吸引戦隊カービィファイブ
〜アドちゃんが戦うのぉ!?〜
前回の荒くれたあらすじ
はあぁーい。カービィだよん。うーん、そろそろ「荒」がつく言葉がなくなってきたなぁ・・・あ、こっちの話だから気にしないでね。
えーとね、前のお話を簡単に言うとね、アドちゃんがダークマターと戦おうとしてるの。ジョーがいないのにだよ。無茶だよねぇ。前に乗り移られたから色々恨みがあるのかなぁ?
・・・ちなみにボクとダークマターは別になんの関係もないからね。ホントだよ。ちょっと顔を赤くしただけじゃないかぁ。信じてよぉぉーっ!
「見てなさいよー・・・」
アドはそう言うと、どこからかキャンバスを取り出しました。
「んー・・・何描こうかなぁ・・・」
すると、いきなりダークマターが体当たりをしかけてきました。
「きゃーっ!?」
間一髪それをかわすとキャンバスを抱えて近くの森の中に逃げ込みました。
「そっ・・・そうよね・・・いくらなんでも絵が描き上がるまで待ってくれるはずないもんね・・・そんなことしたのはカーくんだけ・・・カーくん・・・バカだったのかなぁ?」
何やらぶつぶつ言いながらでも、ちゃんと絵を描いています。
「がんばって、クラッコ!」
キャンバスに描かれたクラッコの絵が実体化します。クラッコは森から出て、ダークマターの正面に行きました。そして、電撃を出そうとしましたが・・・
ぎろっ
ダークマターがブラジルにいても日本に届くぐらいの殺気を込めてクラッコをにらみつけます。5秒ほど経って、クラッコはアドの所へ戻ってきました。
「何戻ってきてんのよっ!ちゃんと戦って!・・・・・・・・・あ。」
すぐ横にダークマターがいました。ダークマターの目の周りにはバチバチと黒い電撃が発生しています。
「えー・・・・・・と・・・・・・・・・・・・きゃーっ!」
黒いビームが森に向かって発射されます。かなりの量の木がなぎ倒されました。
「ぅわっ、アドちゃん、大丈夫!?」
ようやくグーイがやって来ました。
「アドちゃん、アドちゃん、アドちゃん、どこ?ねぇ、アドちゃーん。」
「あ、かびりん、前、前!煙のとこ。」
木がなぎ倒された時に大量に舞い上がった砂埃の中からクラッコが出てきました。背中(?)にアドがしがみついてます。
「あー・・・死ぬかと思った・・・」
「無事だったんだね。よかったぁ。・・・やっぱりさ、アドちゃんだけじゃ無理なんじゃない?」
「うるさいわね!今回は私が倒すってことにしたんだから!」
「それはわかってるよ。実際に攻撃して倒すのはアドちゃんで、ジョーにはアドバイスだけしてもらうってことにはいかないの?普通に絵を描いて攻撃しようとしてもさ、ダークマターとアドちゃんの絵の大きさは全然違うでしょ?かなうわけないよ。でもさ、ジョーならそのくらいの差を埋めて相手を倒すような攻撃の仕方を考え出すんじゃないかなぁ?ハンデ1のプリンで、ハンデ9のドンキー2匹が仲間のアドちゃんを無傷で倒すくらいだから・・・。ね、意地張っててもしょうがないよ。それが原因で死にたくはないでしょ?」
「ソービィが何か難しいこと言ってる。」
「カレーのスパイスの調合法のことじゃないことは確かだけど・・・」
「みんなはだまってて。ねぇ、アドちゃん。ジョーを呼んできてよ。」
「呼んできてもいいわよ。でもあいつにざっと説明して「わかった。」とか言って素直に来てくれる奴だと思う?今、ゲーセンにいるし、「俺には関係ない。」とか言って追い返されるのがオチよ。」
すると、カービィが「はぁーい」と言いながら手を挙げました。
「何?カーくん。」
「その点は大丈夫。ゲームソフトをあげるって言ったら簡単に来てくれるよ。」
「かびりんがさ、あーいってるんだから大丈夫だよ。じゃ、アドちゃん頼んだよ。左によけて!」
ダークマターがまた体当たりをしてきました。動きの早いクラッコはきれいにかわしましたが、グーイは直撃を食らいました。
「きゃーっ!・・・いたた。」
「ちょ・・・ちょっと、カーくん達大丈夫!?」
ダークマターは体勢を立て直した後、アドの方を向きました。目の周りにあの黒い電撃が発生します。
「グーイ、舌!」
いつもからは想像できない様な速さで、グーイの舌が動き、ダークマターの目に張り付きます。
「よーし、押さえたよ。」
「グーイは素早さはないけど、力はあるからね。アドちゃん、今のうち、今のうち!」
