吸引戦隊カービィファイブ外伝
某格闘家の帰省
「右によけろっつってんだろ、餅ーっ!」
新しい無線にナックルジョーが怒鳴ってます。今の状況を説明するとしたら「みんなしてのんびりしてたら、『いきなりでこすいんじゃない?』ってな感じでダークマターがやって来た」となります。
「み・・・右・・・右・・・どっちだったっけ?」
「ボタンを連打する方だーっ!」
間に合いません。ダークマターの突進の直撃を喰らいます。
「きゃー!?」
ずがんっ
近くの山にぶつかります。
「きゅー・・・」
「・・・っのカラ餅がぁぁー・・・」
【カラ餅】 カラ→空っぽ→中身がない→バカ これに「餅」がつき、「バカなカービィ」の意味を表す。略すると「バカービィ」。
それはともかく、ナックルジョーはかなり怒っているようです。アドバイスしてるのに、敵の攻撃を喰らっているからでしょう。グーイの動きが止まったことを確認したダークマターは、ナックルジョーの方に突進します。
「何度も喰らうかっ!」
木の上から飛び降ります。とりあえず、一定の距離を取ろうと、ダークマターから離れます。
「ナッシー、ナッシー。」
「ぅわっ!?」
いきなりアドにハチマキの端をつかまれます。
「いたのか。何だよ。」
「ポケモン金・銀のどこにサンダーが出るの?」
「てめー、今の状況わかってんのか!?」
「えーとね、何とかフスベまで行ったんだけど・・・」
「ゲームの状況を聞いてんじゃねーっ!戦えねー奴は別のとこにいろっ!サンダーは金・銀には出現しないんだよ!」
「えーっ!?フリーザーは?」
「中途半端にフリーザーだけ出るわけねーだろっ!」
「あ、ナッシー・・・後ろ。」
「は?」
10メートルほど後ろにダークマターがいます。目の周りにはバチバチと黒い電流が走っています。次の瞬間、黒いビームが発射されました。
森だった場所は、一部、荒れ果てた材木置き場の様になってしまいました。ダークマターはなぎ倒された木の下を調べています。そして、まだ立っている木の近くを通っていきました。
「・・・ばれなかったわね。」
その木のすぐ後ろにナックルジョーとアドが隠れていました。
「・・・てめーのせいだからな。インターネットで調べればわかるよーなことを聞いてきやがって・・・」
「・・・あ。ナッシー、右目の上の辺。」
「右目の上がどーした。」
「ちょっと血が出てる。木の破片でもかすったんじゃない?」
「・・・あんだと?」
ナックルジョーはグローブで言われた場所をこすります。白いグローブに赤い染みができます。
「あーぁ、白いのに赤じゃなかなか落ちないわよー・・・」
「・・・おいアド。」
「何よ。」
「今回の目玉は生け捕りにはできねーぞ。」
「何でよー。」
「俺が殺すから。」
「・・・え?」
「俺に一滴でも血を流させた奴は、体液を全部抜かれなきゃならねーんだよ。」
「・・・」
アドがあきれて口をぽっかり開けています。ナックルジョーはハチマキと両手のグローブをはずします。
「持ってろ。」
「何ではずしてんのよ。・・・それよりどーして私が持ってなきゃいけないの?」
「ごちゃごちゃうるさい。とにかく持ってろ。」
ハチマキとグローブをアドに渡すと、ダークマターの方を見ます。
「・・・あ、そうだ。アド。」
「今度は何よ。」
「染みにならねーよーにグローブ洗っとけ。」
「何で私があんたのグローブ洗わなきゃならないのよっ!おまけに命令口調!?」
アドの言葉に答えずに、ナックルジョーはダークマターの方へ走っていきました。
「・・・むかつくわねー・・・」
ごたごた言ってますが、結局近くの川でグローブを洗っています。
「こーゆー染み見てたら、気になるのよねー・・・あ、真っ白。意外と簡単に落ちたわね。ハチマキに汚れは・・・」
改めてハチマキを見てみると、かなりの長さがあります。2メートルとまではいかなくても、1.5メートルは軽くこしています。
「なっがー・・・どーやって巻いてんのかしら・・・」
試しに巻いてみます。
「ぅっわー、余る、余る。・・・でも、なんかいいわねー・・・ハチマキって。」
グローブもはめてみます。そのまま、近くの木の前まで歩いていきました。
「・・・すまっしゅぱーんち♪」
「何やってんだ、お前は。」
いきなり背後にナックルジョーが立っていました。
「っきゃぁぁぁぁっ!?いきなり話しかけるんじゃ・・・きゃーっ!?」
