吸引戦隊カービィファイブ
〜えっ!?いきなりバトル!?〜
「ジョー!ジョーはどこぉ!?」
カービィの慌てた声がベジタブルバレーの野原に響きます。
「カビちゃん!見つけたよ!」
キービィが息をきらしながら走ってきます。
「どこなのぉ!?ねぇ、どこぉ!?」
「ゲームセンターだよ。」
「あぁーっ、もぉーっ、やっぱりいぃぃーっ!」
2人(?)はゲームセンターへ、のたのたと走ります。
一方、ゲームセンターでは・・・
「ナッシー、いいかげんにしなさいよっ!敵が来たんだって!」
「関係ねーな。今178人抜きなんだ。耳元でさわぐな。」
「関係あるから来てんでしょーっ!戦闘のアドバイザーのあんたがいなかったらカーくん達じゃ勝てないでしょ!」
「もう一度言うぞ。関係ない。」
するとカービィとキービィがゲームセンターに入ってきました。
「ジョーはどのゲームやってんの?」
「格ゲーに決まってるじゃないか。アドちゃーん、カビちゃん呼んできたよ。」
「キーくん、なーいす!カーくん、ナッシーの横に来て。」
「あ、わかった。すっぴんビーム!」
「だーっ!?」
ナックルジョーとはいえ、所詮ヘルパー。カービィのすっぴんビームをあびると、能力アイテムになってしまいます。
「この後さ、やっぱりボクが殴られるんだよね・・・。いったんボクの家にもどろ。」
そう言ってカービィは、グローブを持って、キービィとアドとゲームセンターを出ていきました。他の客や店員はその様子を呆然と見ていました。
カービィの予想は外れました。殴られるかわりに、強烈なスピンキックを食らわされたのです。
「きゃーーーっ!・・・・・・いたたたた・・・」
「178人をどーしてくれる!この後、DC買えよ。」
「だめだよぉ、任天堂キャラが他のゲーム会社のハードを買っちゃ。」
「黙れ。」
「はい・・・」
「カーくん、急いで。他のみんなはもうグーイの中にいるから。」
「やだなぁ、その表現・・・」
「私のつくった(絵に描いて実体化させた)ものにケチつける気?」
「うぅん!そーゆーわけじゃないよ!いってきまーす!」
カービィはロボへと走りながら、アドやナックルジョーに聞こえないように、ぼそっと言いました。
「アドちゃん、最近なんとなくジョーに似てきたなぁ・・・」
「アド、敵の外見、攻撃方法、移動速度、弱点は何だ。」
「えーとね、敵はダークマター、黒い球に目が一つ。後ろに花びらの様にオレンジ色の鱗があるの。攻撃方法はね、体当たり、目からの黒いビーム、鱗を飛ばすってとこかな。あと、けっこう素早いわよ。弱点はやっぱり目じゃない?」
「やっぱり、だと?正確な弱点はわかんねーのかよ。役にたたねーな。」
「ゲーセンばっかり行ってる奴よりはましよ。」
「あんだと?」
「何よー。」
(「ジョー、アドちゃん、けんかしてる場合じゃないって。」)
グーイの中にいるカービィから通信が届きます。
「あ、カーくん、ごめんね。ほら、さっさと行きなさいよ。」
「わかったよ。あとでポケステ請求するからな。」
「もー、何でもいいからさっさと行ってよ。」
(「なんだかんだ言っても、ジョー、協力してくれるんだね。よかったね、カビちゃん。」)
(「どうせ協力してくれるんなら、蹴らないでほしいな・・・」)
(「かびりん、お腹が粘土みたいにへっこんじゃってるね。」)
(「本気で蹴らなくてもいいのにぃ。」)
そう言ってカービィは、お腹だか胸だかわからないとこをまだ痛そうにさすりました。
さて、戦闘のアドバイスをするからには、敵と味方を見渡せる高い所にいなければなりません。ナックルジョーは、近くの森の一番高い木のてっぺんまでジャンプしました。
「あいかわらず、非常識なことやってるなぁ。」
(「てめーには、言われたくねーな。」)
「えっ、もう無線のスイッチいれてんの!?」
(「あとで覚えとけよ。」)
ナックルジョーの静かな口調にカービィの恐怖心がストーブの近くに置かれた風船の様にむくむくと膨らみます。
「ボク、戦いに勝っても、後で死ぬよりひどい目にあうかもしれないよぅ・・・」
「カビちゃん、元気出して。ボクもいっしょにおこられてあげるから。」
「かびくん、ボクもつきあうよ。」
「かびりんだけおこられるの、かわいそうだもん。」
「ポポくん、みんなそろっておこられよ。」
「みんなあぁぁぁ・・・ありがとおぉぉー。」
