吸引戦隊カービィファイブ
〜アドファン、お待たせしました!〜
ある日、カービィ達が買出しから帰って来た時のことでした。
「アドちゃん、ジョー。ただいまー。」
「あ゛ーっ!?ナッシー、POW使うなら、使うって言ってよ!」
「お前も敵だろーが。」
「だって、ナッシー強すぎるんだもの。あっ、何でこのステージでメテオスマッシュが決められるのよっ!」
「穴があるから出来て当然じゃねーか。」
「あっ、バトル終了みたい。・・・撃墜数58〜〜!?5分バトルで1:9のハンデつけて、3人相手のチーム戦で何でそんなにふっ飛ばせれるのよっ!オマケにナッシー、一回も落っこちてないし。」
「攻撃自体くらってねーよ。ダメージ0%だぜ。スマブラをやり込んでるなら、こんぐらい出来て当然だ。振動パックのせいで微妙な操作ミスがかなりあったな。まだまだ練習しねーと。」
「わー、ジョーすごーい。幕張行けばよかったのに。」
「発売日前のソフトが賞品なら、行く気がすんだけどな・・・」
「ナッシー、リターンマッチよ!」
「またかよ。あきらめな。お前の腕じゃ勝てねーよ。俺、ゲーセンに行って来る。」
「あっ、勝ち逃げ!?ナッシー、ずるーい!」
「この餅とでもバトルしてろ。」
そう言い残して、ナックルジョーはカービィの家から出ていってしまいました。
「あーっ、もー、くやしぃぃーっ!」
「だってさ、ジョーは1日ゲームを10時間してるんだよ。」
「げっ、10時間!?カーくん、それホント?」
「うん、本人が言ったんだもん。最低10時間だって。それよりさ、アドちゃん、いっしょにスマブラしよ。」
「もういい・・・5時間続けてしてたから・・・」
「5時間もして、1回も勝てなかったの?」
「そうよ!悪い!?もーっ、勝ち逃げなんてしないでよぉーっ!」
「だってさ、引き分けてもサドンデスで決着つけるから、絶対どっちかが勝ち逃げになるんじゃ・・・」
「うるっさいわね!黙っててよ!」
「アドちゃん・・・首、しめないで・・・ぐえぇ・・・」
「ナッシーのばかーっ!」
片手でカービィの足をつかんでぶんぶん振り回します。
「や、やめてよ。アドちゃん落ち着いて。かびくん回してどーすんのさ。」
「あぁぁ・・・ボクの家の壁がくるくる回ってる・・・」
「カビちゃん、しっかりして!回ってるのはカビちゃんの方だよ!」
「アドちゃんを大人しくさせるには、どーしたら・・・」
「ほしりん、ボクいい事思いついたよ。歌を歌えば楽しい気分になって落ち着くんじゃない?」
「いいね。じゃ、みんなで「静かな湖畔」でも輪唱しようか。」
しばらくして、お風呂のタイルを石鹸入れでひっかくより凄まじい歌声が聞こえてきました。
「今度歌ったら、全員の口を針と糸で縫いつけるわよ。」
「アドちゃん、やっぱりジョーに似てきたねぇ。」
「なんですって!?」
「アドちゃん・・・お腹を締め付けないで・・・苦しい・・・」
「カビちゃん、そーゆーことはね、思っても言っちゃだめ。心の奥底のカレーなべの中に入れて、トロトロ煮溶かしちゃうの。」
「ムーくん、わけわかんないよ。」
「でもさぁ、何でアドちゃん、ジョーと仲悪いの?」
「言うことやること気にくわないのよ!」
「すごい理由だね。」
「それだけじゃないわよっ!何か頼んでもすぐゲーム関係の物をあげないと動かないし、自分の気に入らない事言われたりされたりすると、暴力振るうし・・・」
「でもさ、ジョーってかっこいいじゃない。ダークマターを一蹴りでのしちゃったし。」
「それ以上に性格が悪いのよ、せーいーかーくーがぁぁーっ!」
カービィの両頬をつかみ、左右に引き伸ばします。
「ひたたたた、やめへほ、ハドひゃ〜ん。」
「カビちゃん、口の中にカレー流し込んでもいい?面白そー。」
「あっ、いいねー。きびりん、やってみてよ。」
みんなぞろぞろとカービィの前に並びます。
「みんはーっ、なはんでみへんじゃなひっ!」
カービィは一生懸命叫びましたが、何を言っているのかみんな気づきませんでした。カレーの味が、カービィの口の中いっぱいに広がります。
「むわぁぁっ!?」
カービィは必死でアドの手を振りほどきます。伸ばされた頬がいきおいよく戻り、ゼリーの様にふにゃふにゃと揺れます。
「げほげほげほっ、あー・・・鼻から出そう・・・」
「カーくん、鼻あったっけ?」
「それはともかくさ、ジョーと仲良くなりたいって思わないの?」
「カーくんのやりとり見てると、なりたく思わないわね。」
「もったいないじゃないのさ。せっかく近くにいるんだから、仲良くならないと。」
「カーくん、なんかさ・・・くっつけようとしてない?」
「えぇっ、そ、そ、そ、そーんなことはしてないよ。ジョーとアドちゃんくっつけようとするのは、水と油を混ぜるより難しいよ。」
