ゆかいなライブ・・・
 平成12年11月某土曜日のことである。  朝10時半、紅がい児はO駅に到着。田舎路線なので電車ではなくディーゼル車 に乗って40分かかる。隣市に行くだけなのに実に面倒くさい。  が、待ち合わせているはずの焔の姿がない。  一応10分ほど待って焔宅に電話。 「……もしも〜し」 「おはよう。今何時かわかるか?」 「…えっと…だな……」 (やはり寝てやがったな、こいつ)  受話器の向こうから聞こえる焔の寝ぼけ声に、紅は脱力する。焔はよく寝坊す るのだ。朝に待ち合わせすると、時間どおりに来ることが珍しいくらい。来ると きは徹夜していると考えても間違いにはならないくらいに。 「とりあえず駅地下の本屋で待っているから」 「うーん…急いで支度する…」   30分後、自転車で10分くらいの場所に住んでいる焔が来る。  二人とも朝食をとってないのでそのまま道すがら店を探す。ちょうど昼どきに かかってきたので昼食といったほうが正しいかもしれない。 「何を食う?」  紅の質問に、まだどこかぼんやりしている焔が考える。 「中華が食べたいかなー」 「いいな。あ、ラーメンとかじゃなく、酢豚とか八宝菜とかのご飯ものがいい」 「当然だ」  結構波長が合う二人なので、こういうときの選択は楽に進む。  二人が歩いている通りには中華料理店は存在しないので、とりあえずはショッ ピングモールに入り、店を探しことにした。どうでもいいことだが、このビルの シンボルマークは2枚の天使の羽根だったりする。  20階に上がってガラス窓から景色を眺める。しかし山に囲まれた街なので、見 えるのはビルと車と山だけ。つまらない。  それでも人によっては『愚民どもめ』と富豪ごっこでもするのかもしれないが。 「………」  無言になる。  あいにく二人ともこんなもんを見下ろして喜ぶような性格ではなかった。 「下の階で食事するか」 「そうだな」  さっさとエレベーターで食店街へ。簡単に昼食を取った後はアニ◯イトに向かう。  ア◯メイトでは峰倉かずやさんの原画展真っ最中。オマケにその日は最遊記フ ェアをしていた。 「…カラー原稿ばかりだな。本文原稿はねーのか?」 「…みたいだな」  あのトーンテクニックを直に見られなかったことが残念で落ち込みつつも、原 画を見上げる。つい数日前に二人で此処を訪れてコミックスやグッズを購入して、 限定メッセージシートなどもちゃっかりゲットしているので、他に用がない。  実に見にくい展示配置にされていて、首が痛いわよく見えないわ。一通り見た らそれ以上は眺める気が減退した。もうちょっとましな展示レイアウトはできな かったのか? 「おい、ハリセンがあるぞ。『バカ猿!』って書いてある」 「本当か? あ、また色々とグッズが増えてるな」  額に入った原画がぶら下がっている真下の棚には、最遊記グッズが数多く置か れていた。来るたびに種類が増えているのは気のせいではあるまい。 「しかしこのハリセン、1200円もしてるが…買う奴はいるのか?」  半ば呆れて見ていると、後ろを4・5人の女子が通っていった。 「…なあ…」 「なんだ?」  明後日の方向を見たまま話しかける紅を、焔がいぶかしげに見やる。 「さっき通っていったグループ、全員ハリセン持っていたぞ。無論他のグッズも 山ほど」 「…言った傍からいたか。コスプレでもするのか?」 「さあな。オレに訊くな」  三蔵ごっこでもするのだろうか。この二人にはどうも理解できなかったので、 結構人気があるんだなという程度ですます。  後日、焔が「オレもハリセン持って西を目指すかなー」と言いだし、それを聴 いた紅が「行くんなら土産に八百ねから《バカが治る薬》をもらってきてくれ」 と半分本気で返したのは、また別の話である。    再び駅に戻ってきた二人。目的の大学に行くバスに乗るためにバス停へ。  そう。今日の最大目的は某大学の学祭で行われるゲストコンサート。