緊急報告 劇団「おえん」騒動

表現の自由とは何か


10/04付 朝日新聞の報道


岡山県倉敷市が全額出資して設立した財団法人の市文化振興財団が、市民劇団を対象に公募した「倉敷演劇フェスティバル2003」で、同財団の不祥事をテーマにした作品を予定する劇団をはずしていたことがわかった。

インターネットのホームページで劇団が公開したシナリオを財団が知り、「フェスの趣旨にそぐわない」と判断したという。

関係者によると、市民数人でつくる劇団「おえん」(田辺泰志・世話役)が「ラッキィラブ」と題し、シナリオを劇団のホームページで公開した。4年前に発覚した財団職員によるチケット売上金着服事件や、裏帳簿問題、市職員の不祥事を紹介。「財団は文化行政への熱意も見識もなく、無能力」などと批判した。

フェスは地元の演劇文化を育てる目的で93年に始まった。今回12月から催す予定で、市内を中心に活動する劇団を対象に、約15団体を6月に公募。「おえん」を含めた23団体が応募した。財団は「おえん」をはずして抽選、16団体が決まった。

三宅伸卓・同財団事業課長は「不祥事は事実だが、市民に親しまれるフェスの趣旨にふさわしくない。我々の主催する事業でこういう批判をされると、信頼回復に努める職員がかわいそうだ」と説明する。  

田辺さんは「フェスを改革したい、と応募したのに、批判させないのは、おごりそのものだ。ホームページで見たシナリオを選考材料にするのは市民社会のルールに反する」と反発する。


事の起こり

岡山県倉敷市では毎年、倉敷市文化振興財団(以下 財団)の主催でアマチュア劇団を対象に「倉敷演劇フェスティバル」が開催されています。

参加資格は

1. 市内を中心にその近郊を主な活動拠点とする劇団
2. 同年度内に本財団から助成(主催・共催・後援を除く)を受けていないこと
3. 参加公演が他の公的機関からの助成を受けていないこと

となっており、以上の条件を満たした市民劇団「おえん」は2003年開催予定のフェスティバルに参加申し込みをしました。

ところが、正式な通知の前に、財団から「おえん」代表の藤川さんへ電話が入りました。

そのやりとりは、「おえん」公開の文章によれば以下の通りです。


市民劇団「おえん」演劇フェスティバル参加不許可通知(電話)の内容

7月15日、倉敷市文化振興財団の演劇フェスティバル担当責任者の藤田主幹より、藤川に電話で突然一方的に通告。事前に何の問い合わせもなし。


財団「シナリオを見させてもらった結果、内容が過激すぎて、今回の財団の催しには そぐわないので、参加をご遠慮ください」
おえん「どこが過激なのか」
財団「シナリオの前のほうのところです」
おえん「財団批判の箇所か」
財団「まあ・・・そうです」
おえん「後半の部分はいいということか」
財団「それはシナリオを見ただけでは判断できませんので」
おえん「ホームページのシナリオは映画用のシナリオだが」
財団「ああそうですか」
おえん「そのシナリオを見て判断したということか」
財団「そうです」
おえん「シナリオの内容は参加基準と全く関係ない」
財団「今回は財団主催ということで…」

おえん「選考過程と理由を、文書で送ってほしい」
財団「はいわかりました。送ります」

註 財団が問題にした「おえん」のシナリオを見るにはここをCLICK


上記の問題点

1. 「シナリオを見させてもらって・・・」とありますがフェスティパルの参加にシナリオ提出の義務はありません。財団は事前に「おえん」のHPに掲載されたシナリオを読んだ上で、そこに書かれた財団批判の箇所を「内容が過激」と判断しています。

 これは事前検閲に等しい行為ではないのでしょうか?

