吸引戦隊カービィファイブ
〜読者が知らない世界〜

 

前回のチームの花的なあらすじ

アドよ。
まだやってないコンビって、探せば結構あるのね。

リボンです。
えぇと・・・あらすじ、と言いましても、大して話は進んでいないような気が・・・。

コレカラスターに着いて、数チームに分かれてクリスタル探索を始めたのよね。

そうしたら、キービィさんとうめぼっちさんとカイムさんのチームが原住民の方々に連れられて行ってしまったんですよね。
サブタイトルには「カーニバル」ってありますよ。きっと楽しいんでしょうね。

・・・何か、裏がありそうなサブタイトルなんだけど。

 


ヤリコ達の集落で行われているカーニバルが最高潮を迎える頃、カービィ、ソービィ、ナックルジョーのチームは少し離れた密林を歩いていました。

「はっはっはー!当たり障りがわりと無く尚かつ戦闘能力高めのチーム!さーすが、主人公!くじ運がイイ!」

「・・・でも、ほしりんは・・・茫然自失としていたよね・・・」

「刺されても気付きそうにない感じだったな。」

「可哀想だなぁ、ほしりん・・・ボクにはよくわかる・・・」

「じゃあ、ソービィ。今からでもうめぼっちと交代してあげる?」

「イヤだ。」

ソービィは真っ直ぐな瞳でカービィに返答しました。

「・・・あー、即答したなー。同情してあげたクセにぃ。」

「だってだって、『同情』っていうのは、自分の身の安全が完全に保障されていて初めて出来るコトなんだよ!」

「お前等もお前等で、それなりに薄情だよな。」

「そりゃー、『友情!努力!勝利!』って小説じゃないし。」

「あえて言うなら『薄情!才能!結果オーライ!』だよね。」

「ともかく、今のボクはツイてるに違いない!交通事故に遭って死ぬ確率より低いと言われる宝くじにも当たっちゃうかもよ!」

「トァーッ!」

突如、近くの茂みからヤリコが飛び出してきました。

「うーわー!?こんなのには、当たりたくないー!」

どがぁっ

「グァーッ!」

飛び出してきたヤリコは、ナックルジョーのミドルキックによって茂みの中へと押し戻されていきました。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・何だ、今のは。」

「正体のわからないモノをいきなり蹴飛ばすんじゃありません!」

「考えてから行動しなさい!」

カービィとソービィは言いたいコトを言った後、顔を見合わせました。

「2人だと、ツッコミが心強いー!」

「2人だと、ツッコミが楽だー!」

そして、互いに救われたような表情を浮かべてひっしと抱き合いました。

「・・・お前等も一体何なんだ。」

蚊帳の外ならぬ茂みの中へ押しやられたヤリコは、ふらつきながらも立ち上がります。

「イ、イキナリ、アシゲニスルトハ、ナントヤバンナ・・・。シカシ、コレシキノ、コトデハ・・・・・・トァーッ!」

ヤリコは渾身の力を込めて、カービィ達に槍を投げました。

「わー!?槍ーっ!?」

「あ?槍?」

ぱしんっ

ナックルジョーに蹴り上げられた槍は、軽い音を立てクルクルと回りながら青空へと舞いました。

どがっ

「グェッ!」

ヤリコは、胸の部分をナックルジョーに踏みつけられて地面に固定されます。

「・・・ゥ、」

クルクルと回りながら落ちてきた槍をナックルジョーはつかみ取り、雄叫びを上げようとしたヤリコの口に刃の付いていない方を押し込みました。

「ムム〜!」

呆気にとられていたカービィとソービィは、思考を元に戻して叫びます。

「あんたぁ、そりゃー、やーりすぎだぁぁー!」

「全てが『この人は、こーゆーキャラなんです』で済むと思わないでよ!」

「仲間を呼ばれたら、面倒だろーが。」

「やり方ってモンがあるでしょーに!」

ソービィは必死になってヤリコに頭を下げます。

「すみません、すみません。この人は、こーゆーキャラなんです。」

「今更、そんなフォローは通じないんじゃないのか?」

「だから、他人事みたいに言わないでってば!」

 

