方をする人も居て、ややこしいですw
まぁ、どっちみち、「匣の〜」には挑戦してみようかと。

(注)小説レビューに於ける年数は、文庫本の場合でも文庫出版年ではなく初出(昔なら単行本とか 今なら新書のこともあります)の出版年を記載していますが、「黒死館殺人事件」に関しては 知りうる限り昭和9年「新青年」掲載・昭和10年刊行ということしか判らなかったので、 1934という年数にしてあります。
間違いの可能性もありますので、一応。






【殺人鬼】
|綾辻行人 | 新潮社 | 文庫 | 1990|


血わき肉おどる……じゃなくて血しぶきが飛び肉片が舞うスプラッタ・ホラー。
綾辻の他の作品とは全く趣が異なります。あまりの残虐描写に、読んでて目を背けてしまいました。 一応、どんでん返しというか仕掛けも用意されていますが、やっぱ、己は普通("優等生的"な本格物)の ほうが良いなァ。
伏線などの要素も、性質上あまり意味が無くなってしまうし。

「殺人鬼II」も刊行されていますので、アレはナニしていないってことで。
あー怖。





【誰彼】
|法月綸太郎 | 講談社 | 文庫 | 1988|


「たそがれ」。
二転三転する展開は良いのだけど、文末が「〜た」で終わる表現が異様に多いのと、 ほとんどが、探偵である法月綸太郎の推理がとにかく外れまくって新事実発覚→次の展開……という パターンなので、解決時の爽快感が薄いのが難。
お約束でも探偵役は嘘みたいに明晰なほうがやっぱ好きです。

個人的にはいまひとつかな。





【迷路館の殺人】
|綾辻行人 | 講談社 | 文庫 | 1988|


いやぁ……館シリーズの第三作なのですけど、まさか"あの"トリックを使うとは 思ってもみなかったので、完全に騙されたというか、『いやにサクサク事件が進むなぁ?  このままいったら多分読後感は物足りないだろうなァ』などと思っていた僕ちゃんの 単純な脳みそを後ろから串刺しにしてくれました。

もちろん、それがイコール「面白さ」に変換されたのは云うまでもありません。

館内部の通路が迷路になっているという、現実には有り得ないような建物に4人のミステリ作家と 他数名が招かれ、主人の"遺言"により推理小説の競作を始めた直後、起こり始める連続殺人事件。
この「館シリーズ」では、どこかに隠し通路があるというのがお約束になっています。 そのため当然、「どうやって密室をつくったのか?」という命題に対して「実は隠し通路があった んだYO!!」という解答であるならば己も『なんだそりゃ』と云うと思うのですが、 逆に「何故密室をつくりたくなかったのか?」という命題に対しての解答に使われているため、 納得できて面白いなと思うのです。
上手いなァ。

シリーズものでありながら、毎回違った試みを凝らしているこのシリーズ、とても面白いと思う。





【人格転移の殺人】
|西澤保彦 | 講談社 | 文庫 | 1996|


ウチュージンが残したと思われる装置に複数の人間が入ると、それぞれの人格が 完全に不定期な間隔でスライドしてゆく"マスカレード"という現象が始まる…… という、著者お馴染みの超常系設定に於ける本格ミステリ。

偶然居合わせた6人の間で"マスカレード"が始まるが、封鎖された政府機関の中で 連続殺人事件が起こって……という話。
んーーやー良いです。設定も面白ければ、清冽で奇抜な論理も面白い。それから この作家、すごく素敵な文章も書けるのに、フランクというか冗談めかした 文体も好んで使うようで、わりかしさくさく読めるのも良いです。

実は西澤作品を読むようになったきっかけは、本屋でたまたま見かけたこの本の 文庫版あとがきを森博嗣が書いていたからなのですが、ホントに きっかけっていうのはわからないなァと思う。
結果的に、もちろん良かったのです。