感動のBGMが流れます。ところがそこへ、ダークマターが待ちくたびれた様につっこんで来ました。どごんという音がして、グーイは数十メートル後ろへふっ飛ばされました。
「きゃーっ。」
「何もこんな時にこなくても・・・」
ぶつかられた時の衝撃は、もちろん操縦席の方にも伝わりました。
(「何やってんだ、てめーら!俺が協力してやってんだからちゃんとやれ!」)
「ごめんね、ジョー。でも・・・」
(「ほー、この俺に口ごたえするつもりか。」)
「いや、その、そういうわけじゃ・・・」
(「2000年3月までに動ける様になるといいな。」)
「・・・・・・」
無線の奥から「くっくっく・・・」という重くて、意味ありげな笑いが響いてきます。カービィはこの後のことを考えて、さーっと血の気が引き、ソービィの様に青くなりました。
「カビちゃん、やっぱりボク、つきあわない。」
「ボク達も。」
「えぇーっ、そんなぁ・・・」
「だってさ、まだボク死にたくないもん。」
(「そんなどーでもいい話は後回しだ。来るぞ。右によけろ。」)
「グーイ!右!」
間一髪、ダークマターの攻撃をかわします。
(「ビームが来るぞ。間合いをとれ。」)
「グーイ!後ろに行って!」
ビームの届かない範囲にまでさがります。普通なら、グーイの動きはにぶめなので、ダークマターの素早い攻撃をかわすことは出来ませんが、通常「先読み」と呼ばれるもののはるかに上をゆく早さでナックルジョーは相手の行動を読んで、さらに最小限の動きですむように指示を出します。おかげでカービィ達は紙一重でダークマターの攻撃をかわしていきます。
「・・・・・・」
ダークマターは、目の前のふざけた顔の生物(一応同じ種族ですが)に自分の攻撃をかわす力があるようには、思えません。ダークマターは、攻撃をしながら考えて、一つの答えにたどり着きました。
「・・・(どこかに指示を出してる奴がいる!?)」
辺りを見渡すと、すぐにそれらしい人物が見つかりました。緑色の木の中に金色の髪をしているので、一目瞭然です。普段のナックルジョーなら余裕でかわせましたが、カービィと無線で指示を出している最中だったので、反応が少し遅れました。
「次は・・・ぅわっ!?」
ダークマターの体当たりによって、大量の木がなぎたおされました。
「うわあぁっ、ジョー、大丈夫!?・・・あーっ、もう!お約束な感じで無線が壊れてるよぉ!」
ダークマターは、もう攻撃をかわせまいと思ってグーイの方を振り向こうとしました。しかし、動けませんでした。
「・・・?」
「あっ、ジョーだ。」
ナックルジョーがダークマターの目の下の所を片手でつかんで、動きを封じていました。
「目玉の分際で・・・」
ダークマターをつかむ手に力が入ります。
「目玉の分際で・・・この俺に体当たりをかましやがったなあぁぁっ!!」
片手でダークマターをつかんだまま、体をひねってぶりをつけ、カービィにした、スピンキックをしました。すると・・・
どががががっ
ダークマターは、はじかれたビー玉の様に、近くの山にめり込むまで地面を削りながら飛ばされていきました。ちなみにダークマターの大きさは、人(ナックルジョー):ビル(ダークマター)ぐらいあります。
「俺の存在に気づいたまではよかったが、俺に攻撃したのは間違いだったな。」
ナックルジョーは、目の間に影をつけ、得意の薄い笑みを浮かべながら言いました。
「2000年3月までに動ける様になるといいな。」
カービィ達は、文字通り、開いた口がふさがりませんでした。
「アドちゃーん、敵を一匹捕まえたよ。」
そう言って、カービィは小さなびんをアドに渡しました。
「あ、ほんと。入ってる、入ってる。でも、のりつくだにの空きびんってのはかわいそうじゃないかなぁ。」
グーイは動けなくなった敵を飲み込み、小さくし、適当なびんに詰める能力を持っています。
「ボク、よくやったでしょ!」
「余計なこともな・・・」
「ひっ・・・」
カービィはおそるおそる後ろを振り向くと、ナックルジョーが目の間に影をつけて立っていました。
「あ、あ、あ、あのね、ボ、ボ、ボク・・・」
「心配すんな。ダークマターを軽くだが、蹴り飛ばしたからな。だいぶ気がまぎれた。許してやるよ。」
「あ、あれで軽く・・・?ま、いいや。ありがとおぉー・・・」
「1割だけな。」(許すのが)
「・・・・・・・・・きゃあああぁぁぁーっ・・・・・・・・・・・・・・・」
穏やかな天気の日の出来事でした。