コンサー トに呼ばれているのはCA◯NAと、なんと徳山秀典君!  CAN◯Aは、ドラマ《T◯AM》の主題歌を歌ったり、キン◯キッズに《青 の時代》を提供した実力派。そして徳山君は、知ってのとおり最遊記のOPを歌 っている人物である。  生であの新OP曲を聴ける! 紅と焔の頭の中はこれだけで占められていた。  ちなみに最初にこのコンサートの情報を手に入れたのは焔であった。    10月中旬、仕事場から帰宅していると、途中の道にある電柱に貼ってある、ど こぞの大学祭コンサートのチラシに何気に通りがかりに目をやると《徳山秀典》 の文字が。 「何!?」  焔は反射的に自転車を止め、そのまま後ずさって電柱の傍に戻り、連絡先をメ モした。ここら辺は目敏いというべきか、さすがというべきか…。  帰宅してからはすぐに紅に電話し、数日後には確認したあげく母にチケットを 購入してもらった。わざわざ大学まで買いに行ってくれてありがとう、焔のお母 さん。チケットは1枚2000円。値段は少々高いが、この際文句は言わない。素早 く行動したおかげで3列目の真ん中の席をゲット。  そうしてホクホク気分で現在に至る。    15番くらいまでバス停があるターミナルでS大を通るバスを探す。交通手段に ついてはチケットに同封されている詳細に案内があった。O市内であるが歩いて 行くにはちょっと遠い場所にあるのだ。どうしてこう大学というものは不便な場 所にあるのか。  2番バス停で、先を歩いていた焔が立ち止まった。 (確か5番のはずだが…。何か用でもあるのか?)  紅が不思議に思っていると、運行表を見た焔が首を傾げた。 「…2番じゃなかったか?」  …間違えただけらしい。案内書を見る焔に紅が突っ込む。 「これはデパート前のバス停の場合じゃないか?」 「あ」  すぐさま何事もなかったかのように歩き出す焔。溜め息を吐く紅。  スムーズに乗れたバスはS大前に到着した。 「実はオレ、この大学のすぐ裏にある中学に通っていたんだがな。今まで大学の 出入り口の場所を知らなかった」 「…おい、コラ。3年間何をしてた貴様」  焔の母校は本当にすぐ近くだった。紅は転けそうになったところを耐え、ひき つった笑みを浮かべる。  正門を入った途端にいきなり男性学生が取り囲んできた。 「コンサートチケット、1枚500円でどう?」  見ると16列目。ダフ屋だった。 「いや、3列目を持っている」  さっさとかわして、会場となる体育館を探す。  それらしき建物は見あたらない。案内も出ていない。学祭のパンフを見たら、 敷地内に体育館がない。 「どういうことだ?」  ぐるりと1周して正門に引き返し、本部で学祭実行委員に直接訊くと。 「あ、ここです」  示されたのは裏門の外だった。 (こんな重要な場所は、パンフにちゃんと記入しとけ!)  二人の脳裏に怒りマークが浮かんだ。  開始までは3時間ほどあるが、一応場所の確認をすることにする。 「あれか」  それらしき建物がネットとフェンスの向こうに見え、近付いてみる。  人が大勢いる広場から離れることでだんだん周囲が静かになり、紅が立ち止ま った。 「…待て。何か聞こえないか? この曲はもしかして…」 「え?」  焔も立ち止まる。しかし焔にはわからない。 「? 何も気にするようなものは聞こえないが」 「いや、よく聴いてみろ」  更に歩いた所で耳をすます。 『何処にいてもー君が待ってるーそう信じてるーかーらー♪』  STILL TIMEだった。  「思いきり聞こえてんじゃねーか!」  紅が叫ぶ。目の前に見えているとはいえ、数百メートル先の体育館からはっき り聞こえてしまうというのは問題ではないだろうか。 「リハやってんのか? 本人はもう来てるようだな」  焦っている紅と対照的に、いたって冷静な焔。しかしその心中は、 (よかった。スケジュールの都合とか事故とかで、本人が来ないとか言われたら どうしようかと思った) などと安堵していた。 