「カビちゃーん、どっちが油?」
「ジョーでしょ。火気厳禁。あはははは。」
「やっぱり、くっつけようとしてるでしょ・・・」
「64コントローラーに振動パックでもつけるのか?」
アドの背後にいきなりナックルジョーが立っていました。
「どっ、どこから出てくるのよっ!」
「ゲーセンから出てきた。客があまりいなかったから、しばらくしてから行く。」
「あ、そうそう。ジョーはアドちゃんと仲良くなりたいとは思わないの?」
「何かメリットがあるのか?そいつと仲良くなると。」
「ナッシー、人をプロバイダの様に言わないでよ!」
「アドちゃん、『ぷろばーだ』って何?」
「損になる奴とはつきあわないってのが常識だろ。」
「ねぇねぇ、『ぷろばーだ』ってなんなのさぁ。」
「やっぱりあんたと話してるとイライラしてくるわ・・・」
「ねぇってばぁ、教えてよぅ。」
「すぐ怒るのは精神構造が単純な証拠だ。」
「ねぇ、アドちゃーん。」
「あんたもすぐ怒るでしょー!」
「ジョーでもいいや。ねぇ、ジョー。」
「てめーは、ただわめき散らすだけだろ。」
「誰か教えてよぅ・・・」
「暴力ふるうのと、どこが違うってのよ!この、パイナップル頭!」
「ねぇ、『ぷろばーだ』ってなんなのさぁ。」
「あんだと!?トマト顔!」
「とっ・・・トマト顔〜〜!?」
しびれを切らしたカービィが叫びます。
「ねぇってばさぁーっ!」
「うるさい!」
カービィは、アドとナックルジョーから、「うるさい」の二重唱をぶつけられてびくっとしました。その後5秒ほどほうけます。
「・・・教えてくれたって・・・いいじゃないかぁ・・・うぇぇぇぇぇん・・・」
泣き出してしまいました。
「あー、カビちゃん。よしよし。カレーでも食べて元気出して。」
いつの間にか、キービィはカレーをお皿に盛っていました。福神漬けまであります。
「カレーなんかいらないよぉぉ・・・うぇぇぇぇん・・・」
キービィの頭のすみで、「ぷちっ」という音がしました。
「カレー「なんか」・・・?・・・カレーを侮辱すんなぁぁ!食べろっつってんのぉー!食べなきゃ、カビちゃんをカレーの中に入れて、じーっくり煮込んで、一晩寝かせてやるぅ!」
「キービィも怒ったぁぁ・・・うぇぇぇん・・・」
「きびりんがキレるのはけっこー珍しいね。ほしりん、ビデオカメラ持って来てー。」
「おっけー。あ、あった、あった。はぁぁーい。ポポくん、こっち向いてにっこり笑ってー。題名は『キービィ 怒りのカレー』ってのはどう?」
カービィはいきなり泣きやみました。
「あっ、ビデオ撮ってんの?かわいく撮ってね。スプーンくわえるとかわいいかな。ジョーも入る?・・・あれ?」
ナックルジョーの姿はなく、アドが一人で叫んでいました。
「帰ってくんなーっ!」
カービィはおそるおそるアドに話しかけます。
「ア・・・アドちゃん・・・ジョーは?」
「またゲーセンに行ったわよ。」
「えーっ、せっかくビデオ撮ってんのにぃ。」
「あーゆー奴は撮られるのを嫌がるんじゃない?」
「そうだ、ビデオはさ、こっそりグーイの目の中に仕込んどいて戦闘時のジョー撮らない?この前のスピンキック撮れなかったからさ。」
「撮るのは次の次よ。」
カービィ達は全員「え?」という表情でアドを見ます。
「アドちゃん、何で?」
「ナッシーに今度の敵は私が倒すって言ったのよ。そしたら「じゃあ、俺は一切手を出さないからな。」だって。」
「えぇぇぇっ!?アドちゃんが戦うのぉ!?」
「なによ、私はクラウディパークのボスなのよ。あいつはたかが元敵キャラじゃない。」
「・・・不安だよねぇ。」
「うん。」
「文句あるの?」
「いえいえっ、そーんなことはございませんっ!」
5人とも、まったく同じセリフを口にします。10秒ほど後、ソービィがぼそっと言いました。
「こーゆー時に限ってさ、反則的な早さで敵が来るよね・・・」
「ソービィ・・・そーゆーことを言わないでよ・・・」
そう言ってカービィは、そっと窓から外を見ました。ジャストな感じでダークマターと目が合います。
「・・・・・・あはは。敵だよぅーっ!」
「えーっ、マジ!?」
「マジマジ!」
「何でかびくん、顔を赤らめてるの?」
「何の心の準備もしてない時に目が合ったら、相手は誰であろーと赤くなるじゃない!ね、うめぼっち。」
「何でボクにふるの?」
「そんなことはどーでもいいから、カーくん達はグーイを用意して。私が敵を弱らせとくから。」
「ジョーを呼んどこ。」
「たまには私に見せ場を取らせてよ!3〜5話では全然出番なかったんだから!」
「うん・・・」
カービィ達がグーイの所へ行ったを見届けると、アドはキャンバスを抱えて外に出ました。
「前の様にはならないからね!ステージボスの実力を見せてあげるから!」