ソービィお得意の説得により、何とかヤリコには「警戒心を持たれる」程度にまで落ち着いてもらえました。

「でね、『クリスタル』ってのを探しているの。きらきら光っている石。知らない?」

「・・・ソレヲ、ツカッテ、ワレラヲ、コウゲキスルノカ?」

「違うって。攻撃は、しないって・・・・・・ジョーのせいだよ。」

「俺に危害を加えようとする奴が悪い。」

「この人は、こーゆーキャラなんです。こーゆーキャラなんです。」

「・・・トニカク、ソンナイシ、シラナイ。」

「うーん・・・じゃ、君の集落に案内してくれる?誰か1人くらい知ってる人いるかも。」

「アンナイサセテ、ワレラノムラ、ホロボスノカ?」

「だから、滅ぼさないって!」

「オマエハトモカク、ソッチノ、セノタカイノハ、シンヨウナラン。」

「この人は、幾らなんでもそんなキャラじゃないです。・・・よねぇ?」

「俺に危害を加えようとしなかったらな。」

「・・・・・・」

ソービィの顔の青さが濃くなります。

「大丈夫だよ。いざとなったら、『すっぴんビーム』ってので動きを止めるコトができるから。」

「・・・ホントカ?・・・・・・ヨシ、アンナイスル。」

ヤリコの後を付いていくカービィに、ソービィがそっと話しかけます。

「かびりん、本気?ヤリコの村が滅びなくても、かびりんがジョーに滅ぼされちゃうよ?」

「いや、こー言っておけば、とりあえず案内してもらえるじゃない。」

「お前も結構、知恵が回るようになったな。」

「えへへ、まぁね!」

「・・・・・・」

 

「・・・ホントニ、ホントニ、ホロボサナイナ?」

「わーかってますってー。はははー。」

空の笑いを浮かべるカービィに、ソービィは苦い目を向けます。

「・・・サァ、ココガ、ワレラノムラダ!」

開けた視界にまず飛び込んだのは、もうもうと煙を上げる家々と、地面に転がる人々でした。

「・・・何っじゃあ、こりゃあー!?」

「T山三十人殺しかあー!?」

「コレはもう、滅ぼしようがないんじゃないか?」

「イイイ、イッタイ、ナニガ・・・」

一行は、周囲を見て回ります。

「とりあえず、死者はいないみたいだね。」

「皮一枚って感じだけどな。」

「ソービィ、ジョー。こっちにお鍋があるよ。」

3人は、色んな具が浮かぶ鍋を覗き込みました。

「カレーの匂いがする。」

「まずそうだな。」

「ホントだ、梅干しが入ってる。」

「梅干しじゃないもーん!」

カレースープに浸かって現実逃避していたうめぼっちは、スープから顔を上げ、外界へ戻ってきました。

「うめぼっち!何鍋の中で遊んでるの!」

「遊んでないもん!テトロドトキシンなのにカニバリズムの御輿で、シェフの怒りが地獄絵図なんだよ!」

「可哀想だなぁ、ほしりん・・・頭が。」

「手遅れだな、コレは。」

「手遅れじゃないもーん!ちょっと説明に失敗しただけだよ。・・・それはさておき、あんなメンツ、もうヤダぁ〜。」

うめぼっちは顔を下げて、スープの塩分濃度を上げ始めます。

「・・・あんなメンツと言えば、他の2人はどしたの?」

「ムーくんは、一暴れした後『さらわれたボクの相棒達を助けてくる』って・・・」

「キービィが暴れたのかー。村一つ滅びるのも無理ないかな。でも、キービィは一段落ついたら無害なんだよね。」

「問題の、爆弾キャラは?」

 

藁葺きの屋根の中に隠れたヤリコは息を殺して、家の中を凝視しています。正確には、「家の中」ではなく「家の中の人物」です。

「ドーは、どーみゃくーのードー。レーは、轢死のレー。」

黒カイムは息継ぎ毎に、簡素な家具を蹴り飛ばし、誰か隠れていないか確認します。

「ミーは、みーな、ごーろーしー。ファーは、ファントム・リーム。」

未確認家具の数とヤリコの心拍数は反比例の関係にあります。

「ソーは、黒い壊疽ー。ラーは、落下のラー。シーは食人だー。」

家の中を確認し終えた黒カイムは、きょろきょろと周りを見回し、外へと出ていきました。

「さあ、ほーふーりーましょー。」

黒カイムの足音が聞こえなくなると、ヤリコは止めていた息を吐き出そうとします。

ずざざざっ

「!?」

吐こうとした瞬間、屋根の上へと引き上げられます。藁の外へ出たヤリコが最初に見たのは、屋根でも空でもなく、前髪が触れるほど密着した黒カイムの顔でした。

「Peek−a−boo!」

 