「とりあえずコンサートがちゃんと行われるのは確実だとわかったな。…いや、 これは本人か?テープじゃないよな?」 「本人だろ。今ちょっと間違えていたぞ」  なかなか耳聡い紅だった。  開場時間はまだまだ先だし、場所と行き方は確認できたということで、せっか くだから大学祭を見ることにする。  建物と建物の間に屋台が並んでいるといった状態で、何処に行くにも必ず屋台 の前を通らねばならなかった。 「君たち、唐揚げ買わない? 美味しいよー」 「ね、食べようよ」  狭い道を男二人組に塞がれて強引に迫られる。  一人は焔に紙コップに入った唐揚げを突き付け、もう一人は紅の肩に手を回そ うとする馴れ馴れしさ。 「さっき食べたところだから今はいい」  怒りを抑えつつ足早にその場を離れる。男どもが付いてこないことを確認して から、紅がやっと口を開いた。 「さっきの奴がもし肩や腰を触ったら殴ってやろうかと思ってたんだが…」  幸いにも手は5ミリ上の所で止まっていたので、事態には至らなかった。 「やるなら死角から狙えよ」  そう言ってコークスクリューを鳩尾にかます真似をする焔には、紅を止める気 なんぞさらさらない。  はっきり言って二人とも気丈なので、ナンパ男どもは怪我したくなかったら近 付かないようにするのを薦める。痴漢・変質者も同等。 (あそこの屋台の前はもう絶対通らん)  二人が心に誓ったのは言うまでもなかった。  しかし、余程客が来ないらしく、勧誘はこれだけではすまなかった。  中庭のベンチで座っていると、来る来る。  チケット、スイートポテト、豚汁など色々。  かわしたり、値切りまくって一つ購入したり、こちらも相応に返すが、いい加 減しつこい。  とある男の発言にとうとう焔が切れかけることも。  だんだんそんな奴らも来なくなってホッとしていると、何処からともなく妙な 雄叫び。 「みょーな音が聞こえるんだが…」  なんとなくメロディになっている感じはするが、歌っている男がめちゃくちゃ 音痴なので、すでに歌とは言い難い。 「カラオケ大会というより大声大会の間違いじゃないのか、あれは」  まだ怒りが収まらない焔はピリピリしている。紅は怒りどころか疲れの領域に 入っていて、溜め息しか出ない。その状態で開場時間まで無意味な時間は過ぎた。  やっと時間がせまり、体育館に向かう。この時間をどんなに待ったことか。  開場30分前。すでに他にも人がたむろっている。行列も。 「え?行列までできているのか?」 「…いや、あれは違うよーな…」  その行列はチケット交換だった。  席数が当初の予定の半分以下になっており、後方席の人は空いている席のチケ ットと交換できる、というもの。 「…500円で売られていた時から予想はしていたが…。あまり売れてないんだな」 「まあ、それでも数百人はいるみたいだから、いいんじゃないのか…?」 「大半は最遊記ファンなんだろうなー」  なんて会話をしていると、いきなりFOR REALが流れて驚く。聞こえる方向を見 ると、携帯の着信音を鳴らしているグループがいた。 「…特にうらやましいとは思わないのは何故だろうな…」 「ここで鳴らさなくても…」  吹く風もなんのそので待っていると、日が暮れだした頃、15分遅れで開場。  カメラ等の持ち込みが禁止されているため、入り口で簡単に荷物検査がされる。 更にファンクラブのチラシを配られ、2階の会場へ。  だんだん集まってくる客たちを見ていると、発売されたばかりの最遊記の単行 本7巻を読んでいる女子3人発見。 「ここで読むか?ふつー」 「アニメ◯トの袋持って…。直行で来たというのが丸わかりだな」  かと思えば子ども連れの女性もいる。客は圧倒的に女性が多い。絶対的に、最 遊記ファンが占める割合は大きいだろうと思われた。  20分遅れでコンサートが開始。初めはC◯NNA。  いきなり立ち上がる周囲につられて、焔と紅も立ち上がる。  