愛モード


 
 
 
誰だって風邪くらいひくだろう。例に漏れず自分もひいただけ。ただそれだけなのに・・・
 
 
 
「そろそろ次の街に着きますね・・・」
 
西に向かっての旅の途中、八戒はいつも通りジープを運転し進路上にあると思われる街に向かってアクセルを踏んだ。
 
「腹減った〜街に着いたらまず、飯喰おーぜ」
「ソレより酒だ。美人のネーちゃんとキューッと一杯♪」
「あはは。それじゃオヤジですよ悟浄?」
「エロオヤジか・・・最悪だな」
 
いつも通り交わされる会話。でもこの時自分の変調に気付いてはいなかった。
 
「でもマジ腹減ったぁぁぁ〜」
 
グルグルと鳴りだす悟空の正直な胃袋はもう限界といった感じで鳴り響く。
 
「もう少しですから我慢して下さいね・・・コホッコホッ」
「あん?どした?風邪か?」
「いえ、ちょっと咳が出ただけです。すみません」
「オイ、なんか顔赤くねーか?」
 
八戒の異変に気付いた悟浄は真っ先に八戒のおでこを引き寄せた。
 
「どれっ」
「ご、悟浄?///」
 
おでこをくっつけて熱を計る悟浄。その行動がなんだか照れくさそうに慌てる八戒。
 
「熱少しあるんじゃねーか?熱いぜ?」
「そ、そーですか?」
「体調管理くらいちゃんとしろよ」
 
三蔵がテメーのことはテメーでしろよっと語ってくる。まさか熱が出ていることなんて気づきもしなかったのに・・・。
 
「ナニ?八戒熱あんの?運転平気?」
「大丈夫ですよ悟空。コレくらい・・・」
「オイ八戒止めろ。代われ」
「えっ!?三蔵?」
 
突然三蔵が車の運転を代われと言い出した。
 
「大丈夫ですよ。このくらい。そんなに信用ありませんか?」
「ンなコト言ってねーよ。黙って代われ」
 
ぶっきらぼうに代われの一点張り。ひょっとして八戒の身体を気づかっているのだろうか?
 
「素直に三蔵様の言うこと聞けって。たまにはイイだろこういうのも♪」
「アッ!じゃあオレ助手席に座ってみたい♪」
「んじゃ、八戒はオレの隣な」
「皆さん・・・」
 
八戒はジープを止める。運転席は三蔵。助手席は悟空。悟空の定位置に八戒。いつもとは違う目線。
 
「出発するぞ」
「あっ三蔵。その前に聞いてもイイ?」
「なんだ悟空?」
「三蔵の運転って・・・平気?」
「何がだ?」
「その・・・あの・・」
「舌噛むぞ?大人しくしてろ」
「って、三蔵ー?!」
 
悟空との会話も完結せぬまま、三蔵は思いっきりアクセルを踏む。何の為に病人と運転を代わったんだ?と疑問を抱くほど荒い運転。ハンドルを握ると性格変わる・・・(って、まんまか?)とにかくカーチェイス並みの猛スピードで街まで着いた・・・。
 
