SHIO SATO Database

夢みる惑星


呼び込み!

舞台は太古、恐竜の闊歩するとある惑星。砂漠に、アスカンタ王国を宗主国とする、封建的な社会が展開している。
主人公イリスは、アスカンタの第一王子であるが、出生の問題のため、母:ルキソーヤと山中に隠れ住んでいた。母は死に臨み、この惑星の宗教的中心「谷」で、ひっそり一生を終えるように言い含め、イリスを「谷」にたくす。父:モデスコ王はイリスを王にと望むが、一方、「谷」の幻視者ライジアは、イリスを「谷」の主である大神官に推戴する。ライジアにはある予感が...

宣伝!

さて、一番愛している作品の宣伝を書くのは意外と難しい。読んだときに衝撃を受ける作品は少ないながらもままあるんですが、何度も読み返してしまう作品は滅多にあるものではありません。これは、私を佐藤史生に転ばせた(^^;)、そういう作品です。その感動が持続して、とうとうHPまでつくってもうた。

 さて、売り。主人公イリスの、また、その他の登場人物、ゲイル、ライジアなどの内面描写(これは、あんまり書くとネタバレになっちまうので)の面白さや、(これは、どの佐藤作品でもそうだが)、とっても奇妙な世界でありながら、それに現実感を感じてしまう、社会構造の構築の確かさなどですね。
佐藤作品の中で、特に「夢みる惑星」に特徴的なものとは、視覚的(漫画だから、当たり前と言わないように)なことでしょうか?想像の中でその印象が焼き付けられるのです。例えば、夜のアスカンタ、この星都の上を翼竜にのって飛ぶイリスとカラや、ラストシーン。これは一大スペクタクルで、ジェラシック・パークを撮るぐらいなら、この作品を撮って欲しいぐらいと思うほどのものです。また、幻視のシーンや、シリン(ヒロインです)の舞、特に「夏至祭」での舞にはついトリップしてしまう。

現在(97年10月)、小学館から全3巻を文庫本で購入\(^◇^)/可能。是非是非是非是非買ってください。損はしません!私としては、これから佐藤ワールドに入っていただきたい。さらに、ずるずるとのめっていただくと、とっても嬉しい(^^;)。ともかくご一読を。


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<Alert>以下の文章は、既読者を対象にしています。ネタバレ注意!


参照−佐藤さんがこの作品について語っている書籍−

書誌事項はこちら

81年 フュージョンプロダクト創刊号
81年 SF COMICS リュウ 11月号 VOL.14
82年 COMICBOX創刊号
竜の夢その他の夢


D−51、ブラックホール...佐藤史生

 なんで、こんなに「夢みる惑星」が好きかつらつら考えてみるのだけれど、シリン、カラ、タジオン、モデスコと言った陽性キャラの方が特に好きというわけではないらしい。一方、エル・ライジア、イリス、ゲイルなどの陰性キャラにとんでもなく惹かれている自分を省みてびっくりする。佐藤さんの作品には、佐藤さんの価値判断が前面に出ている場合と、この、自己を容認できないキャラクターが、前面に出てくる場合があると思うのです。対立する概念ではないし、割合の問題ですが...でもって、自分はこの自己を容認することのできないキャラクターが前面に出てきている話が好きならしい。

 エル・ライジアは幻視者の孤高といったもので違うかも知れませんが、たった一人、超共感者であると言うことのためだけに、絶えず人の苦痛に曝される。自分に原因が全くないのにお気の毒の極みです。「他者の苦痛=自分の苦痛」なんですから。

 イリスは近親相姦による子供で、自分の存在自体が、タジオンや王妃の苦痛であると思っているわけですね〜、母親に「谷の片隅でひっそり生きろ」なんて、一種存在の否定につながることを言われて育つのも不幸です。ルキソーヤは見かけはともかく、母親になって欲しくないタイプの典型ですね。実は。

 ゲイルはゲイルで殺人者としての自覚を持つと、自我崩壊に陥るので、本来の自分の姿を見ないように、舞に逃げ込み、さらには自分の内にこもる。これは立派な病気です。 みなさん自分にひっかかりがあって、自分を許してない、んでもって、自分のありのままの姿から逃げてるわけです。

書いてみると、とっても暗い3人ですが、それなりに救われている。

ライジアは身体構造上の問題だから死ぬしかないですね。それは救いじゃない(^^;)って?リリエンスールのように、能力を封印してくれる人がいない限り、あるいは地球を離れて、過去のソリステラにでも行かない限りは...この方は作品中、やっぱり不幸の大将(^^;)です。他者イコール自分の苦痛を軽減するために、イリスをスケープゴートに仕立てるあたりは、酷いヤツですが...こういうことを書くと、利己主義の塊に見えますが、考えてみれば、実は彼は利己主義と利他主義のサカイのないお人です。始めイリスが「大神官」になるのを嫌がっているのにも共感してたわけだから「私にも彼にも不快な業」なんだろうな〜、何をやってもしんどい。やっぱり不幸の大将だ。

先にゲイル、彼は、いわゆる「大神官」に救われる人ですね。殺人者であることの自覚が、自己崩壊のトリガーなら、殺人者じゃなくなれば一番いいわけですが、他にできることがないならば、「殺人」を「大神官」=大義名分のための、「崇高な使命」に化けさせてしまえばいいわけです。「大神官」は舞よりももっと容量のある受け皿ですから。彼は、日常、私たちも身の回りで見る宗教に走った人なわけです。私は、それでも、その人が生きるために必要なら、例え、あやしげな宗教でもいいんじゃないかと思います。その人の周りにいる人ができるだけ迷惑を受けないようにはして欲しいけど。カラという友人の存在も大きいですね。彼は別に殺人者の友人ではなく、ゲイルにゲイルとしての価値を見つけてあげられる人なのですから。