最初からテンションの高い曲、バラード。  …良い曲だ。 『先程少し大学内を回らせてもらったんですが…。誰も気付いてくれませんでし た』  キーボードの言葉に全員爆笑。…まあ、あれだけ入り組んでれば、気付かれん のも仕方あるまい。屋台勧誘の連中も、女性をターゲットにしていたし(下心が 見え見え)。  その後も名曲が続く。ジャニーズのアレと同曲とは一瞬わからなかったほど、 雰囲気が違う。  感動。  1時間ほどで終了。休憩に入る。  休憩時間がどれだけなのかがわからないため、席を立つこともできず、ひたす ら待つ。  その間に帰る客も。  二人の前にいた男性も帰ってしまう。ちょうど3人分の席が空き、そこに移動 するかどうか迷いつつも、結局そのまま。後で移動しとけばよかったと、ひたす ら後悔する羽目になる。  とうとう彼が登場! 黄色い悲鳴が沸く。  コンサートのポスターの写真とは髪型が変わっていて、これまた驚き。  いきなり歌い始める。そのまま数曲続いたところで、いきなり前の空席に左席 から女子4人組が割り込んできた。  空いていたから仕方ないか、と思っていると。  なんと彼女らは、左前方に向かって手を伸ばしている。  その視線の先には、徳山君ではなく、ギターの男性。  待たんか、おい!  目の前で斜めに手を出されているため、二人は視界を邪魔され、せっかくの徳 山君が見えない。 「おい、前にいる奴らって…」  殴りたい衝動を抑えつつ、紅は隣の焔に耳打ちする。 「ギター目当てだな。死ねって感じ?」 「落ち着け、焔。ここで殺ったらマズイぞ」  昼からのことといい、焔の怒りは頂点に達していた。コンサートを中止にする ような真似だけはしたくないので、必死に耐える。  一息ついて、挨拶と自己紹介が始まる。 「秀くーん!」 「徳山くーん!」  徳山君に対して観客から様々な呼び方が飛び交う。そこで彼は。 『えーと、何と呼んでくれてもOKです。あ、けど学校の友人とかからは《秀》 って呼ばれているので、それが一番親しみ感じるかなー』 「秀ー!!」  途端に観客は反応。盛り上がる会場。  その時、2列目辺りのグループが新幹線の時間がどうとか言っているのを、秀 が聞きつける。どうやら時間があまりないらしい。 『まさかとは思うけど…。オレの歌がこれだけで終わるなんて思っている人…』 「思うー!」  間髪入れずに言ったのは、紅の前にいる女。 『…いないよね?』   幸いにも秀に彼女の声は聞こえていなかったらしい。 「当然ー!!!」  今度は周囲から大声で返事が返される。手を振る秀に拍手しつつ、目の前の女 に更に殺意を高める焔と紅であった。  そしていよいよ。 『オレは今アニメのOPやってんだけど、みんな、最遊記って知ってる?』 「…知ってるー!」  答える前に一瞬間があいたのは、おそらく皆に抵抗があったためと思われる。 知っているどころか、そちらから秀のことを知った人のほうがその場には多かっ たと思う。  STILL TIMEが歌われる。  最高潮に盛り上がる会場。無論二人も同様。手拍子しつつ一緒に口ずさんでい た。この日はまだCD発売はされていないので、2番は歌えなかったが。  もう、TVで聞くのとは全然迫力が違う。すぐ前に本物がいるし。  前の女どものことは気にしないことにしていた。  かっこいい。それしか言いようがない。 『オレ…、こんなだけど、こんなオレなりに、オレらしさを出せたらなって思っ てます。オレの歌を聴いて少しでもみんなが、頑張ろうって勇気づけられたらい いな。明日も頑張ろうって、そう感じられるような歌を歌いたい…』  今時珍しい良い子だなーと好感度が高まる。何度も繰り返して言う彼に、皆で 逆に励ます。 「頑張るー! 勇気でたー!」 「秀、頑張ってー!」  二人も叫びこそしなかったが心中は皆と一緒だった。このまま彼には頑張って もらいたいものだ。  