 
「し、死ぬかと思った」
「死んでねーだろ」
「そりゃそうだけど・・・」
 
なんであんな運転で三蔵は平気な顔をしてるんだろ?っと悟空は疑問を抱かずにはいられなかった。
 
「より一層悪化したんじゃねーか?大丈夫か八戒?」
「え、ええ」
 
なんだか身体が重く、関節が痛み出した気がするのは先程の三蔵の運転のせいか、やはり風邪の症状が悪化したせいか・・・どちらにせよ普通じゃない。
 
「おい、てっとり早く宿とっちまおうぜ?」
「そうだな、ココでイイか」
 
てっとり早く身近にあるホテルにチェックインした三蔵一行だった。
 
 
「八戒寝といた方がイイよ」
 
そう言って部屋に入るなり悟空は八戒に就寝を進める。
 
「何か欲しいモンあっか?」
「えっとね、とりあえず喰いモン!!」
「オメーに聞いてネエよ。オレは八戒に聞いてンだ」
「ちぇーっ。悟浄のケチ。オレ腹減ったぁ〜」
 
悟浄は悟浄なりに気を遣っていた。
 
「五月蠅い。オラ、さっさと行くぞ悟空!!」
「何処へ?」
「飯喰いに行くに決まってんだろ?五月蠅くてかなわン」
「ンじゃオレ八戒についとくわ」
 
腹が減っては戦は出来ぬと言わんばかりに空腹を訴える悟空を見かねて、三蔵は悟空を連れて飯屋に移動しようとする。だが、悟浄は八戒の看病に付き添うと言い出した。
 
「一人で大丈夫ですよ悟浄。悟浄も三蔵達と一緒に行って下さい」
「・・・一人で平気なんて言ってるヤツは一番ほっとけねーな」
「・・・悟浄」
 
 
病気になると何故か無性に人恋しくなる・・・何故かは解らないけれど。一人がイイなんて言うヤツからは離れちゃいけないンだっと悟浄は静かに言った。
 
「スミマセン・・・迷惑かけちゃって」
「イイんじゃねーの?オレらいッつも八戒に迷惑かけてる様なモンだし」
「あはははは・・・」
「おいジープ、そんなべったり八戒にくっついてないで離れろよ。お前まで移っちまうぜ?」
「キュ〜ィ」
 
八戒から離れようとしないジープを剥がすようにむしり取る。
 
「心配なのは解るけど、お前まで風邪ひいたらシャレにならねーだろが」
「キュキューゥ」
 
名残惜しそうに八戒から離れるジープ。パタパタと飛ぶその羽根には哀愁が漂っていた。
 
「悟浄だって移っちゃいますよ?」
「イイのオレわ。丈夫だし・・・もし風邪移ったらお前に看病して貰うし♪」
「ソレは重大問題ですね」
「だろ?」
 
痛さも辛さも2人で分かち合えればいい・・・そんな感じがした。
 
「お前が早く治んねーと心配してる奴らが五月蠅そうだしな」
「奴ら?・・・悟空と三蔵のことですか?」
「ああ。ああ見えて三蔵結構心配してるんじゃねーの?急に運転代わりだしたしさ」
「そう・・・なんでしょうか?」
 
いつも何処でも無表情な顔はあまり感情を表してはくれないのでイマイチつかめない節もある。
 
「運転代わって、いち早く街に着かせようとしたんじゃねーの?スゲぇ運転だったけど・・・早く宿で安静にさせたかったんだろ」
「・・・あっ、そーなんですかね」
「猿も猿なりに心配してるみたいだったし・・・早く良くなれよ」
「はい」
「んじゃ、一眠りしとけよな。オレ邪魔しねーよーに部屋出てくけど。あっ、ジープも連れて行くな。何かあったら呼べよな」
 
 
そう言って悟浄はジープを連れて部屋を後にした。
八戒は仲間の自分に対する愛情を痛感した。そしてウトウトといつもより少し深い眠りに陥った。
 


コトン・・・っと、音がしたような気がして八戒は目を覚ました。
宿のベットの脇にあるテーブルに置かれた紙袋・・・八戒はベットから起きあがり紙袋を手に取った。
 
「桃缶・・・?」
 
中に入っていたモノは桃の缶詰。風邪といったらコレしかないだろ!!っと言う感じで紙袋の中身は桃缶だけだった。
 
「誰が?・・・いや」
 
多分三蔵だ。桃缶を手に取った瞬間そう感じた。理由はないけれど、三蔵の仕業だと確信した。
ふと眼をそらせば紙袋に隠れて置いてあった1羽の折り鶴があった。
少しいびつな折り鶴は悟空の作ったモノであると確信した。想いを込めた1羽の折り鶴であると・・・
 
「愛されていますね。僕って♪」
 
だいぶ下がった熱をぶり返さないように、八戒は格好を暖かくして、折角の差入れの桃の缶詰を食した。そして一夜がふけてゆく。
 
 
「おはようございます悟空」
「もう大丈夫なの八戒?」
「ええ、おかげさまで。ご心配おかけしました」
「風邪治って良かったね」
「ええ、僕には特効薬がありましたからね♪」
「特効薬?」
「凄い効き目ですよ」
 
