吸引戦隊カービィファイブ外伝
経営戦隊カービィファイブ・前編

 


「ねぇ・・・カレーと生卵の組み合わせって、素晴らしいと思わない?」

朝食の最中、いきなりキービィが口を開きます。

「ねぇってばぁ、カビちゃーん。」

「・・・ぃや・・・その・・・カレー自体、食べ・・・」

カービィは「食べ飽きてるからなぁ・・・」というセリフを必死になって飲み込みます。

「カビちゃん、何飲み込んだのさ!吐いて!吐け、吐くんだ!証拠はそろってるんだ!」

「さ・・・最後のは何か違・・・けほけほっ、背中叩かないでぇ!くさもっち、パース!」

カービィはキービィをくさもっちに押しつけました。

「えぇっ、そんな・・・」

「くさもっちゃんは、どー思うのさ。」

「え・・・んー・・・『生卵 あってももはや 食べ飽きた』・・・こんな感じ・・・いや、ダメだ。『あってももはや』の流れが悪い。もーちょっと、なめらかさを・・・」

くさもっちは、どこからか筆ペンと色紙を取り出すと、それを使って推敲し始めました。

「・・・ねぇ、くさもっちゃ・・・」

「うるさい、黙れ!話しかけるな!」

目が据わってます。

「もちりん、キャラが違う・・・」

「ソーちゃんは、どーなのさ。」

「え・・・うーん・・・はっきり言うと、カレーは食べ飽きたからなぁ・・・」

「なんだとぉ!」

「・・・と、ほしりんが言ってましたです、はい。」

「えーっ、ボクにふらないでよ、アッくん!文法が変だし!」

「ひっどーぃ、うめぼっちゃん!うめぼっちゃんは色が福神漬けといっしょだから、イイ人だと思ってたのに・・・」

「ボク、言ってない、言ってない!つーより、イイ人を判断する基準が・・・」

「キービィ、外1では『飽きた』と言われて落ち込んでたのに、この変わり様は・・・」

「カビちゃん、人生は前向きに生きてこそ、人生なのさ。」

「何か、よくわかんないけど、めんどくさいから、わかったコトにしとく・・・」

「それより、カレーに生卵!このコトをわかる人はいないの!?」

「・・・きびりん、アンケートでも採れば?他の人にも食べてもらって。」

「ソービィ、それはちょっと・・・カレーのアンケートを採る戦隊って変だよ。」

「じゃあ、ポポくん、お店でも建てたら?食べ物屋さんでアンケートは変じゃないでしょ?」

「いいね、ほしりん。お金稼げるし。」

「お金稼ぐって・・・もしかして、財政やばい?」

「言うほどやばくはないけどー、カービィファイブは基本的に無報酬だしー、エンゲル係数すごいしー、1人だけ報酬取ってる人物いるしー・・・」

名前を出さなくても、全員わかっているようです。

「・・・とにかく、お店建てよ、お店!キービィ!カレー中心のお店なら、毎日カレー作っても全然おっけーだよ!」

「ボク、お店やるー♪」

「くさもっちはー?」

「・・・『あってももはや』よりは、『あれどカレーは』の方がまだ・・・ん?何ぃ?」

「だから、お店。くさもっちはデザート作ってよ。」

「えー、ボクもつき合うのぉ?ボク、辛いモノ苦手なのに・・・」

「いや、だから、デザートを・・・」

「デザート作ってる隣でカレー作るんでしょ?イヤだよ、そんなの。ターメリックで、ボクまで黄ばんじゃいそう。」

「違うもーん!ボク、黄ばんだんじゃないもん!元から黄色なんだもーん!」

キービィはスプーンをぶんぶん振り回します。

ばき

キービィはスプーンでくさもっちの色紙をへし折ってしまいました。

「・・・」

10秒ほどの沈黙が訪れます。

「・・・な・・・なんてコトすんのさ、きびくん!この・・・天然黄ばみぃ!」

「てっ・・・てんね・・・それなら、くさもっちゃんは、カビはえ餅だよ!カビはえーっ、カビはえーっ!」

「うるさいっ!チーズにだってはえてるんだぞぅ!」

「餅は、はえたら、終わりだもーん!」

2人はジリジリと間合いを取りながら、移動していきます。

「おはよー、カーくん♪」

「あ、アドちゃん。」

「キーくん達、何してんの?」

「けんかだよ。」

「ふーん、こっちでも?」

「・・・『も』?」

「・・・あ。」

「またなのぉ?タフだねぇ。で、スマブラでケリつけたの?」

