ニセコの怖い話
今から10年前の夏、北海道をツーリングしていた時のこと。
ニセコのあたりで野宿をしようと思い、昆布から雪秩父温泉へいく途中の
(パノラマライン)人家から離れたところにある「昆布温泉公園」(駐車場公園)を見つけ、
そこに泊まることにしました。
もう夕方でしたので、車もめったに通らずセミの声だけが
聞こえていました。
公園の中にバイクを乗り入れ、道路側から見えにくい東屋の陰に
テントを張り、食事を済ませるとあたりはもうすっかり暗くなっており、
遠くの水銀灯だけが白々と光っていました。食事が終ると特にすることはなく
さてシュラフにはいって日記でも書こうかとテントの中で荷物をさぐっていたところ、
自分の他には誰もいないはずの東屋でフッと明かりがつき、なにか人の気配のようなものが。。。。
そしてしばらくすると
カタ・・カタ・・・・カタカタ・・・・カタカタ・カタ・・・・
・・・・・・カタ・・・・・・カタカタ・カタ・・・・・・・・
東屋のコンクリートの上を子供が下駄か何かで歩き回るような音が
微かに聞こえてきた。。。。
・・・カタッ・・カタ・・カタカタ・・カタッカタカッタカタ・・・
ときに立ち止まり、あるいは小走りにたどたどしく聞こえてくる音は
夜の公園に響いていた。。。。
カタッカタ・・・カタカタッ・・・・・・・・・・・・・・・・
私は怖くなってシュラフにくるまりアーミーナイフとマグライト(懐中電灯)を
握り締めじっと体を固くしていた。
カタッカタカタカタカタッ・・・カタッカタッ・・・・カタ・・・カタ
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しばらく音は続いていたがやがて聞こえなくなり、明かりも消え、静寂が訪れた。
私もいつしか眠っていた。
次の朝 東屋を調べてみたが、昨日となにも変わったところはなかった。
荷造りをしてテントをたたんでいると、ジムニ−に乗ったオジさんがやってきて
言った。
「にいちゃん 昨日はずいぶん早くから寝てたんだねえ。」
「へっ? ゆ、ゆうべ来てたんですか?」
「あぁ よく夜にここへきてワープロ打ってんだよ。」
「わーぷろぉ?・・・・ 打ってたんですか?」
「そーだよ。」
そうなのです。ゆうべ聞いた子供の下駄の音の正体は、このオジさんの
ワープロの音だったのです。
今から10年も前、まだまだパソコンとかワープロとかが一般的でなかった時
まさか夜の人気のない公園で夜な夜なワープロを打っている人がいようとは。。。
(そういえばこの東屋にはコンセントがあったっけ。)
あ〜 怖かった。
カタカタカタッ・・・・・カタカタ・・・・・。
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