吸引戦隊カービィファイブ
〜ボクはカービィ・・・だよねぇ?〜
それは、あまりにも突然な出来事でした。
「カビちゃーん、ブラックペッパー取ってぇー。」
キービィがなべの中のカレーをかき回しながらカービィに言いました。
「えー・・・と・・・ブラックペッパー・・・どこだっけ・・・」
色々なびんがごちゃごちゃと積まれたところをあさります。
「カーくん、気をつけてよ。ダークマターが入ってるびんも混ざってるんだから。」
「わかってるよぉ。」
がちゃん
砕けたびんのラベルには、「海苔佃煮」と書かれていました。
「・・・・・・」
「・・・あはー・・・割っちゃった♪」
ウインクします。アドとナックルジョーが青筋浮かべながら、同時にカービィにつかみかかりました。二人のストレートパンチがカービィの顔面に入る瞬間、びんの山の中から黒いもやの様なものが飛び出してきました。外からは、カービィの家の窓から、黒い光が吹き出すのが見えました。
「なっ・・・何があったのさぁ!」
キービィが慌てて台所から出てきます。
「きびくん、きびくん!あのねあのね、びんが、がちゃんの、黒が、ぶわーっの、二人の息が、ぴったりの・・・」
がこんっ
キービィがおたまでくさもっちの頭を殴りつけます。
「落ち着かんかい、くさもっちゃん!・・・で、何があったのぉ?」
「きびくん・・・痛くて、怖い・・・」
「さっさと話してよぉ。」
「うーん・・・簡単に言うと・・・『ある午後に びんが砕けて 黒光り』・・・こんな感じ。」
「ソーちゃん、話して。」
「あのね、かびりんがね、つくだに君が入ったびんを割っちゃったんだ。そしたらね、黒い光がかびりんと、近くにいたジョーとアドちゃんにぶつかったの。」
「光がぶつかる?」
「だってホントにそんな感じだったんだもん。で、3人とも倒れてる。」
「わっ、じゃあ、早く起こさなきゃ。アドちゃんが一番心配だなぁ・・・弱いし。」
キービィ達でアドの頭を揺すります。
「アドちゃん、起きて起きて。」
今度はぽこぽこと頭を叩きます。
「アドちゃん、アドちゃん。」
すると、いきなりアドが起きあがりました。
「うるせーっ、耳元でごちゃごちゃ騒ぐな!」
「ぅわっ、アドちゃん目つき悪くなってる。」
「はぁ?アド?お前ら、俺を誰だと・・・」
5秒ほど沈黙が支配します。
「・・・そのしゃべり方からしてさ・・・もしかして、ジョー?」
アドは近くにあったびんをつかむと、自分の顔を写しました。
「・・・アドの顔だ・・・あの目玉・・・復活したてで、乗り移る力がなかったんで、精神入れ替えていきやがったな・・・」
「やっぱりジョーだね。」
「・・・待てよ。俺の精神がアドに入ってるってことは・・・」
カービィの体を押しのけ、自分の体の肩をつかんで、前後に揺らします。
「起きろーっ!」
ぱちっと目を開けます。
「・・・あれ?ぅわ、アドちゃん?またダークマターに乗り移られたの?目つきわるー・・・」
「カビちゃんの顔になってる・・・」
「・・・餅か・・・・・・・・・目尻を上げろ!女々しいしゃべり方をするなぁっ!!」
「・・・ぅわっ、ボク、ジョーになってるぅ!」
「女々しいしゃべり方をするなっつってんだろっ!一人称は「俺」を使えーっ!」
「・・・てことは、かびりんの体にアドちゃんだね。」
「よかったねぇ、ジョー。かびくんで。アドちゃんだったら、きっとおもしろ・・・大変なことになってたよ。不幸中の幸い。」
「言うな。活字にするだけで、鳥肌がたつ。」
「きゃーっ!何で私、カーくんになってんのぉ!」
「アドちゃんが起きたよ。」
「私の体はっ!?・・・目つき悪くなってるぅぅーっ!ナッシーね!」
「とりあえず、これからどーするかを考えねーとな。」
