《掛花入れについて》

掛花入れは花入れを柱や壁に掛け、また違った景色を楽しむもので以前にはかなり大きな置花入れと変わらないようなものも作られていたようです。海外においてもHanging flower vaseとして壁や柱に花瓶を掛けて楽しむ風習は有ったようです。ただ、それは陶器に取ってのようなものをつけてそれを釘等に掛けたり、紐でつり下げたりで金具を使ったものは以前はあまり無かったようですが最近では日本の影響もあり、増えているようです。

日本では茶道具に古くから掛花入れは見られるようです。たとえば蹲(うずくまる)のように元々ネズミに種を食べられないように柱にぶら下げたものを茶人が中国人が両手をそれぞれの袖に入れ、膝をかがめ、背筋を伸ばし、頭を垂れて最高の挨拶をする日本では最敬礼のようなものですがその姿に例え蹲として重用されて来ましたようです。

掛花金具は別名花?(はなかん)とも言い基本的には花入れを少し(15度〜20度位)柱より傾けていただく事が必要かと思います。その為に私どもでは筒の長さが【一分五厘(4,5o)・三分(9o)・五分(15o)・七分(21o)】と作ってあります。

この筒の長さで傾きを合わせて頂ければよろしいかと思います。

(輪の形では傾きはほとんど変わりません)

この場合、茶室の釘は床柱の折釘、壁の無双釘、壁に下げる垂撥の垂撥釘など(他にも葦屏風につける花寄釘なども有ります。)で柱の折れ釘は床框(とこかまち)より約三尺六寸五分で壁の無双釘も同じ高さで共に【五分五厘の出・四分の立ち上がり】で太さが折れ釘は【幅、一分五厘(4,5o)厚さ一分(6o)釘の出・六分(18o)曲がり・四分(12o)】無双釘は出し入れするため少し細くなっています。この条件に対し花と花入れが客の位置から一番美しく見えれば良いのですが、蹲(うずくまる)については木花を入れてもその重さで花入れが変に傾かず落ち着いていることから椿等の花の多い寒(1,2月)に用いられます。それに対し、少しでも金具もしっかりとした大きめのものを使っていただき、そのため金具をつける穴は肩の上に空けていただきます。

逆に旅枕(たびまくら)のような花入れは夏の前後(夏は籠を多く用います。)の合いの季節に使いますがそのため草花が美しく入りやすいのでなるべくきゃしゃに見えるような金具にします。頭の?の形は丸、楕円、変形楕円(花びら型)などが有りますが、これは花入れの形の景色で選んでください。たとえば

蹲:丸5銅上、 旅枕、矢筈、棒の先:楕円3銅上、 瓢:丸3銅上、

粽:楕円1,5銅上、雀口:丸1,5銅上、尺八:楕円5銅上

などをおすすめしています。また、記念品等予算の少ない場合は半手打ちの並品や「べた」と言う筒の無いもの、素材の鉄のもの(和鉄や玉鋼、いわれのある古釘のうち換え等、鉄の別打ち金具もしていますが価格が銀の手打ちものと変わらないくらい掛かります。通常の鉄ものは現在の鉄です。)もあります。

裏止めについては壁に花入れを掛けた場合水が穴から漏れ、壁にシミを作ることを防止し、十分な位置まで水を入れることができるようにするために裏穴をふさいだもので、昔は麦漆によってこれを行っていました。これは小麦粉を水で溶き、それに漆を加えそれで肉盛りをします。それを湿度を加えて硬化させます。長い場合は一ヶ月位かかったと思われます。また、簡易な方法で、和紙を漆に浸けてそれを張り付ける事によって行ったのも有ります。後者は強度が弱いようです。しかし、時間がかかるのと漆にかぶれるのとで現在ではあまり行われていないようです。私どもでは多くの方より相談をうけ、独自の裏止剤(黒、茶、焦げ茶)を作っています。(100c2500 円)ご必要でしたらご用命下さい。