世の中つまらないことばかり。
面白いことなんてありゃしない。
(つまんねーの)
キルアは何の気もなしに、街を眺めていた。
活気溢れる街。楽しそうなカップル。走るサラリーマン。
目の前は、普通の人達。
簡単な仕事だからと、久しぶりに家の外に出ることが許されてやってきたけれど、つまらない。
何が面白いのだろうか。笑い声が聞こえる。
自分にはわからない。
ふと手を見ると、先程殺してきた奴らの血が付いたままだ。
数分で片づいてしまった仕事。
たわいもない奴らで、本当に簡単な仕事だった。
つまらない。
あいつらの死体は、路地裏にそのまま放置してきたから、そのうち誰かが見つけて騒ぐのだろう。
人間なんてすぐ壊せる。
くだらない日常。くだらない生活。
つまらない。
俺は、一体何をしたいのかな?
「俺、殺し屋なんてならないぜ」
ある日、そんなことを言うと、案の定、家族は怒った。
特にうるさいのは、おふくろ。
「何言ってるの? それだけの才能を持ちながら!」
あんたらはいつもそうだ。家を継げと、そればっかりで。
もううんざりだ。
「るせぇよ! 自分の生き方は自分で決める!!」
「キルア!!」
経緯はよく覚えていない。母親と2番目の兄を刺したのは覚えている。
その後は走った。とにかく、家から離れたかった。
走って走って、知らない所へ。
何処かの、面白いものがある所へ。
(ざまあ見ろ! これで俺は自由だ)
だんだんと、走る速度が落ちる。
(それで俺はこれから何をするんだ…?)
足が止まってしまった。
家を出たはいいが、これからのことを何も考えてなかった。
やりたいこともない。
(どうしようかな)
ふと、横に立っている看板が目に入った。
内容はハンター試験受験者募集の知らせだった。
「…ハンター試験か…」
聞いたことはある。確かかなり難しい試験で、合格できる者は僅かだとか。
「面白そうだし、やってみようかな」
特に理由はなかった。他にやることがなかったから。それだけ。
それとも、何かの予感があったのかもしれない。
ぷしゅーっ!
勢い良く飛び出したコーラが、ゴンの顔に思いきりかかった。
「………」
驚きでゴンは声も出ない。
「あはははははは」
その横ではキルアが爆笑する。
「炭酸は振ったらダメなんだってば」
「え? これ炭酸なの? 知らなかった」
きょとんとしているゴンに対し、キルアはそのまま笑い転がりそうな感じだ。
さすがにそこまで笑われると腹がたってくる。
「ゴン。お前って本当に面白いな。見てて飽きないぜ」
「悪かったな」
タオルで顔を拭きながら返す言葉は素っ気ない。
「怒るなよ。俺は誉めてんの」
「嘘だろ」
「いや、ホント」
弁解するキルアだが、頬を膨らますゴンを見ていると、また笑いが込み上げてくる。
これではダメだと思い、とりあえずゴンの肩を叩く。
「おもしれーわ、お前」
「…誉められてるとは思えないなー」
なんか納得できないと感じるゴン。
対照的な表情を浮かべる二人は、待っている仲間の所へと歩き出した。
世の中、そうつまらないものでも、ないかもな。
後書き
これは、去年に出した、初のH×H本に載せたマンガを小説に書き直したものです。
コピー本だったんで、在庫はありません。まだ原作でイルミも登場していなかった頃
に描いたものなんで、ちょっと原作と合っていないところがあるとしても、つっこま
ないで下さい。とりあえず、今回UPするにあたり、若干書き直してはいます。
キルア、可愛いです。H×Hでは一番好きなキャラですね。その分、あのアニメの
キルアはちょっと…。しくしく…。