2. HP掲載のシナリオは、映画「ラッキィラブ」のシナリオであり、今回公演予定の戯曲台本とは異なります。異なるものを読んだ上でなされた判断には錯誤があると言わざるを得ません。

3. 重要な事は、そのシナリオさえもフェスティバルの参加基準のいずれにも抵触していないということです。つまり財団は自らを批判するものは、問答無用で財団主催のフェスティバルには参加させないと明言した事になります。

 ちなみに、参加基準とは


倉敷演劇フェスティバル 参加基準

参加公演は演劇・人形劇とする。但し、参加団体又は参加公演が次のいずれかに該当するおそれがある場合には、参加を認めないものとする             
        

1. 営利事業、又は営利意図があると認められるもの
2. 暴力排除の趣旨に反すると認められるもの
3. 公の秩序又は善良な風俗を乱すおそれのあるもの              

4. 実施計画が完全でなく、客観的にその実施の確実性が疑わしいもの

(当然、来年からは 5. 財団の批判をしたもの という項目が加わるでしょうね。)


 主催者の批判をしたら、その団体が主催する催しに出演できないということは、私的な性格の主催者ならまだしも、財団は、市の全額出資で設立された外郭団体です。事業補助金が約3億円、施設管理依託費が約7億円、毎年市から出資されています。それは全て市民の税金です。

さて、「おえん」に対する不参加決定の公的な文章は、7月15日付けの理事長名で届きました。全文掲載すると、

倉敷演劇フェスティバル2003参加の不許可について、

このことについて、参加申込をいただきましたが、内部で検討しました結果、演目「ラッキイラブ」の内容が倉敷演劇フェスティバル2003にふさわしくないとの結論に達しましたので、参加を不許可といたします。 

とあり、不参加の理由などには触れていません。過去不参加とされた団体はこの通知だけで納得していたのかというくらい素っ気無いものでした。なお、その後の調べで財団は「おえん」をあらかじめ除外した上で、残りの希望団体に対する抽選で参加団体を決定したことが明らかになりました。

また、「おえん」が求めていた「不参加決定の選考過程と理由」については、財団事業課F氏の名前で文章が届きました。全文掲載します。


 前略                                
 誰が、どういう形で、いつ、このことを決めたのか文章で示せとのことですが、市役所同様に、文書主義ですので、決定は起案に基づき、決裁により確定したことになります。
 もちろん、それまでに協議をしたり、打ち合わせをしたりして起案する訳ですが、この協議過程を文章でお示しすることは出来ません。こういった過程は、文書として記録しておりませんし、義務付けられてもおりません。 
この件に限らず、事業の執行については、随時、必要な折に打ち合わせや、協議、相談など担当者、上司など必要な人員で行い、起案、決裁、施行という形になります。
 この件については、7月4日が起案日、8日が決裁日、施行日が15日の藤川さんに電話連絡した日ということになります。
 以上のようなことで、御理解ください。

倉敷市文化振興財団  事業課 F      02/07/15 到着


御理解できません。 日本語としても理解不能な上(文書主義といいつつ、記録文書はないという)、地方の文化行政に関わる者の認識の甘さ、低さ。いかにも我々が文化を提供するのだという傲慢さに満ちた文章であるのは勿論、「おえん」が要求したことに何一つ答えていません。

そこで、これを受けて「おえん」は再度、財団に具体的回答を要求しました。

1. 参加基準には「脚本」については触れていないのに、特定の団体のみ審査するのは事前検閲に等しいと考えるが、見解は?

2. HPに掲載されたシナリオは映画「おえん」のシナリオであり、演劇「おえん」の脚本とは異なる。従って、不参加決定の判断には錯誤があると考えるが、見解は?

3. 内容が過激というのは、具体的にはどの箇所で、どう過激なのか?

4. 「おえん」の企画は参加基準のどこに抵触するのか?

財団からの回答は次の通りです。


 倉敷演劇フェスティバル2003にふさわしくないとの内容について
 電話でもお話しましたように、演目「ラッキイラブ」の前段部分に、文化振興財団や市に対する批判が入っているということです。           
「・‥財団の目的であるはずの「倉敷発の文化の創造」にはほど遠い、理念のない事業内容。営利会社がやるような興行の如き音楽会や芝居公演ばかりである‥・」
「‥・市長と財団はもみ消そうとしていた‥・」
「…財団は腐敗しきっている。文化を食い物にして・・文化の振興の足を引っ張っている文化不在団。泥棒振興財団である.‥・」            
「‥・財団は、中央官僚と同じ強権的で傲慢な秘密主義とお上意識。その事に彼ら(出向職員)は気付いてさえいない。」
など、財団が公演会場を提供し、経費の一部を助成する倉敷演劇フェスティパル2003にはふさわしくないということです。ご理解ください。 

