たまごの栄養

 

 

たまごの栄養価

・たまごは、ヒヨコが成長するために必要な栄養成分を全て持ち合わせている、文字どおりの「完全栄養食品」なのです。ヒヨコの脳、神経や全身の細胞を造るのに必要な脂質類とタンパク質が十分に含まれています。ヒヨコの骨格づくりに必要なカルシウムとリンも豊富です。
*たまご(全卵)のpH(ペーハー)値は約7.8です。卵黄のみのpH値は6.2〜6.6、卵白のみのpH値は7.5〜8.0となっています。
・たまごの主な成分とカロリーについて、下表に示します。(各可食部100g当たりの値です)
主な成分 単位 全卵(100g) 卵黄(100g) 卵白(100g)
エネルギー kcal 162 363 48
水分 74.7
たんぱく質 12.3 15.3 10.4
脂質 11.2 31.2
糖質 0.9 0.8 0.9
炭水化物 0.9 1.7 0.7
カルシウム mg 55 140
リン mg 200 520 11
鉄分 mg 1.8 4.6 0.1
ナトリウム mg 130 40 180
カリウム mg 120 95 140
マグネシウム mg 10 10 10
亜鉛 mg 1.4 3.9 0.02
ビタミンA効力 IU 640 1800
ビタミンB1 mg 0.08 0.23 0.01
ビタミンB2 mg 0.48 0.47 0.48
ビタミンD IU 10 30
ビタミンE mg 1.1 3.2
ビタミンK μg 12.0 32.0 1.0
ナイアシン mg 0.1 0.1

 

*上表の他に、近年、コリンやビタミンB6、ビタミンB12も含まれていることが確認されています。ビタミンB6の含有量は全卵100g中に0.12mg、ビタミンB12の含有量は全卵100g中に0.9μg(卵Lサイズ1個に0.6μg)です。

 

鶏卵とコレステロール

・たまごには、たんぱく質やカルシウム、鉄分など、ビタミンCを除くほぼ全部の栄養素が含まれている。
また、人の体内で作ることができない8種類の必須アミノ酸をバランス良く含んでいる、すばらしい食品である。特に、たまごのたんぱく質は非常に良質で、たんぱく質の栄養価を表す基準では、最も優れた食品とされている。ちなみに、たんぱく質を漢字で書くと「蛋白質」であり、この「蛋」という字は、中国語で「たまご」を意味する。
・こんなに優秀なたまごなのに、コレステロールが含まれているため、「たまごは1日に1個しか食べてはいけない」といった誤解をした人が多い。これは、大きな間違いである。
たまごには、コレステロールを除去する作用のあるレシチンが多く含まれているため、毎日2個のたまごを食べても、ほとんどの人が血液中のコレステロール値が上がらない、という研究結果が出ているのである。(但し、コレステロールの上がりやすい素因を持つ人やアレルギーの人、高脂血症の人は摂り過ぎに注意が必要)
・たまご1個のカロリーは、生の状態で約81Kcalだが、茹でると約76Kcalに下がる。
たまごは、調理の仕方によって、消化時間も変わる。半熟たまごの消化時間は約1時間半。固茹でたまごや目玉焼きは、その倍の約3時間かかる。胃に負担をかけたくないときには、半熟たまごを食べるとよい。
・たまごと他の食品との栄養素の比較表を以下に示す。(四訂食品成分表より)

成 分
(可食部100gあたり)

単位 鶏 卵 牛 肉 豚 肉 マグロ 牛 乳
エネルギー kcal 162 207 267 133 59
タンパク質 12.3 19.2 17.0 28.3 2.9
脂 質 11.2 13.3 20.5 1.4 3.2
糖 質 0.9 0.3 0.4 0.1 4.5
カルシウム mg 55 100
リ ン mg 200 164 147 280 90
mg 1.8 2.1 1.1 2.0 0.1
ナトリウム mg 130 53 43 50 50
カリウム mg 120 329 251 420 150
ビタミンA効力 IU 640 33 23 20 110
ビタミンD効力 IU 10 210
ビタミンB1 mg 0.08 0.08 0.85 0.10 0.03
ビタミンB2 mg 0.48 0.19 0.23 0.09 0.15

 