「わかった、まかせて!」
勢いよくその場から離れます。アドは、しばらく真面目な表情をしていましたが、はっとした様な表情になり、こう言いました。
「・・・どこのゲーセンにいるのよ・・・」
「うわーっ、強すぎるぅーっ!」
あるゲーセンで、一つの台のとこだけ異常に人口密度が高まっていました。
「さっきから何時間プレイしてんだ?」
「つーより・・・これで何連勝目だ?150は軽く越えてるぞ・・・」
「ここね!」
自動ドアが開くのを待っていられない様な勢いでアドが店内に駆け込んできました。
「えーと、どこの台よ・・・」
「敵でも来たのか?」
ナックルジョーが画面から目を離さないまま言いました。
「・・・」
アドは無言で近寄りました。
「・・・ナッシー、出番よ。」
「今回、俺の出番はなかったんじゃないのか?」
「急に出来たの!カーくん達じゃそんなに長くは保たないわよ。」
「あいつらがどーなろーと、俺の知ったことか。」
「好きなゲームソフトあげるから!」
「・・・今199人抜きだ。」
「は?」
はじめてナックルジョーが画面から目を離しました。
「ナッシー、画面から目を離して大丈夫なの!?おまけにレバーからも手を離してるけど・・・」
「本当にやり込んでる奴なら、このくらいは出来て当然だ。それより、この数字の意味をわかってるな?200の一歩手前だ。たとえ、発売日前のソフトでも、俺はここから動かねーからな。」
「力ずくで連れてくわよ。」
「・・・俺をここから引きずりおろしてみろ。てめーの両眼くりぬいて口の中に押し込んでやる。」
「おどしのつもり?そんなウソにはひっかからな・・・」
「俺はゲーム関係では絶対ウソをついたり卑怯な真似をしたりはしない。」
「今200人目みたいだからすぐ終わるわよね。その勝負に勝ったら来てくれるでしょ?」
本当にレバーを使わず、ボタンだけで勝ってしまいました。
「200人達成ね。じゃあ行くわよ。」
「よーし、300人目指して・・・」
ばきぃっ
アドが筆で、ナックルジョーの後頭部を殴りつけます。
「いってーな!技の攻撃力忘れるだろ!」
「あんた、何回勝ったら気がすむのよ!」
「閉店時間までやる。」
「・・・もー、付き合っていられないわ・・・あんたなんかいなくても勝ってみせるから!」
「そのセリフはもう聞いた。」
アドは、どかどかと足音を響かせながら、店から出ていきました。
「さ、201人目はどいつだ?」
「ナッシーのバカ、バカ、バカ、バカ、バカ、バカ、バカ、バカ、バカ、バカ、バカ、バカ、バカ」
ゲーセンから出てからずいぶんたちますが、まだぶつぶつと呪文の様につぶやいています。背中の上で「バカ」の連発を聞かされて、クラッコはすでに、うんざりとした表情になってます。表情といっても、目だけですが・・・
「私はステージのボスなんだからねーっ!敵の一匹や二匹倒してみせるんだから!」
カービィの家の所まで戻ってきました。まだグーイはがんばってダークマターを押さえてます。アドは、ダークマターの真上に行きました。
「クラッコ、雷!」
クラッコはダークマターに雷を落としますが、やはり大きさが全然違うので効いていません。ダークマターは後ろの鱗の様な物をアドやグーイに向かって飛ばします。グーイは衝撃に耐えられず、ダークマターを放してしまいました。
「あーっ!?せっかく押さえてたのにぃ!」
クラッコは素早さをいかしてそれをよけましたが、相手は軌道を変えて追いかけてきます。
「コクラッコ!」
クラッコの体から、小さなクラッコが2,3匹出てきました。しかし、撃墜することも、押さえつけることもできませんでした。クラッコはかわしきれずにかすってしまいました。
「きゃっ!」
そのままバランスを崩して、なぎ倒された木の上に落ちます。
「いたたた・・・」
「何やってんだ?お前は。」
ナックルジョーがすぐ横にいました。
「えっ!?何でナッシーがここにいるの!?・・・さすがに目がもたなかったとか。」
「俺は十分大丈夫だったんだけどな。台がもたなかった。」
「は?」
そのころゲーセンでは。
「・・・誰だーっ!ここの台のレバー折った奴はーっ!」
「・・・レバーを根本からへし折ったぁ!?」
「へし折ったんじゃない。へし折れたんだ。やわな作りだな。せっかく、237人までいってたのに・・・やる気がうせたんでこっちに来てやった。」