倉敷市文化振興財団  事業課 F   02/07/22 到着


資料 財団の腐った体質の数々

詳細については、インターネット上「倉敷・財団・横領」のキーワードで検索可能です。

また、劇団「おえん」関連のHPで御覧になれます。ここをCLICK

 8年3月 チケット売上金約75万円が財団事務所から紛失。警察に届けず、別のチケット代金で穴埋め。

 7年9月 人間国宝展でチケット委託先の倒産により183万円の未収金が発生。帳簿に記載せず前事務局長らが個人負担で納入。

 6年7月〜8年10月  チケット販売手数料など計84万円を帳簿に乗らない「裏口座」に。名刺印刷代などに拠出。

10年3月 倉敷音楽祭で現金12万円を盗まれた出演者3人に同額を楽器賃貸料として支出。

  最低5年以上の保存が義務づけられている四〜七年度伝票を紛失。

  財団客員アドバイザーの個人事務所主催の東京での音楽公演に事前計画書なしに協賛金450万円を支出。

  同アドバイザーが代表の倉敷音楽祭のグループに契約書に経費内訳のないまま9年度950万円を支出。

10年4月 財団主幹が企業から振り込まれたチケット代673万円を着服。上司がこれに気づいたにもかかわらず、半年ちかく市に届けず。それに加えて、旅費252万円も着服が判明。


「おえん」としては、問いかけ1.2.並びに4.に対しては回答がないため、引き続きその回答を求めるとともに、新たな項目を加えて交渉に臨みました。

5. 批判されたとして財団が挙げている四項目について、財団は事実無根と考えているか、それとも事実だが、市民にそんなことを言われる筋合いはないと考えているのか?

さて、財団の答えは・・・


 最初からお話していますように,ホームページ上で見た「ラッキィラブ」によって、4つの例示をさせていただきました.
 文化振興財団になって不祥事のあったことは事実ですが、それをもって財団のそれまでやってきたことがすべて否定されるものではないと思っており、これを転機に改革を行い、文化都市倉敷にふさわしい財団になるよう努力しております。
 したがって、4つの例示が事実かどうかということを議論するものではなくて、財団が主催する事業の中で、ここまで批判されるものをしていただくわけにはいかないということで先の文書において「ふさわしくない」と表現しております。

 以上ですので、よろしくお願いします。

倉敷市文化振興財団  事業課 F 02/08/01到着


これでは質問の答えになっていないので、更に

6. 財団の言う改革とは具体的にどのようなものか?

と問いかけましたが、財団からまだ返事は届いていません。
ちなみに、「おえん」は以前より「演劇部門についての提案」として、財団の事業企画に対する提案を行っておりますが、これにも返事がないようです。

「おえん」をめぐるこの問題は「表現の自由」に関わる重要な問題だと考えます。

財団を批判するものは、財団主催の催しには参加できないのは当然。という考えは、鈴木宗男氏の「外務省を批判する者は、外務省主催の会議に出るな」というのと同じ事ではないのでしょうか?
この意見が大手を振ってまかり通るなら、「政府を批判する者は、日本から出ていけ」という理屈さえ正当性を持ってしまわないでしょうか?

表現の過程で何かを批判することが、恣意的に妨げられる状況。

これは、もしかして地方都市では当たり前のことなのでしょうか?

それとも演劇の世界では当たり前のことでしょうか?