STILL TIMEのカップリングは、彼がデビュー時からの歌で、ライブなどでしか 歌わないと決めていたらしいが、今回は《自分》を改めて思い出すためにCDに 入れたらしい。それも歌ってくれた。  バラードで、しっとりとする曲、BLUE。 (カップリングがこんなに良い歌なら、今度のCDはかなりお買い得かもしれな い…)  CDを予約している焔はほくそ笑み、焔に借りるつもりの紅はやはり買おうか と悩む。  FOR REALを歌う頃には秀も結構疲れていて、声が掠れていたが、その分迫力が 増した。ある意味、STILL TIMEより盛り上がった。  全部で10曲歌い、コンサートは終了する。  しかし、余韻がさめない観客は手拍子を続けた。  新幹線の時間を気にしていたグループも、もう覚悟したのか帰る気配はなかっ た。それよりもまだ秀の歌を聴きたい。  手拍子が5分は続いたであろうか。秀が再び現れる。アンコール曲は用意して なかったらしいが、即興で1曲歌ってくれた。  ラストにピックを観客席に向かって投げるというサービス付き!  が、どうも通路に落ちたらしく、視線は落ちた方向に集中するも、誰も動けな い。 「あった」  一人の女子が拾ったようで、そこで秀は今度こそステージの袖に入り、コンサ ートは終了した。 「終わったか…」  感慨に耽る紅だが、ふと隣を見ると、焔はじっと右後方を見つめ続けていた。 「どうした?」 「いや、ピックが欲しいな…と」  拾った人をじっと見続ける。諦めにくいらしい。 「もう外も真っ暗だな。帰るか」 「ああ…」  立ち上がりはしたものの、歩くのを止める焔の目はやはり動いてない。 「あ、なんか拾った奴、あまりファンじゃなかったみたいだな。一緒にいた奴ら のうちの一人にあげた」 「ほぉ。まあ、欲しいと思う人が持つのが一番良いからな。大切にしてくれるだ ろ」 「…ああ」  やっと整理が付いた焔が歩き出し、二人は会場を後にした。    外は既に真っ暗だった。大学の構内を突っ切り、バス停に向かう。 「げっ!」  バス停には数十人の人がいた。そして更に横断歩道を渡ってそちらに行こうと する集団がいたりする。 「…次のバスに全員乗れると思うか?」 「きついな。一つ前のバス停まで歩いて、そこから乗った方が楽かもしれんぞ」 「そうするか」  普段ならそんな面倒くさいことはしなかったかもしれないが、その時の二人は 大分機嫌がよかった。横断歩道を渡り、他の人たちとは逆方向に歩き出す。  だが、思ったよりバス停は遠かった。 「まだか、バス停は?」 「今進行方向に通り過ぎていったバスが止まりそうにないということは…かなり 先ということか」 「あのまま待っていたほうがよかったかもしれんな…」  やっと発見したバス停で、間もなく来たバスに乗ると、ガラガラ。大学前から 乗ってきたのも一人という状態だった。 「…全員、前のバスで乗れたようだな」 「歩いたことがバカらしくなる。考えるのはやめとけ」  バスは駅前に到着し、二人はミスドで夕食をとる。 「プリクラ撮らないか?」  粥を食いつつ、唐突に焔が提案した。 「かまわんが…、今からか?」  時間はすでに9時を回っている。店もほとんど閉まっているし、後は帰るだけ だった二人は、化粧も落ちて、顔からして疲れていることがわかる状態。 「そうだ。記念にな」  で、二人でピースをし、《秀LOVE》の文字と蒼いハートが飛んでいるプリ クラを撮ってたりする。    1ヶ月後、ア◯メイトで秀の握手会があり、そのチケットも焔はゲットしてい た。  コンサートですっかりファンになってしまい、舞い上がる焔のことを心配しつ つ、紅は会場外で待つ。  出てきた焔が叫んだ一言。 「ファンレター用意しとくべきだったー!」  後悔先に立たず、である。  
END

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