「あんた、何するかわかんないわね・・・」
「それより、何だ?今の戦い方は。お前本当にボスか?無理矢理攻撃すればいいってもんじゃねーぞ。」
「だって、だってぇ・・・怖かったんだもん〜〜っ!死んじゃうかと思ったぁ〜〜〜・・・」
泣き出してしまいました。ナックルジョーはため息をつきました。
「・・・好きなソフトをやるって言ったよな。」
「ん?」
「オ*ガバトル64で手を打ってやる。」
「ダークマター倒してくれるの?」
「ふざけるな。アドバイスだけだ。あいつを倒す場合、ソフト程度じゃだめだな。HAL研をよこせ。」
「じゃ、アドバイスだけでいいわよ。あいつの長所の素早さ、何とかならない?」
「・・・ドンキーにあのパワーとリーチの長さがあるのはなぜだ?」
「・・・はぁ?何言ってんのよ。ちゃんとアドバイスを・・・」
「答えろ。」
「・・・わかったわよ。スピードのなさを補うためでしょ。」
「カービィの素早さは?」
「逆にパワー不足とリーチの短さを補うために・・・え・・・もしかして・・・」
「長所を『優れている所』と考えるな。『弱点を補っている所』と考えろ。」
「・・・アドバイスしてくれるのはいいけど、まわりくどいわよ。」
「文句言うな。考え方の基本から教えてやったんだ。・・・じゃあ、あいつの『弱点』は?」
「え、いきなり言われても・・・」
「相手の体型をよく考えてみろ。」
「・・・丸い体に目が一つ・・・・・・・・・・・・・・・視界が異常に狭い!?相手を視界に入れるためには、なるべく素早く動かなきゃならないもんね。」
「視界が狭いことからさらにわかる弱点は?」
「死角が多い!おそらく、自分の体がほとんど全部視界に入ってないはずよ!」
「後は言わなくてもわかるな。」
「うん。一匹で攻撃してもだめ。大勢で死角に潜り込んで攻撃しなきゃ。でも、このキャンバスにはそれほど多くは一度に描けないし・・・。相手に倒されるより速く描けるもの・・・あ!」
そのころ、ダークマターはグーイ相手に戦っていました。グーイはそれほど素早くないので、楽に勝てるだろうと思っていました。すると、後ろにぽこんという衝撃を受けました。振り向くと、小さなピンクの球体が・・・
「あっ、何でボクがいるの!?」
次々と森からカービィが出てきます。
「5秒で描ける簡素なでざい〜ん。カーくん、描き易すぎ。」
アドは、すごい勢いでカービィを描き上げていきます。あっという間にダークマターはカービィで埋め尽くされてしまいました。
「カーくん、今よ!」
「グーイ、食べちゃってぇ。」
ダークマターはグーイの口の中へ消えていきました。
「終わったみてーだな。」
「ちょっと、ちょっと。」
「何だ?」
「ありがと、ナックルジョー。」
「・・・呼び方違うぞ。また乗り移られたんじゃねーか?」
「うるさいわね・・・さっきのだけよ、まともに呼んであげるのは。・・・ところで、私勝ったのよね?」
「お前はこの結果を『負け』だと思うのか?勝ったに決まってるだろ。」
「きゃーっ、やったぁーっ!」
筆とキャンバスを置いて、くるくると回ります。回り終わると、ナックルジョーの腕をつかんで引っ張ります。
「ナッシー、ついてきて〜♪」
「おい、引っ張るな。」
腕をつかんだまま、近くの川にダイビングします。
だぼーん・・・
「ぶはっ、げほげほっ。あー・・・鼻いてー・・・何すんだよ、お前!」
「きゃーっ、私って、水もしたたるいい女〜♪」
「それが言いたいためだけに・・・飛び込んだのか?」
「そうよ。」
「俺を巻き込むな!」
「ちょっとぐらい付き合ってくれたっていいじゃない。」
「ここの川が浅くてよかったぜ・・・」
「深かったら何か困るの?」
「別にお前は知らなくていい。」
「ふーん、ま、いいや。勝った、勝った。勝ったのよーっ!」
「負けた・・・」
TV画面には青色のリボンをしたプリンが大きく写っています。
「えーっ、何でーっ?何でそんなに強いのよ!」
「うるせーな。お前が弱いだけだ。」
「ナッシー、リターンマッチ!」
「アドちゃーん、今度はほら、はちみつ君。まだちょっと中身残ってたんだけどね。」
びんの中では、ダークマターがはちみつまみれになっています。
「今度こそ勝ってやるんだからーっ!」
その後、6時間しましたが、アドは一度も勝てませんでした。