事実、東京のある劇団主催者 H氏は、「問題点がわかりません」と言う前提の下で、当事者でありませんので、コメントできませんと「おえん」の問いかけに答えてきました。

現在「おえん」は財団との交渉を継続して行っています。

ここで、明確にしておかねばならないのは、この問題は「おえん」に文章を寄せた、財団職員F氏の個人的な資質とか、見解によるものではなく、財団の総意として「おえん」に伝えられているということです。事実、今まで何度か「おえん」と財団との話し合いがもたれていますが、その席には財団の幹部も同席しています。もっとも、彼等は都合が悪くなると黙ってしまうので、さほど進展は見られないようですが・・・。

財団の理事長に面会を求めても「財団としての対応は事務局から申し上げている通りです」からと面会拒否を続けています。倉敷市の財団でありながら、理事長は岡山県立美術館(所在岡山市)の館長を兼務しており、以前別の問題で面会を求めた折にも「面会希望者は岡山まで来て下さい」という態度でした。

さらに、一度フェスティバルへの参加が認められた団体が、財団の説明会に10分遅れただけで、参加取り消しになっていることも判明しました。説明会は平日水曜日の午後6時半から開かれていました。アマチュアである以上、劇団の代表は平日には別の仕事をしているということすら、財団は理解していません。

文化芸術振興基本法が制定され、文化庁が地方を題材にした映画に対して、資金援助を行うと言う新聞報道もありましたが、少なくとも、こういった問題がクリアにならない限り、地方の文化振興などと言うものが、所詮は絵に描いた餅にはなりはしないかという危惧だけが残ります。

「おえん」の問題は引き続き、進展がありましたら報告します。

また、この問題に関しまして、御意見、御感想などございましたら、

boken@mx1.tiki.ne.jp

まで、お寄せ下さい。


参考資料

1. 倉敷演劇フェスティパル2003 募集要項 内容

2. 劇団「おえん」からのアピール

3. 倉敷市文化振興財団の事業企画についての「おえん」からの提言


「劇団おえん」から、表現者へ宛ててのメッセージ

「批判するものは参加させない」と倉敷の文化振興財団・やっぱり外務省より悪質。鈴木宗男と同じではないか。

<ご意見をお願いします>

 私たち市民劇団「おえん」と「倉敷で新しい映画をつくる会」のメンバーは、5年前から倉敷市文化振興財団の改革に、忍耐強く取り組んできています。
(文化財団は、市の全額出資で設立された財団法人としての外郭団体。事業補助金が約3億円、施設管理依託費が約7億円、毎年市から出資されています。)
 地域(コミュニテイ)の新しいあり方を考えた町づくりの視点もふまえて、文化(行政)と市民社会のあり方を、市と市民に問いかけています。
 そのことをテーマの一つに、映画と演劇で『ラッキィラブ』という作品をつくっています。新しい演劇の創造を目指した市民劇団「おえん」は(アピール文をご参照下さい)『ラッキイラブ』をもって文化財団主催の本年度の演劇フエスティバルに参加を申し込みました。幅広く市民に知ってもらいたいのと、フェスティバルの改革をやりたいと思ったからです。学芸会、カラオケ大会風ではなく、倉敷独自の、理念のある、演劇市民のためのものにしたいと一
 ところが一担当責任者がHPで今回上演する演劇の戯曲ではなく、映画のシナリオを読んで、電話で参加を拒否してきました。財団や市への批判が入っているので、財団主催のフエスティバルにはふさわしくないと。(この経過は記録しています)
 選考過程とその理由を文章で教えてくれ、市民に情報開示してくれと申し込むと、別紙の回答。財団は参加拒否の理由を説明しようとしない。

1. フェスティバルの参加基準(別紙)に違反していません.(参加基準も問題あり)
2. HPで見た内容を選考の材料にするのは事前検閲になるのではないか?たとえ法的に問題がなくても、市民社会のルールに反する。
3. 出演不許可は表現の自由を侵すのでは?他の方法で発表することは無論可能だが、それは別問題。

 お忙しいところを本当にすみませんが、以上の3つの問題点についてのご意見と文化財団が『ラッキィラブ』の参加を拒否したことについてのご意見をお聞かせ願えませんか?
 財団が問題にしている財団批判の部分は、ビデオ作品『おえん!』こんな市長はおえりやあせん・20分)にしていますので、もしよろしければVHSテープを送らせていただきます。『おえん!』は『ラッキイラブ』の序章でもあります。

                         2002年8月

劇団おえん  eiga-oen@mx1.tiki.ne.jp