「・・・久々にポケスタ2で白黒つけよーとしたんだけど・・・聞いてよ〜!ファンシーカップでも勝てなかったのよーっ!あーっ、もーくやしいぃ〜っ!」

「戦闘アドバイザーに戦略で勝とうなんて、無理なんじゃない?それよりさぁ、アドちゃん、お店やってみない?」

「お店?」

「キービィがカレー作って、くさもっちがデザート作るの。」

「ちょっと、かびくん!ボク、おっけーしてないよ!」

「お店の壁に今まで詠んだ俳句を飾ってもいいよ。」

「かびくん、デザートなら、ボクにまかせて!」

「アドちゃんもいっしょにお店しよ♪」

「んー、けっこーイイかも♪ケーキとかクッキーを焼いたり・・・」

「えっ、アドちゃん、料理するつもり!?やめて、やめて!」

「えーっ、何でー?」

「だってさ、この前ボクが風邪ひいた時、『おカユ作ってあげる♪』とか言って・・・無茶苦茶なコトやって・・・」

「あぁ。おカユに生命が宿っちゃったのよね。触手ビチビチいわせながら『キシャーっ!』とか叫んでたわよね。」

「そんなおカユ作る人に、料理はまかせられないよぅ!」

「ちょっと失敗しただけじゃない。お酢を入れちゃったり、洗う時に楽かと思って、つい洗剤を入れたり・・・」

「ちょっとの失敗で、おカユがエイリアンになるかぁ!・・・料理よりは、食材を絵に描くとか・・・」

「ねぇ、ポポくん。女の子だし、ウエイトレスとかどーかなー?」

「でも、材料を描いてくれたら、お金があんまりかからないよ。」

「かびりん、ほしりん、そーゆーコトは後にして、お店の名前決めよー。」

「カレー命!これにしよ!」

キービィが即答します。

「キービィ、やめて。何か、怪しいカレーマニアが会合開いて、サバトやってそーな感じがする・・・」

「カビちゃん、言い過ぎだよ。カレーでサバトなんかしないよ。」

「・・・ボケ役のくせに、いきなりまともな意見を・・・じゃあ何で、この前台所で魔法陣作って、ろうそくつけて、スパイスの調合してたの?」

「無事に、おいしいカレーが出来ますよーにって、カレーの神様にお祈りを・・・」

「家建てるんじゃないんだよっ!」

「アッくん、カレー中心のお店なんだから、『Spicy House』って名前はどーかなー?」

「いいんじゃないかな。それにしよ。」

「あっ・・・知らない間に話がついてる・・・」

「はい、かびくん。」

くさもっちが大量の色紙をカービィに手渡します。

「こ・・・これは・・・」

「ボクの俳句ヒストリーだよ。赤い枠をつけてるのは、お気に入りのやつで・・・」

「カーくんー、私、料理がしたいー。」

「いや、だから・・・それはやめてって・・・」

「ポポくん、ボクを目立つトコに立たせてよー・・・」

「ごちゃごちゃ話しかけないでぇ!・・・鶴の一声が必要だ・・・」

カービィはいきなり、家の外に走り出します。

「カーくん、どこ行くのー?」

「かびりん、待ってよー・・・」

みんなは、じゃこうネズミの様にカービィを追いかけていきました。

 

「で、何で俺の家に来るんだ・・・?」

「ボクが叫んでも止まらないんだもん・・・」

「ねぇねぇ、ジョー、アドちゃんには、食材を描いてもらった方がいいよね。家計簿係のボクも助かるし・・・」

「やっぱり、女の子だから、ウエイトレスでしょ?」

「女・・・?・・・・・・・・・・・・・・・あぁ、そー言われてみれば、女だよな。」

「こっ・・・こいつ、殺す!」

「落ち着いて、アドちゃん。こんなコトでキれてたら、血管がいくらあっても足りないよ。」

「こんなコトとは何よ!ナッシーも間が開きすぎ!」

「何か悪いのか?」

「・・・・・・」

アドは返す言葉がありません。

「ねぇねぇ、ジョー。ジョーはね・・・」

「手伝えとか言うんじゃないだろーな。」

「・・・ダメ?」

「店の手伝いなんか、ぴらめんだからな。」

「・・・やっぱりなー・・・」

「かびくん、『ぴらめん』って何?」

「ティンクルスターに聞いてよ・・・ねー、ジョー、どーしてもダメ?」

「・・・お前、スマッシュパンチとスピンキック、どっちがいいんだ?」

「わかりました。無理に頼みません。」

カービィはキービィ達を引き連れ、帰っていきました。

 