みんなからの愛が一番の薬となった・・・なんてかなり恥ずかしい言葉で言えないですけど・・・
 
 
「あっ、三蔵おはようございます。桃美味しかったです。ありがとうございました」
「何のコトだ?」
 
しらばっくれる三蔵の表情に心なしか笑みが零れているように見えた・・・気のせいかも知れないけれど・・・
 
「よっ、もう平気か?」
「ええ、悟浄。ありがとうございました」
「結局一晩寝ただけで治っちまったな」
「ジープの面倒ありがとうございました。あっ、ジープ」
「キュイイイッ!!」
 
バサバサと嬉しそうに羽根を羽ばたかせながら八戒の全快を喜ぶジープだった。
 
「よし、そろそろ出発するぞ!!」
「はぁ〜やっぱり八戒の運転が一番だよな」
「どう言う意味だ悟空?」
「あっ?えっ?いや三蔵・・・その」
 
昨日の三蔵の運転と比べれば、なんと素晴らしい八戒の運転・・・そう悟空は思わずにはいられなかった。
 
 
「いつも通りが1番ってコト!!」
「なんだそりゃ」
「まあいい、出発だ!!」
「ハイ、皆さん行きますよ」
「気楽に行こうぜ・・・っハックシュン!!」
 
「「「え!?まさか?」」」
 
「悟浄・・・まさか」
「ヤッべえ・・・マジかよ」
「やーいエロ河童が風邪ひいた?日頃の行いってヤツか?アッハッハッハ・・・っくしゅん!」
「言ってるそばからテメーもひいてんじゃねーのか悟空?」
「○○は風邪ひかないつーけどな」
「うるさいエロ河童!!」
「何を?ヤルか!!?」
「上等だ!!!」
 
風邪をひいても元気のいい悟浄と悟空。風邪の菌も逃げ出すくらいの健康優良児
なはずなのに。
 
「ったく馬鹿コンビが!!ウルセーんだヨ!!ックシュん」
 
「「ゲッ、三蔵まで」」
「3人揃って移っちゃったようですね・・・はあっ(脱力)・・・って、まさか」
 
 
3人に移ったくらい手強い菌ならば、ジープにも移っているのでは?
 
「ジープは大丈夫ですよね?」
「キュキューイ?キューィ。・・・プキュッ」
 
オーマイガット!!
神に祈るなんて神を信じていない僕が神に祈るなんて不思議ですけど、何か今回は祈らずにはいられない状況なんです。よりによって一度に・・・(涙)。
 
「わりィ、八戒」
「頭がボーっとする・・・でも腹減った〜」
「熱ィ・・・」
「キュキューーー」
 
こうやって今、3人(と1匹)の看病をしなければならない自分を少し呪う八戒だった。
愛情と友情を感じ、精神的に喜びを得て、体力的に消費する八戒だった。
 
 
Fin
 
 
 
 
 
 
八戒だけじゃなくて、どのキャラも誰からも愛されているはず・・・って思って考えた話☆
一応八戒メイン(?)のはず。(そうなの?)
 
やっぱり風邪といったら桃缶でしょ。But、私の家は桃缶ではなくすり下ろしたリンゴでしたけどね。懐かしい・・・。(←関係ないし!)
 
お粥とかは?誰が作るの?・・・三ちゃんな訳ないし、やっぱ悟浄と悟空?・・・ちゃんと喰えるモン作れるのかこの2人?(笑)
2人して悪戦苦闘して作りそうだ。きっと不味そう。でも八戒は喰うんだよ。熱で味覚が麻痺してるのは・・・はたまた味音痴か?(真実は如何に!?)そーゆー所も書きたかったけど話が変わっちったからパス。(要は書き直すのが面倒くさいだけ?)←ギクッ!!(笑)
 
そーいや、初めてまとも(?)にジープを書いたカモ。 



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