【完全無欠の名探偵】
|西澤保彦 | 講談社 | 文庫 | 1995|


相手と話をするだけで、ついつい真実を話させてしまう"能力"("体質"とも云える?)を 持つ男を中心に進む物語。
形式としては「解体諸因」と同じように、いくつかのエピソードが最終的に ひとつに関わってくるってやつです。

面白かったと思うのだけど、SF的設定としてはちょっとハジけきれてない部分も 感じるので、惜しいなァという思いもあります。
しかし土佐弁にちょっと萌えてしまったいうのも加味して、星半個プラスしておきたいと存じます。





【七回死んだ男】
|西澤保彦 | 講談社 | 文庫 | 1995|


時間の反復落とし穴に嵌ってしまうことで、自分だけがその一日を9回繰り返してしまうという "体質"を持つ高校生男子が主人公の、SF的設定ミステリ。

んやー、これは、面白いです。
別に設定が現実離れしていたって、それに基づいて清冽な推理を展開させれば、 十分に……時にはマトモな設定のものよりずっと面白くなるって事を、 この作品によって納得させられました。
もともとSFは好きだっただけに、素直に楽しめたってのもあるのかな。

祖父が死んでしまうという"事実"を覆そうと様々な試みを行うも、 何故か、繰り返す"一日"のたびに祖父は死んでしまう。一体何が原因なのか?  ってな話なのですが、主人公の一族の面々がなかなかに面白いキャラづくりが してあって、"一日"のたびに各人の意外な側面が判ったり本性が露わになる (当然次の"一日"では全て白紙に戻るので知っているのは主人公だけ)という 展開が、物語としてすごく面白い。キャラ萌え上等。

さらに反復時間の前提問題に関する事件の謎を、あっと云わせる解決で オチをつけているのも見事。
うんん、面白いっす。代表作と言われるのもうなずけまする〜。





【解体諸因】
|西澤保彦 | 講談社 | 文庫 | 1995|


デビュー作。
トンデモなSF的設定の作風はこの作品ではまだ採用しておらず、 「何故死体を解体したか?」というホワイダニットを各短編で突き詰めまくって 突き詰めすぎたために半ばギャグのようになってしまったというのは あとがきで著者も述べているような、そんな作品です。

『ンなことで死体をバラバラにするわきゃねーべ!』というツッコミを 神棚に上げておきさえすれば、短編集と思わせておいて実は各々の繋がりが 判明するという意外性も面白いし、タックこと匠千暁のデビュー作としても 楽しめます。

いや、、ホント、突き詰めすぎるとギャグになるって、 そうだな〜と己もちょっとそう思いました。
面白いですけどね。





【麦酒の家の冒険】
|西澤保彦 | 講談社 | 文庫 | 1996|


高原で休日を過ごした大学生4人の一行が、やむにやまれぬ事情から たどり着いた山荘。その中にはベッドとクローゼットしか家具が無く、 クローゼットに隠してあった冷蔵庫の中には、何故かキンキンに 冷えたヱビスビールのロング缶96本とジョッキ13個が入っていた……ってな話。

「9マイルは遠すぎる、ましてや雨の中ならなおさらだ」という言葉だけから 様々な推理を働かせて真相を見抜いた、名作と云われ「純粋論理」という言葉を 冠せられるハリィ・ケメルマン「9マイルは遠すぎる」を目指した作品だそうです。
確かに主人公達が仕入れた情報というのはすごく限られており、多少強引な 論理もあるものの、そのうちの一人は真相までたどりつくという、一風変わった 作風になっています。

こういう作品も、面白いですね。
ちなみにこの作家の人気シリーズである「タック&タカチ・シリーズ」の 何作目かです(ぉぃ





【虚無への供物】
|中井英夫 | 講談社 | 文庫 | 1964|


「戦後三大ミステリ」の一つに数えられている作品なのですが、正直な話、 僕はこの小説をあまり「面白い」とは感じられませんでした。
それが、この作品以降、手法や構造が良い意味で模倣され、かつ、娯楽として越えるもの が制作されてきたために、ご本家が特に新鮮味のないものになってしまったからなのか、 それとも「虚無への供物」がいわゆるアンチミステリ……つまり「ミステリの中にミステリを 内蔵する」、「ストーリーが二点三転する」、「結局未解決の謎が残りすっきりと終わらない」 などの特徴をはらんだ作品であるからなのか、はっきりとは判りません。
あるいはただ冗長だったからなのかも知れません。