「お店完成っ♪何か、展開早いけど、許してね♪」

「かびりん、誰に話してんの?」

「つっこまないでよ・・・」

うめぼっちが大きな板をずるずると運んできました。

「ポポくん、アッくん、看板できたよ。」

「じゃあ、うめぼっち、看板を入り口の真上に飾って。」

「おっけー♪・・・あぁ、出番があるって、いいなぁ・・・♪」

本人は1人で満足している様です。

「飾ったよー。」

「じゃあね、うめぼっち、看板の右にかわいく飛びついて。コアラみたいに。」

「こぉ?」

うめぼっちは言われたとおりに、看板にしがみつきます。

「うん、そぉそぉ。じゃ、ずっとそのままでいてね。」

「・・・ぇえ?」

「目立つトコにいたいんでしょ?目立つよ〜。お店に来た人全員の目につくよ。マスコットみたいだし。」

「・・・で、でも・・・こーゆーのは、一見目立って、実はほとんどの人が目にしないんじゃあ・・・」

「大丈夫だよ。目立ってる、目立ってる。」

「マンガとかなら目立ってるかもしれないけど・・・これは小説だから、こんなトコでじっとしてたら、文字として出てこれないんじゃあ・・・セリフもなさそーだし・・・」

「・・・ダメじゃん。気づいちゃ。」

「ポポくん、何かボクに恨みでもあるの!?」

「ティンクルスターはうめぼっちが書きにくいんだって。」

「苦手なモノほどがんばりなさいって、学校で習ったでしょ!」

「そんなきれい事出来てんのは、一部の真面目さんだけだよ。何が嬉しくて、苦手なコトをがんばんなきゃならないのさ。」

「うーん・・・確かに・・・」

「じゃあね、うめぼっち。」

「客寄せがんばって、ほしりん。」

「あっ・・・アッくんまで・・・ちょっと・・・ちょぉっとぉ〜っ!」

 

「ボクは家計簿係だから、レジをやるね。」

「ボクは隊長だから、ウエイターをやるね。」

根拠を知りたいです。

「やっぱ、女の子はウエイトレスでしょ。」

「料理がしたいのに〜・・・」

「お願いだから、やめて。」

「わかった。ウエイトレスでいい。」

「あ・・・ありがとう・・・ホントにありがとう。」

「変なコトで感謝しないでよ。」

「で、キービィとくさもっちが料理だね。」

「うん、まかせて〜♪」

「じゃ、僕はお客さんのリクエストに応えて、ギター付きで歌を歌お〜♪」

「・・・」

もはや、カービィ達の口からは、驚きの悲鳴も出ません。

「・・・えー、当店はまだ開店しておりません。お引き取り下さい。」

思い切り棒読みな口調です。みんなでカイムをドアの方へ押しやります。

「ちょ・・・ちょっと待って。来たばっかりなんだけど・・・」

「お帰りはあちらでございます。」

ばたん

カービィ達は、カイムを閉め出してしまいました。

「・・・あれー?反応がいつもより冷たいって感じかなー?・・・む?」

カイムの後ろに誰か立っています。

「・・・一名様ですかー?」

 

「お客さん、一名ご案内〜♪」

「あーっ、カイム!入ってこないでよ!」

「何でー?」

「事態が悪くなりそーだから。」

「お客さん連れてきたのにぃー・・・」

「えっ、ホント?誰、誰?」

「きゃ〜♪ビィちゃん、久しぶりぃ〜♪」

アイアンマムです。

「きゃ、あーちゃんだー♪」

「お土産持ってきたのよ〜♪」

「ホントぉ!ありがとぉ♪」

「はい〜、『サルの腰掛け』よ〜♪」

「・・・何だか、わけわかんないけど・・・ありがと・・・」

「きくらげもあるわよ〜、あと〜、へちまスポンジと〜、マウスパッドと〜、もずくと〜、先割れスプーンと〜、蛇の抜け殻と〜・・・」

「へっ・・・蛇の抜け殻!?」

「来る途中でね〜、拾ったの。珍しかったから、持って来ちゃった。あ、抜け殻って言うよりは〜、抜け皮?」

「あ・・・ありがと・・・」

「で、ついでにウチの子♪」

「あ、ジョー♪来てくれたんだね♪」

「帰る。カイムもいるし。」

「え〜、名指し〜?何で僕がいると、ダメなのぉー?」

「読んでる奴に聞けよ。」

「そこの君ぃ!何でー?」

「ホントに聞いてるよ、ジョー。」

「ほっとけよ。」

「お店、まだ開かないのー?」


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