・鶏卵のコレステロールの含有量は比較的多く、卵黄中に約1.6%(全卵100g中に400〜500mg)含まれ、そのうち約84%はフリーのコレステロールで、残り16%はエステル型のコレステロールである。
卵のコレステロール含有量は、常にほぼ一定であり、飼料の影響を受けることは少ないとされている。卵のコレステロールは一部は動物飼料由来のものであるが、残りは卵黄ができたとき鶏の体内で合成されたものである。
・コレステロールは、動物だけに存在する脂肪の一種で、人体におけるコレステロールの量は、成人で140〜160g位である。コレステロールは、細胞膜の主要成分の一つであり、あらゆる臓器に存在するが、比較的高濃度に存在している場所は、脳や脊髄、血液中である。
これらのコレステロールの大部分は、肝臓で作られたものが約90%であるが、食事由来のもの約10%が加わったものと考えられている。
・コレステロールは、人間にとって重要な栄養素の一つであるが、一般には、人体の健康を損なう物質であると誤解している人が多く、生命を維持していくための重要な物質であることを理解している人は少ない。
確かに、血中コレステロール濃度が異常に高いと健康上問題があり、動脈硬化が進行し、血管障害、心筋梗塞の原因になることもあるが、少なすぎても人の健康に支障をきたすといわれている。
コレステロールの少ない人は、肺炎や結核等の感染症にかかりやすくなったり、血管壁が弱くなり脳卒中が起こりやすくなるともいわれている。つまり、血中コレステロール濃度は、高すぎても低すぎても問題があるということである。
・血中コレステロールは、日本人の場合、血液100ml当たり160〜200mgの濃度であるが、理想的には180〜220mg程度必要といわれている。
コレステロールの体内での役割
@ 細胞膜の構成成分の1つであるので、コレステロールが少なすぎると細胞が壊れやすくなり、病気に対する抵抗力が弱くなり貧血が起こりやすくなる。
A 脳の神経繊維を守る神経鞘の成分として、きわめて重要な役割をしている。
B 女性ホルモンや副腎皮質ホルモンの材料として、重要な役割をしている。
C ビタミンDの原料となる。

 

・血中に含まれるコレステロール値を測定し、コレステロール値が高いから危険であると考えられがちであるが、測定されたコレステロール値は「善玉コレステロール」(H.D.L)、「悪玉コレステロール」(L.D.L)等を含めた総コレステロール値であり、この数値が高いというだけで危険であると決めつけられない。
・鶏卵(卵黄)は、コレステロール含有量が多いので、多食することにより血清コレステロール値が上昇するとして誤解し、敬遠する人もいるが、鶏卵には、コレステロールの動脈壁への沈着を抑える不飽和脂肪酸(リノール酸等)が、多量に含まれていることから、あまり心配する必要がないといわれている。
また、卵黄に多く含まれている「レシチン」という物質は、「善玉コレステロール」の量を増加させるのに役立っており、動脈硬化の予防薬の主成分としても使われている。
・鶏卵の多食は、血中コレステロール値が上昇するという研究報告がある一方、多食してもほとんど大きな変動がないという研究報告も多くある。

*コレステロールの役割の詳細

コレステロールの役割等について、医学的な見地から以下に示す。
・人間の血液中には、大きく分けると4種類の脂肪がある。コレステロール、中性脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸の4種類である。これら4つの脂肪は、タンパクと結合して、水に溶けやすい状態で血液中に存在している。これを「リポ蛋白」と呼び、比重の差から次の4種に分類している。(リポとは、脂肪の意)
4種のリポ蛋白の説明
カイロミクロン リポ蛋白のうち、最も大きい粒子で、中性脂肪と蛋白が結びついたものである。
脂肪の割合が多く、比重は最も小さい。
超低比重リポ蛋白 (VLDL) カイロミクロンと同様に中性脂肪が多く含まれ(約50〜70%)、コレステロール
は15%位である。
比重はカイロミクロンに次いで小さい。
低比重リポ蛋白 (LDL) コレステロールは45%を占め、中性脂肪が10%位である。
VLDLより比重は大きい。
「悪玉コレステロール」と呼ばれているものである。
高比重リポ蛋白 (HDL) 比重が最も大きく、粒子が最も小さいものである。
コレステロールの含有量は20〜25%で、そのほかは、リン脂肪と蛋白質であ
る。
「善玉コレステロール」と呼ばれているものである。

 

・上表に示すように、LDLを悪玉コレステロール、HDLを善玉コレステロールと呼んでいるが、そのゆえんは肝臓で作られたコレステロールを各細胞に供給する役割を持っているのが「悪玉コレステロール」(LDL)、そして余ったコレステロールを肝臓へ連れ戻すのが「善玉コレステロール」(HDL)の役目であるためである。
つまり、LDL(悪玉)は、血管壁にコレステロールを沈着させ、動脈硬化等を引き起こす原因を作り出すのに対して、HDL(善玉)は、逆に血管壁に付着しているコレステロールを取り除く作用があるからである。
しかし、「悪玉コレステロール」と呼ばれていても、肝臓で作られたコレステロールを各細胞へ運ぶという、人体にとって重要な役割を持っている。人間は、悪玉コレステロールなしでは生きていけないのである。
・上記に示したように、悪玉、善玉ともに、それぞれ重要な役割を持っているが、総コレステロール中の悪玉が増えて善玉が減ると、血管中にコレステロールが溜まって、心筋梗塞や動脈硬化をおこしやすくなる。このため、総コレステロール量と善玉コレステロールを調べて、善玉が多ければ、総コレステロールが多くても問題ないとされている。
・鶏卵には、コレステロールの動脈壁への沈着を抑える不飽和脂肪酸(リノール酸等)が、多量に含まれていることから、あまり心配する必要がないといわれている。