旅行記 その2 スウェーデンでHIV対策の素早さに驚き!

ヨーロッパ人権の旅にいざ 

 8月20日朝、7時20分、成田空港の集合場所には、まだ誰も来ていなかった。 私とTさんが、ピンクの旅行のしおりを出していると、リュックを背負った60歳くらいの男性が声をかけてきた。長崎から来た山川さんとおっしゃる方だった。やがて、ピンクのしおりが目印になって、つぎつぎ旅行のメンバーが集まってきた。みんなは、しおりの旅行団員名簿でお互いの住所と名前を確認しあった。全国から、どんな人たちが来るのだろうか。楽しみだ。

同室希望者          

 ヨーロッパ行きを私は2〜3人の友人に声を掛けたが、みんな何かしらの理由でだめだった。職場の仲良しのTさんには、旅行申し込みのコピーまで渡していたが、「海外は初めて」「飛行機も初めて」「心臓病がある」「頭痛持ちである」というのを聞いていたので、彼女も無理だろうとあきらめていた。ところが、Tさんは「一大決心をした!」と言って、翌日すぐ参加表明をしたのだ。私は、旅行申込用紙の宿泊欄に、「同室希望者なし」と、もう書き込んでいたので、あわてて訂正した。「心臓がしんぱいだったのね。だいじょうぶ?」と言うと、「大変な決心が要ったのはね、実は夜、うるさかったら申し訳ないと思って・・・。」 なーーんだ、いびきが心配だったのか。「よかったわ。私と同じ悩みで。私も、知らない人が同室だったら遠慮だから、友人を誘っていたのよ。」 というわけで、ふたりの悩みは一挙に解決。私たちふたりは、さっそうと成田空港に降り立ったのである。

主催者側の人々

 やがて川田悦子さんと龍平君たち主催者側の人も集まり、みんなで自己紹介をした。この旅行は「川田龍平と人権アクティビストの会」が主催で、「龍平君を支える会」や性教育の団体(性教協)にも参加を募ったという。 旅行団の団長は、日本の性教育のオーソリティーで、性教育専門誌の編集長で人権アクティビストの会の事務局長のY氏である。60代で銀髪にカーボーイハットの精力的な方である。 龍平君は血友病特有の出血で足の関節に血がたまって痛むらしく、杖をついての参加である。彼は旅行中、公共の場所では、そこに用意されている車椅子を使っていた。(ひそかに、各国の福祉を車椅子サービスで比較していたらしい。) 26名をのせたルフトハンザ航空機は成田空港を飛び立った。最初の訪問国はスウェーデンである。

(下の写真はスウェーデンのストックホルムの街角に立つ川田さん親子)  

レインボーフラッグ

 8月21日私たちはストックホルムのガムラ・スタン通りの街角に立っていた。 まるで16世紀か17世紀で時がとまったような町並みだ。石造りの建物は丈夫で、ほんとうに16世紀のものが、ところどころ残っている。古い建物に並べて後から建設した建物は全部高さや形、色合いを古いものに合わせている。はでな看板もない。

 ギルドハウスや教会が四方に並ぶ広場で、むこうに見えるカフェテラスに七色に塗り分けられた美しい旗がぶらさげてあった。龍平君が見つけて、「レインボーフラッグだね。ニューヨークでもたくさん見たよ。」と言った。たずねると、同性愛者のしるしらしい。確かに、カフェテラスのテーブルに男同士の二人連れが、幸せそうに談笑していた。

「ノアの方舟」赤十字財団 (エイズ支援団体)

 最初の研修場所「ノアの方舟」は、商店街のにぎやかな通りにあった。看板もなく、見過ごすような小さな入り口を入り、階段を登ると上は広かった。ノアの方舟の創設者のひとりの、ヤン・オルフ・モルフェルト医師がにこやかに迎えてくれた。ヤン医師のお話から。

 1982年 にスウェーデン最初のエイズ(HIV)患者が発見された。最初は男性同性愛者が多かった。やがて麻薬患者・輸血した人・血友病患者にとあっという間に広がっていった。

 無知から、また恐怖から、感染者への差別・偏見が生まれる。間違った情報が社会にあふれた。

 個別に対応に追われていたヤン医師たち民間の医師は、組織を創って対応する必要性を感じ、自分たちで小さな組織をつくった。やがてそれは・・・。

 1986年「ノアの方舟」赤十字財団設立、と発展する。たった4年後だ。国から・・・60%、赤十字から・・・15%、ノアの収入から・・25%で支える財団ができた。

 ノアの方舟は、病院ではない。HIV患者と家族を精神的に支えるところだ。また正しいHIVの知識を広め、感染が広がるのを防いだり、患者への不当な差別が起きないようにするところだ。

 日本での最初のHIV患者は血友病患者で1983年に発見され、1985年に死亡、その事実を日本の厚生省はひた隠しにし、何の対応もしなかった。日本では今でも、HIV対策にノアの方舟にあたるようなメンタルケアの場所がない。

 私は、ここで現在進行形のHIV感染について、また血友病患者のHIV感染など、恐ろしい事実を知らされる。次回をお楽しみに

 

川田悦子さんからの連絡

 「7月4日(日)夜9:00〜テレビ、NHKスペシャルで「薬害エイズ」が放映されます。是非ご覧ください。またご感想もお寄せください。(Fax 042-342-2712) 」

「昨年3月6日東大退官記念講演で、郡司氏に抗議した際、「話し合い」が約束されました。その後多くの人の前で真実を話して欲しいと、その方法を探ってきました。今回それが実現し、テレビでの放映となりました。スタジオでの収録は16時間におよびましたが、それがどのように編集されたのか、内容は知らされておりません。真実をあきらかにしたいと願う被害者の思いを知って欲しいと思います。」 とのことです。

皆さんはごらんになりましたか?それは厚生省の課長であった郡司氏と、川田龍平さんの対談形式ですすみました。私は大変ショックでした。感想をごらんください。 

急増するHIV感染症