ヨーロッパ旅行記 その3  急増するHIV感染症 

 現在世界に4000万人のHIV感染者がいる。                      (世界人口56億人 1998年資料)

 世界で1000人に7人の割合ということになる。日本人はまだ、ひとごとのように検査も受けず無関心だが、水面下では確実に増え、魔の手が忍び寄っている。4000万人のHIV感染者のうち、3000万人は発症していないので、ふつうに生活をしている。決定的な治療薬が早くできるといいのだが。しかし最近増えている結核(抗生物質に耐性を持つ)感染とのダブル感染をヤン医師は懸念している。世界人口56億人の30%以上が結核感染者だ。「HIVに感染すると免疫が低下するので結核にかかりやすくなり、結核が痰などを経由して周囲の人に感染して、結核が蔓延することも危惧される。(BJ)」

増加率  1995年 2000万人

       1998年 4000万人

       2001年 6000万人に達するみこみ  1日 16,000人増加 

感染経路  世界          スウェーデン

       80% 男女性交感染  43% ホモ感染

        9% ホモ感染     34% 男女性交(2/3は移民の黒人)

        7% 注射器      16% 注射器

        3% 血友病(輸血)   5% 血友病(輸血)

                       2% その他

患者の分布     先進国  6%   後進国 94%

経費の使われ方  先進国 92%   後進国  8%

 世界の94%の患者が貧しく、たった8%のお金で治療していることになる。

ノアの方舟の取り組み(これ以上HIV感染者を増やさないために)

 ノアの方舟のオフィスには30人のスタッフがいるが、活動のほとんどは、200人のボランティア(78種の職業・20ヶ国国籍)の人によってだ。

◎24時間電話相談  夫婦・恋人の一方の感染の相談が多い(匿名)。一度の過ちでも感染が心配だが、検査結果が出るのに3ヶ月はかかる。わかるまで秘密にしている相手とは、どう接するか。不安な3ヶ月の間、ときどき電話でフォローすると精神的安定が得られる。

◎外来者のカウンセリング 訪れる人には、いっさいHIVかどうかは尋ねない。感染者本人、あるいは患者の家族、同性愛者、いろんな不安を抱える人が気軽にやって来られるようにとだ。アドバイスは不要だ。とにかく話を聴くことに徹している。

 3種のカウンセリング @感情的カウンセリング(聴くことで落ち着かす)。A正しい情報を与える。Bストレス解消さす(絵を描く・陶芸をするなどの表現活動、体のマッサージなど)。

◎グループワークと学習会 悩みをもつ人を集めグループをつくり、学習会や、ディスカッションなどグループワークをさせると、精神的に大変よい効果がある。グループの中には、必ずHIV感染者や同性愛者が混じっている。「同性愛者はどうやってセックスするのでしょう?」「どうしてホモになるの?」といった質問が討論中に出るとき、みんなに対してしだいに心を開いてきたその人は、たいてい自分が同性愛者あるいは感染者であると名乗る。そして自分がいきいきと活動していることを積極的にアピールする。それは不安を抱える人々に感銘を与える。それを見てまた、名乗った本人も元気がでるのだ。結果としてグループ内の相互に信頼関係が生まれみんな元気になる。(エンパワーメント) 

◎インフォーメイション活動 インターネットで情報を流す(スウェーデン語・英語)。HIV感染で職場をやめさせられそうになった人の会社にでむき、簡単には感染しないことを説明し、説得に行くこともあるという。

世界のHIV感染予防の問題点

・女性がノーといえない性交など、セックスの主導権を男性が持つ文化圏。女性の地位が低い国に感染者が多い。

・宗教・慣習から性的問題をタブー視して、表に出さない国。インドでは同性愛を禁止しているので、同性愛者の情報交換ができない。

・アフリカのルワンダでは国民の40%がHIVに感染しているが、内戦中なので予防に力が入れられていない。

・アメリカでは感染者が多いのにコンドームのテレビ宣伝もない。(スウェーデンでは性教育の一環として15歳になると全員にコンドームを配る)

私は日本からのおみやげをノアの方舟創設者のひとりのヤン医師にプレゼントした。かわいい稚児の形のお手玉である。あでやかな日本のきものの端切れでできていて、手のひらに乗せると絹の感触がほんわりとやさしい。 「おばあちゃんの手作りなんですよ。」とヤン氏に手渡すととても感激したようすで、嬉しそうに握手してくださった。彼の温厚な人柄に私たちはすっかり魅せられた。

そこで川田悦子さんから語られた

     超恐ろしい日本の血友病患者のHIV感染の実態

 日本では5000人の血友病(男性に起きる遺伝病で、出血が止まらなくなるので血液製剤を打ち続ける)患者がいますが、現在2000人がHIVに感染しています。そのうち500人はもう死亡しました。アメリカでは売血による非加熱血液製剤の危険性に気づき1983年に安全な加熱血液製剤にきりかえました。日本でもその年の6月にエイズ研究班ができて、アメリカから輸入している非加熱製剤の危険性について話し合われたのに、何の対策も行われずそれから2年数ヶ月、エイズウイルスの混入した製剤は野放しにされました。厚生省が1985年にやっと非加熱の危険性を認め加熱にきりかえても、出回っている非加熱血液製剤は回収されず、使い続けられました。私は1986年、「安全だ」と言っていた医師から息子の感染を知らされました。 私たちはHIV訴訟(薬害エイズ事件)で勝訴しましたが、厚生省は証拠や資料をまだ隠したりして、きちんと責任をとっていません。こんなことでは、薬害はまた起きるでしょう。私たちは、スモン病やハンセン病、また同性愛者とも手をたずさえて、薬害被害、感染症患者差別、などあらゆる差別をなくすために戦っていきたいと思います。

旅行記

その4

 国が売春やマリファナを認めているオランダ。性はみんなが楽しむものと、障害者や高齢者のセックスを助けるヨーロッパの国々。ボランティアがそこでする仕事とは!!次回へつづく。