ナックルジョーは頭からつま先まで真っ黒な液体でベタベタになっていました。
「なななな・・・何それ!?・・・イカスミ?」
「目玉の血だ。血と呼べるモノかどーかはわかんねーが・・・何で森の中でイカスミだらけにならなきゃいけねーんだよ。」
「血!?それ全部!?・・・冗談じゃないわ・・・」
アドはハチマキとグローブをはずすと、ナックルジョーを川に突き飛ばしました。
だぼーん・・・
「てめーっ、2度も俺を川の中に放り込みやがったな!」
「せっかくグローブの血を落としたのに、本人が血だらけになっちゃ意味ないでしょーっ!」
変なところでしっかりしています。アドは靴を脱いで川に入ると、ナックルジョーの髪をつかんで水につけ、わしわしと乱暴に洗います。
「ぅわー・・・汚い・・・水真っ黒になってんじゃないの。」
「いてーっ、やめろ、やめろ!やめろっつってんだろっ!髪が痛む!」
アドの手を振りほどき、顔を上げます。
「・・・ちょっと!何で口の中まで真っ黒なのよっ!」
「血管らしき物を食いちぎったからな。」
「手でちぎればいいでしょーが!」
「体勢が悪かったんだよっ!」
今度は顔を水の中に沈められます。
「変なモノかじってんじゃないわよっ!きもいわねー・・・」
その後10分ほど川の周りに、バシャバシャと騒がしい水音が響いていました。
「・・・帰るぅ!?」
「ああ。1年ほど顔合わせてねーし。」
ナックルジョーは背中に小さなナップザックを背負っています。
「カビちゃん、どーゆー意味なの?ジョーの家ここじゃない。ジョーどこに帰るってゆーのさ。」
「あ、みんなは知らないと思うけどね、ジョーはここの地域の生まれじゃないの。ホントの家がここよりちょっと遠い方にあるんだよ。」
「実家に帰るってやつだね。」
「お前は無に帰りたいよーだな。」
キービィの頭を踏みつけます。
「あいたーっ、ごめんごめんっ!ごめんなさあぁーいぃっ!」
「だめだなー、キービィ。そーゆーふーに言ったら怒るに決まってんじゃない。」
「じゃ、俺は帰るぜ。ついてくんなよ、めんどくせーからな。」
言い終わるとすぐに歩き出します。
「えっ、ちょっと、ちょっと!いつこっちに戻るの!?」
「戻ろーと思ったら。」
「えーっ、そんなアバウトなーっ!」
ナックルジョーは何も言われなかったかの様に歩いていってしまいました。
「・・・何、この道ー。」
カービィ達5人とアドがかなり深い森の中を歩いています。
「かびくーん、ホントにこっちにジョーの家あるの?」
「森を抜けたとこにあるんだよ。・・・それよりさ、何でアドちゃんもついてきてんの?」
「一応気になるじゃない。あいつの友達がどんな顔なのか見てみたいし。」
「ナックルジョーだよ。」
「は?」
「ナックルジョーってゆーキャラを1人だと思わないでよ。ジョーは『ファイター』ってゆー能力の中の『ナックルジョー』ってゆーキャラの中の1人だから。ワドルドゥーだってさ、何人もいるでしょ?ジョーだって例外じゃないよ。・・・今から行くとこってさー・・・『ファイター』の能力を持つキャラが集まってんだよねー・・・」
「・・・つまり・・・」
想像タイムです。みなさん、想像しましょう。
「・・・同じ服装で同じ髪型の奴ばっか?」
「ジョーはボクのヘルパーだから色違いだけど。」
「ある意味どころか、どの意味でも怖いね。」
「でさ、アドちゃん。気になるのはそれだけ?」
「あと、『ある時』ってのが・・・」
「何、それ?」
「この前温泉に行った時、夜中にジュース買いについてきてもらった時聞いたんだけど、ハチマキとグローブを両方はずすのはお風呂と『ある時』だけだって・・・」
「えーっ!?ジュース買いについてきてもらった!?」
「アドちゃん、1人だけイイ思いを・・・」
「そっちの方が気になるわけ?」
「あ、そっか。うーん・・・『ある時』って気になるねー・・・」
「気になる、気になる。」
「とってつけたよーな気になり方ね。とにかく、何かわかるかもしれないでしょ?」
「うーん・・・気になるなー・・・」
「もういいわよ、言わなくても。」
だいぶ森を抜けてきました。
「みんな、ストップ。」
「何で?カビちゃん。」
「ここから罠があるの。」
「罠ぁ!?」
「もしかして、普通のキャラが入っちゃいけないよーな所なの!?」
「うぅん、全然。遊びらしいよ。適当に罠を仕掛けて、何人引っかかったか競うんだって。」
「何だぁ。遊びなら引っかかっても大丈夫だね。」
「ヘタすりゃ死ぬよ。ファイターのレベルなんだから。」
「・・・」
そろそろと進んでいきます。すると、いきなりキービィがポーンと跳ね上がります。
「きゃーっ!?」
ロープが足に巻き付き、逆さまになって振り子の様に揺れてます。
「きゃーっ、きゃーっ!?死んじゃうーっ!」
「なーんだ、ただの足止めだよ。キービィ。」
「きゃーっ、いやーっ!?キービィ死すとも、カレーは死せずぅぅー・・・」
「何かぶつぶつ言ってるね。」
「勝手に来やがったな、てめーら。」
「ひいいぃぃぃっ!?」
アド以外直立不動の姿勢になります。
「・・・ジョー、いつから?」
「たった今。」
「ナッシー、勝手に来ちゃいけないって言うの?」
「色々めんどくせーだろーが。」
「めんどくさいコトしなかったら、行ってもいい?」
「1つでもめんどくせーことしやがったら、3秒で家まで帰してやる。」
「3・・・秒・・・って・・・どーゆーコト?・・・もしかしてさ、スピンキック?」
「その時の気分によるな。」
「めんどくさいコト、一切しません。」
「じゃ、まっすぐ行け。30メートルほどで着く。」
「やった、許可もらったー♪行くぞ、みんなー♪」
「あれ?カーくん・・・」
カービィ先頭に5人が走り出します。キービィもいつの間にか地面に降りています。
「わーいぃああぁぁぁっ!?」
5メートルも進まない内に、みんな、罠に引っかかってしまいました。
「・・・カーくん・・・自分で罠があるって言ってたのに・・・」
「きゃ〜♪いらっしゃ〜ぃ、ビィちゃん達〜♪」
鎧や鉄球で身を包み、頭には赤いリボン・・・アイアンマムです。
「あーちゃん、久しぶりー♪」
「カビちゃん、会ったコトあるの?」
「うん、前に一度さ、ジョーについていって、ここに来たコトあるから。」
「だから妙に詳しかったんだね。・・・ところで、このアイアンマムと、どーして仲良さそーなの?」
「だって、この人、ジョーのお母さんだもん。」
「でぇぇーっ!?」
「似てなーいっ!」
「似てるどころか・・・『遺伝』って言葉はどこにいったのさーっ!」
「だって、『マム』は『お母さん』って意味じゃない。」
「そーゆー問題じゃないよ、かびりーん!」
「共通点は能力だけだね・・・」
「そー言えば、ナッシーはどこに行ったのよ。」
「あの子なら、お友達といっしょにゲームしに行ったわよ〜♪」
「ちょっと聞きたいんだけど、『ある時』って何?親なんだから、知ってるでしょ?気になるのよー・・・」
「え?『ある時』?それだけ言われてもわかんないわね〜・・・」
「ダークマターと戦ってたら、いきなりハチマキとグローブはずしたのよ。」
「え〜っ!?あの子、はずしちゃったの〜!?相変わらず、温厚じゃないんだから〜もぅ・・・」
「どーゆー意味あるの?ハチマキとグローブはずすのって。」
「ハチマキとグローブをつけてるってのは、『ファイター』であるってのを示してるの。そのどっちかをつけている時は相手を絶対に殺さないのよ。逆に・・・ハチマキとグローブの両方をはずすってのは、その時だけ『ファイター』をやめるってこと。」
「・・・つまり、それを全部まとめて言うと・・・」
「ハチマキとグローブ両方をはずすのは、相手を殺すってことを意味してんのよ。・・・ここから出ていってだいぶ経ったから、性格少しは変わったかな〜とか思ってたのに・・・」
「・・・ジョー、昔からあんなふーだったの?」
「・・・あの子が5歳の頃の話よ・・・クリスマスイヴだったわね・・・」
〜アイアンマムによる回想〜
「・・・とゆ〜わけで〜、サンタクロースって人がプレゼントを持って来てくれるのよ〜♪煙突から。」
アイアンマムが窓から見える夜空を指し、ナックルジョーに説明しています。
「・・・奇特な奴がいたもんだな・・・」
ナックルジョーはそう言うと、寝室の方へ歩いて行ってしまいました。
(よし!一応信じたみたいね!さてと・・・)
アイアンマムは家の外に出ると、サンタの衣装に着替えます。
(この姿で前に出られて信じない子供はいないわ♪・・・あの子、なんか子供っぽくないのよね〜・・・)
アイアンマムは白い大きな袋を背負うと、屋根に登り始めました。そして、煙突にたどり着きました。
(いざ、我が子に夢を与えるために!出発〜!)