でも、とにかく非常に多くの要素を含んだ作品であることは確かです。色んな 楽しみ方が出来るのでしょう。だからこそ、支持する人も多様な形で存在するのだと思う。


「この一九五五年、そしてたぶん、これから先もだろう が、無責任な好奇心の創り出すお楽しみだけは君たちの ものさ。何か面白いことはないかなあとキョロキョロし ていれば、それにふさわしい突飛で残酷な事件が、いく らでも現実にうまれてくる、いまはそんな時代だが、そ の中で自分さえ安全地帯にいて、見物の側に廻ることが できたら、どんな痛ましい光景でも喜んで眺めようとい う、それがお化けの正体なんだ。おれには、何という凄 まじい虚無だろうとしか思えない」





【殺意の集う夜】
|西澤保彦 | 講談社 | 文庫 | 1996|


スプラッタ・コメディ・ミステリとでも呼ぶべきか、とにかく痛快なほどに はちゃめちゃなミステリ(w
偶然、山荘で一夜を過ごすことになった一行……その夜、主人公(つってももはや殺人鬼なんですが:笑) である女史が「もののはずみ」で5人も6人も殺してしまったところから物語が始まります。
確かに自分は大勢殺してしまったが、寝室で死んでいる親友の娘だけは自分が殺したんじゃない、 一体誰がやったのか……という『この際そんな小事はどうでもいいじゃないのか?』という疑問を 推理で解決(?)してゆくってな話。

この作家はSF的もしくはトンデモな設定を前提にしつつ、清冽な論理で物語を紡いでゆくことが 持ち味の作家らしいのです。
ただしこの作品は倒叙形式(読者に予め犯人が分かっていたり叙述が犯人の一人称であること)なので 解決時のカタルシスが薄いというのは個人的に否めないし、 「陸の孤島」が実はそうでなかったり、ネタバレですが外部の犯行 というのも、『それアリなの?』という気がしないでもないのですね。

話としては面白いけども、ミステリとしてはいまひとつかなぁってのが率直なところではあります。
でもこの作風、嫌いじゃないカモ。





【水車館の殺人】
|綾辻行人 | 講談社 | 文庫 | 1988|


館シリーズ第二作。
妖しい雰囲気の館「水車館」と仮面を被った主人、その妻で半ば幽閉状態にある美少女、 そして館に招かれた客が密室から姿を消した奇怪な事件から一年、 再び館に招かれた客達の前で事件の真相が明らかになってゆく……ってな話。

めずらしいくらいストレートに密室トリックと死体切断の必然性を結びつけていたり、 仮面を被るということの持つ意味もまんま処理していますが、 雰囲気があってなかなか面白かったです。
このテのネタ(仮面)は、おそらく古典では定石なのかな?という気がします。 この作品('88)以降の作品でも同じようなネタをちらりほらり見かけるっていうのもあって、 残念ながら意外性はちょっと低かったかなと。

なにげに文体が読みやすくて、実はさくさく読める系ですね。この作家は。





【そして二人だけになった -Until Death Do Us Part-】
|森博嗣 | 講談社 | 新書 | 1999|


とにかく、プロットが素晴らしい。

シリーズではなく単発もの。全長4000メートルの海峡大橋を支える巨大なコンクリート塊 "アンカレイジ"の内部に集まった6人が、通信環境が破壊された「密室」環境下で次々と 殺されてゆく。そして最後に残ったのは盲目の天才科学者とアシスタントだった……てな話。
『読んだことはありません』と平気な顔で云いかねないのが森博嗣の怖いところですが アガサ・クリスティ「そして誰もいなくなった」に向こうを張ったタイトルであり、そして 「双生児」という使い古された(らしい:僕は古典と呼ばれる作品をほとんど読んだことがないので わかりませんが……)マテリアルを用いつつも、『二人残ったんならどっちかが犯人じゃねーの?』 という己を代表とする単純思考の人間を見事に裏切ってくれるトリックを 構築してみせるところが、さすが森博嗣だなと非常に感嘆しました。

もちろん恒例、作中人物の言葉を借りての「森節」も炸裂してます。
そのため作品としても面白いものになっているのが良いですね。

はーーーー。ホントに、どこまで才能のある人なんだろうと思ってしまう。もちろん、 Vシリーズは『キャラ萌えに堕した』と云う人がまま居るというのも見知っているから、 このあと駄作を連発しているという可能性も充分あるにはあるんだけれども、 少なくともS&Mシリーズとこの作品からはビッシバッシと論理のパッションが 伝わってくる……というのは気のせいでもないと思うのです。


目を瞑り、
私は、彼の一部になった





【パズル崩壊】
|法月綸太郎 | 講談社 | 文庫 | 1996|


短編集。比較的最近の作品です。
それなりに楽しめました。ただ、絵の話のオチが、例によって理解力不足で いまいちよく解らなかったのです……。
超常的なネタって解釈で、いいのかなぁ。

ロス・マクドナルドのやつは、まぁ、ハジけたところにとんでいくというネタ なのでしょう。「黄色い部屋の謎」、はやく読んでみたいと思っているんですけども。





【十角館の殺人】
|綾辻行人 | 講談社 | 文庫 | 1989|


綾辻行人のデビュー作。
学生の時分に書いたものへ校正に校正を加えてできあがったそうですが…いや、 かなり良くできていて、面白いです。

孤島に建つ奇妙な館「十角館」へ大学ミステリ研究会の七人が訪れるが、 そこで一人また一人と殺されていき……という筋立てが、まず、 発達した警察科学捜査からの現代的逃避としての「孤島」であると 作中で自ら指摘しておりつつもなお興奮させるものがあるし、 なによりも各々の呼び名(件のミステリ研究会では実力者に"エラリイ","ポウ"などと 古典ミステリ作家の名前をニックネームとして付けて呼び合っている)に関する ミスリードが素晴らしい。
おもわず『うぅわ、やられた〜!!』と思ってしまったトヨ。

いつも思うのですが、ミスリードやミスディレクションという手法に関しては、理解力の劣るほうが結果的に 騙されて楽しめるんですよね。『なんだ、そんなもんとっくに気づいてたよ』って いうよりはずっと。
真相の解釈では困ることが多々あるんですけどね……。Hahaha.

んん、いや、面白かったです。これは。





【雪密室】
|法月綸太郎 | 講談社 | 文庫 | 1989|


これまたオーソドックスな雪の密室もの。
エラリイ・クイーンを模して、「法月綸太郎」という名前の小説家が探偵として事件を推理して 解決するシリーズの一作目であり、法月倫太郎の第二作目。

書評では「基本に忠実すぎる」ということも云われていたようですが、己はけっこう好きです。 密室トリックも単純だけどそこが素朴で良いというか。

もう12年も前の作品なんだなぁと思うと、なにがしか感慨。





【密閉教室】
|法月綸太郎 | 講談社 | 文庫 | 1988|


法月綸太郎のデビュー作。オーソドックスな学園もので、密室トリックや 高校生のアマズパーイ情景を描きつつ二転三転の仕掛けがなかなかに面白いです。
『こんな高校生いねーよ』というツッコミは物語上の要請という必要性と相殺できるので 気にならないし、思わず『んなアホな』と云ってしまいそうな赤川次郎「幽霊列車」ばりの 真相も、種々の伏線や机と椅子が移動した理由とあわせれば納得できないこともないことも ないこともありませんこともございます。
アレだね、漫画の「ジーザス」みたいな。

でもひとつ、ソファに挟んであったメモについて、『思わず書いてしまっていたんだ』 ってのはやっぱりちょっと苦しいかな。





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