カービィ達を案内したヤリコは、村の惨状に唖然とするばかりです。

「ドンナバケモノガ、アラワレタラ、コンナコトガ・・・」

「ギィヤアァァーッ!」

「!?」

近くの家の上から、厚めの布を無理に引き裂くような悲鳴が聞こえてきました。

ぼてっ

「ウアー!?」

ヤリコのすぐ前に、白髪化しそうな顔をしたヤリコが降ってきました。

「ドウシタ!?イッタイ、ナニガ、オコッタ!?」

「ク・・・クロイ、ドクモチノ、ヤツガ・・・」

ヤリコはヨロヨロと屋根の上を指差すと、意識を失ってしまいました。

「ク、クロイ・・・ドクモチ?」

ヤリコは、おそるおそる指差された屋根を見上げると、嬉しそうにヤリコを見下ろす黒カイムが目に入りました。

「まーだ、動ける奴、いたんだー?」

 

「問題の爆弾キャラは、今その・・・黒くなってて・・・」

「ああ、黒い方の。・・・でもボク、直接見たコトないんだよね。」

「直接見ない方がいいよ、かびりん。目がつぶれるかもよ、例え話じゃなくて。」

「どっちかっつーと、黒い方が若干あしらいやすいけどな。」

「ソレは、ジョーだから言えるんだぁー!あんなゴ趣味キャラ、もう見たくもないー!」

「ギィヤアァァーッ!」

突然の悲鳴に、カービィとソービィは辺りを見回します。

「な・・・何?何の悲鳴?」

「奴だ・・・。毒持ちだ・・・黒い毒持ちだ・・・」

うめぼっちはスープの中でぶつぶつと呟きます。

「は?毒餅?あまりおいしくなさそうだね。」

「ギィヤアァァーッ!」

再度、悲鳴が上がります。カービィ達が悲鳴の上がった方へ目を向けると、ヤリコとそれを追いかける黒カイムの姿がありました。

「ウワ、ウワ、ウワーッ!」

「待て、待て、待てーッ!」

「・・・トァーッ!」

ヤリコは逃げながらも振り返り、黒カイムに槍に投げました。

すこんッ

「・・・あっ。」

槍は見事、黒カイムの眉間に突き刺さりました。黒カイムは槍の勢いに押されて仰け反り、仰向けに地面に倒れます。

「・・・・・・」

しばらく、静止画像のような時間が流れました。黒カイムは仰け反ったまま上半身を起こし、糸が切れた人形のような動きで少し俯きます。俯いた衝撃で、地面にぼたぼたと斑点が描かれました。