イリス、彼は王妃やタジオンが「苦痛」を感じていることを「苦痛」に受け取る人ですから、ライジアの「他者の苦痛=自分の苦痛」に共感できるわけです。だから自ら、ライジアの計画にのるわけですが、まだ一つ自分を見ないですむ罠にかかります。彼は「大神官」である時には、イリスでなくてすむからです。大神官を「器」だ、とか「空」だと主張しているのは、やっぱりそこに逃げ込んでいる自分を見たくないからでしょう。「空」であって欲しかったんでしょうね。シリンにその中に「竜の子」がいると指摘されるのは、一番痛いところでしょう。でも、その、「竜の子」をシリンは認めた上で惚れてるわけですから、こういう人にしかイリス自身を認めてあげられない。大神官の衣を脱ぎ捨て、シリンと飛翔するイリスに「自己の容認」を見ていつも感動し、かつ、ほっとするのです。ある程度は生存本能に忠実に!自分も自己の存在が容認できるんじゃないかと...だから、自分から逃げたくなるような心理的にしんどいときにもこの本は必需品だったりします。もちろん、この話はとっても重層的な読み方ができるので、モデスコ、シリン、タジオン、カラを理想的かつ安定した人格の見本と見る人もいるだろうし、そこここにあらわれる。佐藤さんのから竹割の価値判断を楽しむこともできるでしょうが。


タウリの根城B1F−続編もある−

このHPの分類上シリーズとしてまとめちゃったように、この作品には前史「星の丘より」と後史「雨の竜」「竜の姫君」があります。色々あるんですが、興味があれば、そのページを参照してください。前史は関連の深さから、読んでおきたいところ。大災厄直後の佐藤さんの設定は「竜の夢その他の夢」に書いてあります。
南に逃げたタジオンのアスガラ建国。北に逃げたズオーのモルガンド建国。ゲイルは10カ月ぐらいして、アスガラに無事合流(後史でタルクの持っているリュタンに注目)。イリスとシリンは、難民にまぎれて逃げるが、シリンが懐妊後、尋常な様子ではないので、人気のない山中で一生を終える。カラたちと再会することはなかった。カラはタジオンの片腕として、アスガラの建国を助け、アッサと結婚したんであろうと「推測」されるそうです。アスガラが落ちついた後、カラとゲイルは放浪の旅に出て帰ってこない。
じゃー嫁さん子供はどうなった?とか考えるのは私だけか...


タウリの根城B2F−構想は10年−

82年のCOMICBOX創刊号のインタビューで佐藤さんは「構想は10年だけど、ネームは昨日できたばっかり」(注:連載中)と答えてます。前史「星の丘より」の周辺の事情は、そちらの地下を参照してください。地下2階まで来てしまったあなた、あなたはコミックに書いてあるようなことは繰り返す必要はないですね。これの傍証として、私が探した範囲でのカラとイリスの初登場は佐藤さんのデビューの年、77年(連載開始は80年)なんです。坂田靖子さんが当時会長をしていた慢研ラヴリの同人誌ピグマリオン3号に、ゲスト(会員ではない)として招かれ、カラとイリスの一枚物のイラストを描いています。その背景に、アスカンタ頌歌がすでに書いてあります。カラの顔はすでにできあがっているが、弾いてるのはリュタンではなかったですね。イリスの顔は、まだ、「一角獣の森で」のシーヴァに近いです。
76年にもピグマリオン1号に王子と少女を描いた1枚もんのイラストがあるのですが、若き「モデスコ」と「ルキソーヤ」かと思うのは考えすぎでしょうか?顔は全然違うんですがね。
話は変わりますが、雑誌はリアルタイムでなかったあなた、「夢みる惑星」は最初は各話ごとに、タイトルがついて、「夢みる惑星より−−]と扉に書いてあったので、第8回第7話に入るまで、読者はタイトルを「夢みる惑星より」だと思っていたようです。


タウリの根城B3F−イメージは−

地下3階まで読み進んできたあなた、そう、あなたは、世間からマニアと蔑まれる運命にあります。もー引き返せません。お仲間です。
どう言うところに「夢みる惑星」のイメージがあるかですが、「竜の夢その他の夢」では、「ジーザス・クライスト・スーパースター」の衣装を見て、それが描きたかったかららしい。
COMICBOX創刊号の方では、映画そのものではなくて、「アラビアのロレンス」氏の生き方にはまったんだそうな、イリスの原型だそうです。こちらで、佐藤さんがロレンス氏について読んだ本の紹介をしているので、興味があればどうぞ。ライジアのネームは一部ロレンス氏の発言からとってあるそうです。イリスの方は、ロレンス氏を演じたピーター・オトゥールにではないと言っているけれど、モデスコ王のモデルはMr.スポックじゃなくて、「ベケット」という映画のヘンリー2世に扮した、ピーター・オトゥールだそう。スフィンクスより愛をこめても「おしゃれ泥棒」(オードリー・ヘップバーンとピーター・オトゥールの主演)の線をねらったそうだから、嫌いじゃないんでしょうね。初期作品の男性陣がこの方に似ていると思いませんか?


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