「ナッシー、片膝立てて座らないでーっ!スカートはいてんのよーっ!」
「ボク、ジョーになってるんだよ。金髪だよ、金髪。腕も脚も耳もあるんだよ。かっこいー。」
「うるせーっ!意味もないことでわめくなーっ!・・・家の外に出るぞ。目玉がこの家の中にいないってことは、外にいると決まってるからな。」
「ナッシー、私の体で、そんな悪い目つきして出ていかないでよ!」
「知るか。」
そう言って、アド・・・ややこしくなるので、ナックルジョーと表記しましょう・・・ナックルジョーは外に出ました。読みが当たりました。そんなに近くにはいませんでしたが、視野の中をふわふわと浮いてます。
「ちっ、いつもだったらあのくらいの高さまで跳べるんだがな。」
「キーくん達だったら、あの高さまで飛べるんじゃない?」
「素早さがねーだろ。あの高さにいくまでに、逃げられるな。」
すると、野原の向こうから、誰かがやってきました。
「アドちゃーん、遊びに来たぞー。」
「あっ、デデのだんな!」
「カービィ、お前にそう呼ばれる筋合いはないぞ。アドちゃん、いっしょにスマブラでも・・・ぅわっ、しばらく見ない間に、目つきが悪くなったな・・・何かの病気か?」
「お前こそ、顔が病気にかかってるんじゃねーか?」
片手でデデデ大王の襟首をつかみます。
「言葉遣いも行動も悪くなってしまって・・・何かあったのなら、話してくれ。」
「デデのだんな!私がアドよ!アド!」
「カービィ、何ふざけてんだ?」
そうこうしてるまに、上空のダークマターがデデデ大王めがけて、かなりの速さで降りてきました。そのまま、衝突します。デデデ大王の周りに、衝撃波がはしり、ナックルジョーとアドは後ろに吹き飛ばされました。ナックルジョーはうまく受け身をとりましたが、アドはそのまま転がっていきました。
「きゃーっ!カーくんの体、動きづらい〜っ!」
「何やってんだ、あいつは。」
「ジョー、デデデ大王、どーなったの?」
「目玉は乗り移った奴を操る力は、まだ回復してねーはずだ。だが、乗り移られた奴には、影響が少し出るんじゃねーか?」
「えっ・・・それって・・・」
デデデ大王がゆっくりと起きあがります。
「・・・何だか、邪悪なことをしたい気分に・・・」
「あぁ・・・あーなっちゃうんだね。」
「邪悪なこと・・・アドちゃんをさらうっ!」
デデデ大王は事情を知りませんから、ナックルジョーに抱きつきます。
「てめー、ファルコンまがいなことしてんじゃねーっ!」
「さー、デデデ城に行くぞー。」
「放せ!この、ペンダック!」
「ペンダック?」
「あー、わかったぁ。デデデ大王、ペンギンとアヒルを掛け合わせたよーだから・・・」
「やめてー、デデのだんな!私の体、勝手に持ってかないでーっ!」
「ジョーはボクのヘルパーなんだから、持っていっちゃダメーっ!」
「女々しいしゃべり方をするなーっ!」
「カービィ!アドちゃんを返してほしくば、わしの城まで来るんだな!」
デデデ大王はナックルジョーをつかんだまま、「ははは・・・」と笑いながら、走り去っていきました。残されたカービィ達は、呆然とします。
「デデデ大王・・・やること、古くさーっ!」
「どーすんのよっ、私の体ーっ!」
「アドちゃんの体、ナヨいから、ジョー、相手殴ったり蹴ったりできないね。」
「私の体であんな格闘されたら、骨が折れちゃう〜っ!・・・カーくん、行くわよ!」
「えっ、どこに?」
「デデデ城に!私の体を取り返すんだから!カーくん、今一応ナッシーなんだから、少しぐらい格闘できるでしょ!」
「それがさ・・・ジョーの体、視線が高くて動きにくい・・・」
「ごちゃごちゃ言わないの!キーくん達はグーイでやって来て!」
「わかったぁ。アドちゃん、がんばってