ティーゼル号の模型製作のページ






 中学校2年の時,中学校の図書室で偶然読んだツバメ号とアマゾン号に心を奪われ,いつの日にか本物のヨットに乗りたいと思っ ていました。しかし,とてもそんな環境ではなかったことと小さい頃から模型作りが好きだったこともあり,模型を作ろうと思って中学 校3年の夏休みに作ったのが,5巻に出てくるティーゼル号でした。
 何しろ,当時はヨットに関して全く知識はなく,ランサム全集から得た知識を元に挿し絵のティーゼル号の寸法を定規で測り,縦横の 比率を計算し,船体の断面はほとんど勘で描いたのでした。そのため,船体はどうしても完全にはなめらかにはなりませんでした。それ でも中学生としては全長55cmの模型はけっこう大きく感じ,自分では満足していました。
 当時からラジコンにしたいと思っていたのですが,乏しい小遣いのため船体を作っただけで終わっていました。いつかはラジコン化し ようと思っていたのですが,果たせぬままいろいろあって20年あまりが過ぎてしまいました。大学を卒業した頃,NEC PC−88 01を買ったので,BASICで船体を描くプログラムを作ろうと試みたこともあったのですが,結局うまくできず断念していました。 しかし,パソコンの進歩にはすばらしいものがあり,船体の設計に使えそうなソフトも手に入ったこと,偶然同僚に模型好きな人がいて 話が盛り上がったこともあって,再び挿し絵の寸法を測り,3年くらい前から少しずつ設計を始め,1年あまりで何とか船体の設計を完 成させることができました。
 設計では全長124cmになるはずだったのですが,まず1/4の31cmの大きさで船体を作ってみて設計の修正をしようと考えま した。骨組みは紙で作ったのですが,バルサ材をはりつけてみるといかにも美しい曲線だったので,とりあえず走るようにしてみたくな り,甲板や船室・帆を作ってプロポをのせたのが1号艇です。小型のせいか,さすがに挿し絵の寸法比率ではうまく走らなかったので, メインセイルの面積を少し小さめに,竜骨を深めに,舵の面積は約2倍にしたところ,安定した風と静かな水面であればどうにかこうに か間切って風上に進めるようになりました。
 1号艇の成功に気をよくして,2倍の寸法の2号艇を現在製作中です。1週間に1回あるいは数ヶ月に1回の割合で,夜,子供が寝て から作っているので,なかなか進みません。いつかは124cmの3号艇を,そして,さらに鬼号も作りたいのですが,実現できるかど うか不明です。どなたか鬼号の船体の設計図をお持ちの方がおられたら見せてください。
 ランサムの本の楽しみ方で,聖地巡礼をされる人や,本物のヨットを楽しんでおられる人もありますが,私のように模型を作って楽し むというのもまたいいのではないかと自分では思っています。




中学校3年の夏休みに作ったティーゼル号


  

全長550mm 船体は完成していたのですが,プロポを積んでいないので操縦できません。
いつかはラジコン化をと思っていたのですが,未だ果たせないままです。
右は,鉛をとかして型に流し込んで作った錨です。




貯水池や川を帆走する1号艇

全長310mm ラダーオンリーですが,風が安定していれば何とか風上に進めます。

帆は同僚からもらった廃品の防水布なので,白色ではありません。モスグリーンの濃いめの色なので,写真では黒く写っています。金具 は机の中に転がっていたゼムクリップを曲げて作りました。船体だけはホームセンターでバルサを買って作りました。というわけで,し めて2,500円程度でできました。

プロポの代金を入れても10,000円少々で製作できました。

  


2号艇がなかなか完成しないので,時々1号艇で楽しんでいます。小さいのでいつも車に積んでいます。

  




現在建造中の2号艇

  

全長620mm。1号艇のちょうど2倍です。隣に1号艇が見えるので,大きさの比較ができます。


  

無風になったら怖いので,本来はないはずのスクリューをつけてしまいました。(左)
最近は模型用のスクリューやスプリングジョイントを売っている店がなくなってしまい,あちこち探し回りました。岡山県下では津山市 に1店舗だけ売っている店を確認しています。ラジコン用の部品は結構手に入りやすいのですが,昔ながらの模型用のパーツはなかなか 手に入りません。

セールサーボは高いので,シート巻き上げ用のウィンチを自作しました。
これも安くあげるために,教材の流用です。(右)



1号艇では舵のリンケージが船外から見えましたが,2号艇では内蔵し,外からは見えないようにしました。



船室の壁ができたところ。窓はまだいれていません。内部の白いものは浸水に備えての発泡スチロールです。


  

船室への扉です。操舵室から見るとそれらしくて,開きそうに見えますが(えっ,見えない?),実は開きません。


  

操舵室の様子です。リンケージのメンテナンス用に,左舷の座席と船尾甲板は開くようにしています。


  

屋根がつくとぐっと雰囲気がでてきました。でも実は,中はまだがらんどうで,何もありません。写真では見にくいのですが,船室の入 り口のドアの近くの床に小さい穴があります。これは操舵室に水しぶきが入ったときのための排水口です。(右の写真)



  

窓を入れ,水に浮かべてみました。まだ船体にはクリヤラッカーを塗っただけなので,木の肌が見えます。
水に浮かべるとなかなかいい雰囲気だと思いませんか。




船体に塗装し,ステーを結ぶための金具を取りつけました。


  

ブームとガフに帆を仮止めし,マストを立ててみました。ステーを張るための金具は真鍮パイプと真鍮棒を旋盤で加工し,自作しました。 船体の脇にパイプが並んでしまうのが少し変ですが,金具自体は良くできたと思っています。



マスト上部の滑車の部分です。滑車の直径は5mmです。旋盤で加工し,真鍮板を曲げてカバーをつけ,真鍮の針金でロープを結ぶ輪を 作り半田付けしています。軸は真鍮の釘と,総真鍮製で,けっこう力作です。



  

そして,ついに試験帆走にこぎつけました。夕立直前で時々突風が吹く,あまりコンディションの良くない状態でしたが,まずまず走っ てくれました。ただ,少し風が強いと風上に向いてしまい,舵でコントロールできません。ジブをつけると少しはよくなるかもしれませ ん。実はまだジブは作っていません。また,メインシートを出し入れするウィンチの配線もしていないので,ラダーオンリーの状態です。 それでも1号艇よりはゆったりと走りました。走行状態は5巻の359ページの挿し絵そのままでした。


  

試験帆走の様子から考えて,少し安定が悪かったのでバラストを増やし,ジブとウィンチを取り付けて,再びプールで試験帆走をしました。
今回は風も安定していて,うまく走ってくれました。ウィンチでメインシートの調整ができる効果は大きく,風に対して60度くらいの 向きで間切って進めました。 近くを走るときには船首で水を切る音が聞こえます。あとは,メインセールの調整と,できたら船室に電球を取りつけるのと,停泊用の テントを作ったら完成とします。


  

試験帆走の2日後です。まだメインセール等の調整はできていないのですが,いい風が吹いていたので近所の池で走らせてみました。こ こ何日かの晴天のため,水位がずいぶん下がっていました。
突風がくると80度くらいに傾いてしまいますが,小型の模型なので仕方のないところでしょう。でも,1号艇に比べてかなり強風でも 安定しています。プールと違って波が大きいので苦労しながら進んでいきました。



試験帆走の5日後,まだ調整ができていないのに,また池に走らせに行って来ました。風が強く,本当なら絞帆すべきだったのですが, そのような構造に作っていないので,メインシートを長めに出して走らせました。
今回の帆走で,大変なことがわかりました。それは,防水が大変甘いということです。1号艇はいくら風に吹かれて横倒しになってもほ とんど浸水しなかったので油断してしまい,あまり防水対策をしていなかったのです。その結果,大量の水が浸入し,ラジコンの装置が 利かなくなりました。どうにかこうにか回収はできたのですが,浸水対策として発泡スチロールを詰めていなければ沈没するところでし た。家に帰ってすぐに受信機とサーボをはずし,脱水するためにふたを開けてアルコールに漬けました。ディックが現像したネガを早く 乾かしたのと同じ方法です。
こんなことをしているので,完成にはなかなか近づけません。
2000.8


そうこうするうちに1年あまりがすぎてしまいました。浸水後,プロポを取り出して乾かしてからは,仕事が忙しかったこともあり, ほったらかしで,全然作業をしませんでした。ようやく今年の夏に少し時間的なゆとりができたので,再び作業にかかりました。
まず,浸水対策ですが,船体の開くところ(屋根・前部甲板のハッチ・左舷座席・後部甲板)にすべて薄いスポンジを貼りました。 プロポを取り付ける前に水に沈めて様子を見てみたところ,ほとんど浸水はありませんでした。もっとも,潜水艦並みの防水は無理ですが, 気をつけて走らせれば大丈夫のようです。



内部の様子です。配線でかなりごちゃごちゃしています。少し中身の説明をします。

受信機と,スクリュー用モーターはアルミ箔でくるんでいます。模型用のモーターなので,回転するときにかなり雑音電波がでます。 ノイズキラー(雑音電波を吸収するための部品)をつけていても,いくらかサーボに影響がでます。そこで,気休め程度にしかなりませんが, アルミ箔を使ってみました。効果がはっきりと見えるわけではなく,あくまでも気休めです。

セールサーボを買うお金を節約するために,ウィンチを自作しています。送信機の左側のスティックを前に倒すとシートを繰り出し, 手前に倒すとシートを巻き取ります。巻きすぎ防止のために,ウィンチが何回転かすると,カムがマイクロスイッチを押して回転を 止めるようにしています。素早いセールコントロールはできませんが,たくさんシートを出し入れでき,また,のんびりと走らせるスケールヨットなので,特に不便は感じません。
ラジコンヨットに少しでも詳しい方なら,セールの出し入れ,舵,スクリューと3種類のコントロールをしていることに気づかれたと思います。 この部分がこのヨットのコントロール装置の1番の特徴で,もっとも工夫した点なのですが,この3種類のコントロールを2チャンネルプロポでやっています。 それを可能にしているのが,上の写真の右上に書いている「セール用ウィンチ・スクリュー用モーター切り替えサーボ」です。といっても特別なサーボを 使っているわけではなく,サーボで回路の切り替えをしているだけです。そのため,送信機の操作は少し面倒です。送信機の左側のスティックを少し 前に倒すとシートを繰り出します。いっぱいに倒すと,シートを繰り出すのを止めて,スクリュー用モーターが前進方向に回ります。 逆に,スティックを少し手前に倒すと,シートを巻き取ります。いっぱいに倒すと,シートの巻き取りを止めてスクリューが後退の方向に回転します。 このように,1個のサーボで2つのモーターをコントロールしています。そのため,シートのコントロールはちょっと難しいのですが,3チャンネルのプロポを買うお金は 節約できました。


  

  
この日は比較的穏やかな水面で,風が安定していたので,よく走りました。



TEASELの文字を入れました。


帆走の様子(MPEG:10秒:約1.5MB)


2001.11
2001年11月現在,ここまで製作が進んでいます。21世紀に間に合いませんでした…。


ご覧下さって,ありがとうございます。ご感想などありましたら,:take-chan@mx1.tiki.ne.jpまでお願いします。





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