吸引戦隊カービィファイブ

 


鉄も溶けそうなある暑い夏の日。ベジタブルバレーのカービィの家に五人(?)もの球体がごちゃごちゃと集まっていました。

「暑いよー。」 

「誰だよぅ。クーラー壊したのは。」

今にも落ちそうな様子で傾いているクーラーには「死」と書かれた張り紙が。

「そびくんだよ。ボク見たもん。高い椅子にあがってサマーソルトキックしてたよ。」

と、くさもっちが言ったので、ソービィは慌てて、

「だってTVはたたいたら直るでしょ。壊れかけたクーラーもいっしょだと思って・・・」

「蹴らなくてもいーじゃん。」

「あーあ。・・・お昼ご飯なんだろ。」

「夏はカレーって言うけどさすがに今日は食べたくないね。なるべく味が薄い物・・・。そーめんがいいナ。」

「料理当番って誰?」

「キービィじゃない?」

「・・・」

みんないっせいに台所の方を向くと、大きななべを持ったキービィが立っていました。

「やっほーぃ。キービィだよん。夏はやっぱりカレーだよねぃ。」

4人そろって「・・・カレー?」と聞き返しました。

「キービィ。おととい海へ行った時のお弁当も・・・」  

「カレーだったよ。」

「春にお花見に行った時も・・・」

「カレーだったよ。」

「お正月のおせちも・・・」

「カレーだったよ。」

「クリスマスの時も・・・」

「あの時はカレーシチューだったよ。」

「86年ごとに地球へやって来るほうき星の名前は?」

「ハレーだけど、どーでもいいじゃんそんなこと。」

「86じゃない。76だ。」

いきなりみんなの後ろに金髪の少年が立っていました。

「ナっ・・・ナックルジョーっ。」

「いぃぃいぃいいつの間にいぃーっ。」

「ついにろれつも回らなくなったか。ダチが俺がそーめん嫌いなのを忘れて送ってきたんだ。てめーらならごみでも喰うと思って・・・」

「ありがとぉぉぉーっ。すごいうれしー。」

「感謝の印として、10本食うごとに100円(端数切り上げ)はらえよー。」

するとキービィがそーめんの箱を取りました。

「なーんだ、みんなぁ。そーめん食べたいならそう言ってよ。」

「キービィ、早く作ってー。」

「おっけーぃ。」

しばらくして、キービィがゆであがったそーめんを持ってきました。

「ほんとにそーめんだー。じゃ、食べよー。」

「待ってよぅ。まだ出来てないよ。」

そう言ってキービィはそーめんをどぼどぼとさっきのカレーへ入れました。

「・・・・・・」

「カレーそーめんの出来上がりー。」

「・・・キービィ・・・」

「何ぃ?」

 

カレーそーめんから10分後、赤いベレー帽をかぶった黒髪の少女がカービィの家に来ました。

「やっほー、カーくん。新しい武器が・・・って、なんでみんなしてキーくんをなべでゆでてんの?」

「あ、アドちゃん。夏のせいだよ・・・」

「ふーん。あ、ナッシーも来てたの。」

「その呼び方をやめろと何度言わせるつもりだ?」

本人はおもいきりその呼び方を気に入っていない様子。

「それよりカーくん、新しい武器よ。武器。」

「どんなの?かっこいいのがいいなー。」

「新しい武器・・・その名も・・・ラブラブステッキよ!」

みーーーーーん・・・(沈黙を奏でる音)

ラブラブステッキを知らない方へ

星のカービィ3で出てきたラスボスに唯一対抗出来る武器。形は赤と黄のしましまがはいった円錐の底面にうすっぺらいハートのとがった所がくっついている。書く方も読む方も恥ずかしい武器。

「らぶらぶーって言いながら振り回すとハート型の弾丸が出るのよ。」

「らぶらぶーって言う必要あるの?」

「ないよ。でも、戦隊モノなら武器や技の名前叫びながら攻撃するのが常識でしょ?さあ、使ってみて。」

「やだよぅ。くさもっち使って。」

「えっ、やだやだ、きびくん使って。」

「ボクちょっとのぼせちゃってるから・・・ソーちゃん使って。」

「やっぱ赤色だから赤色の人がつかわなきゃ。ほしりん使って。」

「えー・・・そんな・・・・・・・・・・・・ジョー・・・」

「俺にふるな。」

「はい・・・(どうしよう・・・こんなのはずかしすぎるよぅ)」

と、そこへ慌てた様子でワドルドゥーがやって来ました。

「大変です!カービィのみなさん!」

うめぼっちはうれしそうにステッキを放り捨てワドルドゥーに話しかけました。

「ありがとう。おかげで助かったよ。ところで何?」

「コンタクトレンズを落としたんです。」

「それは一大事だ!いくぞ!みんな!」

「でも、コンタクト落としたのにさぁ、よくここまでこれたね。」

「つっこみはいいですから早く探して下さい。こうしてる間にもコンタクトの上に誰かの足が・・・」

「よーし、グーイで出動だぁ!」

「は?」

ぐごごごごごごご・・・という音と共にお約束な感じで地面がわれ、巨大ロボのグーイが出てきました。

「ちょ、ちょっと!カービィさん!別に怪人倒しに行くんじゃないんですよ!」

「えーっ、雰囲気出ないじゃん、これしないと。」

すると、グーイの下である音が響きました。

ぱりん・・・

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「ナッシー、今のは・・・」

「やめろって言ってんだろ・・・・・・コンタクトレンズの割れる音だな。」

ナックルジョーのせりふの後、しばらくせみの声だけが辺りを支配していました。

 

「で、カーくん許してもらえたの?」

「お詫びにステッキを無理矢理あげて帰ってもらった。」

「えーっ、あのステッキあげちゃったのぉ?しょうがないな。また作るね。」

「その時はうめぼっち、よろしく頼むよ。」

「えっ、やだよボク。助けてよ、ジョー。」

「俺、帰る。」

「私も帰ろ。」

「・・・・・・」

「・・・晩ご飯にしよっか。」

「そうだね・・・」

晩ご飯は、温めなおしたカレーそーめんでした。


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