煙突にもぞもぞと入り込みます。狭い空間を抜けて、暖炉に降りました。しかし、妙な音が響きました。
かちっ・・・
「え?」
ずがぁぁんっ
モーションセンサー爆弾の様な爆発がします。アイアンマムはくるくると宙を舞い、ぼてんと地面に落ちました。
「・・・こ・・・これは・・・地雷・・・」
ナックルジョーが壊れた壁から出てきました。右手で手榴弾をお手玉の様に扱っています。
「・・・」
ナックルジョーは、意識が遠い世界に行きかけてるアイアンマムを見ると、こう言いました。
「・・・何だ、やっぱり親か・・・」
それだけ言うと、家に帰っていきます。家の中からは、「ボーン、ボーン」と12月25日を告げる時計の音が聞こえてきます。
「子供らしさを期待していたのなら、これだけは言っといてやる。メリークリスマス。」
言い終わると、口で手榴弾の安全ピンを引き抜き、後ろに投げました。
「・・・そして私は2度も爆風で吹き飛ばされ、夢の世界に旅立ったのよ・・・」
「・・・何て言えばいいのかなー・・・」
全員、「あきれる」という段階を通り越して、神妙な顔つきをしています。
「・・・ふふっ、火薬くさい思い出よ・・・」
「・・・ヤな思い出だね・・・」
「とにかく、私は確信したのよ・・・性格は置いといて、この子は立派な『ファイター』になると!」
「立派すぎます。」
「ちなみに、地雷はお手製だったのよ♪」
「おー、すごーい!」
「地雷を造ってるファイターなんてイヤよ。」
「ところで・・・ビィちゃん達はわかるんだけど・・・あなたはどなた?」
「アドちゃんだよ。人間の女の子なの。ジョーとはケンカするほど仲が悪いの。」
「聞くのが遅すぎると思うんだけど・・・どーも♪子供と違って、友好的ね。」
「あの子とケンカできるの〜?凄いわね〜♪握手でも・・・」
すると、いきなり家の一角が破壊されます。崩れた壁から、ダークマターが見えました。
「あっ、この前ジョーがミンチ状態にしてた奴!もー復活したのぉ?」
「あ、こいつなの。あの子のことだから、目的だけ済まして、ほっておいたんでしょ。」
「や〜ば〜い〜!グーイいないよ!」
「ジョーのとこ行ってみたけどダメだったよ。」
「何で?」
「ストック99でバトルロイヤルしてた。みんな上手いからゲームセットまでだいぶかかるよ。」
「ビィちゃ〜ん、私にまかせて♪」
アイアンマムが前に出ます。ダークマターはいきなり黒いビームを撃ってきました。しかし、アイアンマムは跳んでかわします。見かけからは想像できないぐらいの跳躍力です。ダークマターより高い位置にまでいきました。そして、赤くて丸い両手を振り上げます。
「まざーず、めてーお!」
落下速度を利用して、両手を凄まじい速さで振り下ろします。
がづんっ
鈍い音がした直後、ダークマターは体の半分ほどを地面にめり込ませていました。
「ほほほほほ♪2000年3月までに動けるよ〜になれるといいわね♪」
カービィ達は口を開けたまま、呆然としています。誰かが、ポツリと言いました。
「・・・やっぱ、親子だ。」