第1章スタートでつまづき家計は火の車 私は岡山県の北部、鳥取県境にほど近いところで酪農を営んでいます。かなり山奥で雪もたくさん降ります。気候的には岩手〜青森県と同じであると思ってください。桜の開花は山形市とほぼ同じ時期です。岡山県といっても、むしろ山陰の気象条件下にあり、冬の寒さも厳しいところです。 現在、私は46歳です。高校を卒業してから北海道の酪農学園の短大コース(冬だけ3年間通う)に行き、その間、江別市の町村牧場で実習させてもらいました。私は長男ではないので実家(ジャージー牛が5頭ほどいた)を継ぐ予定はなかったのですが、兄が継がなかったので、そのときまだ具体的に将来を決めていなかった私が継ぐことになったのです。 実家に戻って3〜4年間は、なにも悩むことなく楽しく乳を搾っていました。そして昭和50年に結婚して、それを期に牛舎を新築しました。20頭牛舎を建てたつもりだったのですが、なぜか19頭しか入らない牛舎になってしまいました。そして、借金で北海道からホルスタイン牛を13頭導入しました。 ところがその頃、うちの辺りでたまたまアカバネ病が流行っていました。普通は1軒で2〜3頭の奇形牛が産まれるのが関の山なのですが、うちの場合は15頭分娩のうち11頭が奇形牛でした。もちろん親牛の調子も悪いので牛を入れ換えたりもしました。結局、こうしてスタートからつまずいた格好になってしまったのです。 経営も悪くなり、かなりの借金も抱え込んでしまいました。結婚当初は、2年間くらいしたら女房には勤めを辞めてもらって一緒に酪農をやっていこうなどと考えていたのですが、家計は火の車状態なので、そのまま女房には勤めを続けてもらい、私は牛舎で四苦八苦する毎日でした。
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