「・・・・・・」

黒カイムは緩慢な動作で槍を引き抜きます。傷はすぐに消えますが、顔面に走った赤い道は残ります。黒カイムは、それを拭い、まじまじと見ました。

「・・・あー?」

薄笑いを浮かべ手についたものを舐め取りながら、黒カイムはヤリコに上目遣いの視線を送ります。

「・・・ウワーッ!」

ヤリコは再び逃走しました。

「だーから、待てっつってんだー!」

黒カイムはビームを出現させると、ヤリコへ向かって横に振ります。すると、先端が切り離され馬蹄型に変化し、ヤリコを近くの木の幹に固定しました。

「ウワーッ!ウワーッ!ウワーッ!」

じたばたもがくヤリコに、黒カイムは歩いて近寄ります。

「なーに、調子こいて槍投げてんだぁ?いくら半不死身とはいえ、ドタマをブッ刺されたら、やっぱりちょっとは痛ぇんだよ、オラァ!」

言い終わると同時に、黒カイムはヤリコを踏みつけます。

「〜ッ!」

「どーした、どーしたぁ?叫んでみろよ、喚いてみろよ、悲鳴上げてみろよ!片仮名で!ぁははははは!」

カービィとソービィは口を開けたまま、事の成り行きを見ています。

「アレが『水を得た魚』ってヤツか。」

「何平然と観察してんのさ、ジョー!」

「止めて、止めて!」

「何で俺が。」

「僕等にあんなモンに近付けって言うの!?お食事前のネクター博士の次にイヤだよ!」

「第一、このメンツでアレ止められるのはジョーだけだし!」

「アレを止めないコトには、次に進めないよ!ポップスターに帰るのが遅くなるよ!」

「予約したままほったらかしになっているソフトが店で待ってるよ!」

「それどころか、知らない間に新作タイトルが目白押しで・・・」

「うるせーな。止めてくるから、黙れ。」

安堵の表情を浮かべ、諸手をあげて飛び跳ねるカービィとソービィを尻目に、ナックルジョーは黒カイムに近付きます。

「〜!〜!」

「だーかーらー、悲鳴上げてみろっつってんの。何のための声帯だぁ?」

「おい、カイム。」

「何ー?参加すんの?相手になんの?」

「足、どけてみろ。」

「はぁ?足ィ?」

黒カイムは、ヤリコの上から足をどけます。

「・・・ウワーッ!ウワーッ!」

「お、悲鳴上げた。」

「肺を押さえつけられているヤツが、悲鳴上げられるワケねーだろ。」

「あー、なるほどねー。ども、ありがと!」

ナックルジョーは踵を返して、カービィ達の所へ戻ります。

「これでいいのか。」

「と、止めてない!止めてないよ!」

「人はそれを『助言』と言う!」

「ジョゲン?苦そうな名前だねぃ。」

近所のコンビニから帰ってきたような雰囲気で、調理器具一式を抱えたキービィが帰ってきました。そして地面に布きれを敷いて器具を丁寧に置き、鍋の中へ入ります。

「・・・キービィ、何やってんの・・・?」

「えとね、ボク、食材だから。」

「・・・はィ?」

「高くん、おーかえりー。」

黒カイムが片手をひらひらさせながら、鍋の所へやってきました。

「しばらくナベの外に出ちゃったから、出来上がりはちょっと遅くなっちゃうかな。」

「楽しみにしてるよ!まさか、生でカニバリズムを拝見できるとは思ってなかったからね。このために、原住民も一応殺してないし。」

「・・・・・・」

カービィとソービィは会話に付いて行けず唖然とするばかりですが、ナックルジョーは怪訝な表情を浮かべました。

「・・・カニバリズム?」

「んー?ナックルジョー、カニバリズム知らないの?」

「知ってる。共食いだろ。」

「そうそう。未開の地で会った原住民が、高くん達を食べるとか言ってるんだよね。典型的なカニバリズム!ときめくなー。」

黒カイムのセリフを聞いて、ナックルジョーの表情の怪訝さが増します。

「何?何か文句でもあるの?」

「・・・つまり、お前は共食いが見たいわけだろ?」

「だから、そー言ってるんだって。」

「コイツらと原住民は異種族だから、共食いは成り立たないんじゃないか?」

黒カイムは、試験終了直後にイージーミスに気付いたような表情を浮かべます。

「・・・あー!?ホントだ!カニバリズムになってない!・・・騙された!シチュエーションがそれっぽいから、騙されたー!」

「騙されたって言うより、勝手にそっちが勘違いして・・・」

スープに浸かりながらもツッコミを入れるうめぼっちに、黒カイムが詰め寄ります。

「ちょっと、赤くん!」

「な、何?」

「高くんに食べられて!」

うめぼっちは丸太に縛り付けられたまま、器用に鍋の中で反転します。

「アンタ、意味を理解して発言してんの!?」

「もちろん!同種族間でしか、カニバリズムは発生しないんだよ!至極普通な発言だ!・・・あーもー!勘違いとは言え、あんなシチュエーションにときめいていただなんてぇ〜!キモくてしょーがない!」

「・・・・・・・・・とにかく、ボクは絶対イヤだよ!」

「ボクもヤダ。梅干し、あまり好きじゃないもん。」

「梅干しじゃないもーん!」

鍋の2人に拒絶された黒カイムは、カービィとソービィに視線を移します。目が合った瞬間、2人は高速で首を横に振りました。

「・・・一応言っておくが、この場に同種族がいない俺はカニバリズム対象外だからな。」

「ずっ、ズルい!ジョー、1人で安全圏に逃げる気!?」

「いや、ズルいも何も・・・カイム、カニバリズムが成立しないと意味ないんだろ?」

「当ったり前だー!ソレが大前提!カスリもしない輩には『フチオ作品におけるオリジナリティ』程の興味も持たないからな!」

黒カイムは一通り騒いだ後、急に静かになりました。なりましたが、おもむろに黒いビームを出現させます。

「あ・・・あの。もしもし・・・?」

「・・・裏切られた・・・期待してたのに・・・!」

黒カイムは憤怒の表情を浮かべ、横たわるヤリコ達に向かおうとします。

「マズいよ、うめぼっちゃん!止めなきゃ!」

キービィはうめぼっちの縄をほどき、2人で黒カイムに飛びつきました。

「皆殺しはダメだよ!料理の仕方もシェフへの礼儀もなってないけど、将来性が無いわけじゃないんだから!」

「放せー!カニバリズムへの純真な想いが踏みにじられたってのがどんなにツラいか君等にわかるかー!」

「そーゆー想いはもっと別なジャンルに持つもんだと思うなぁー!」

溺れる者のようにもがく3人を、他の3人は静かに見守っています。

「・・・俺、何か余計なコト言ったか?」

カービィとソービィは高速で首を縦に振りました。


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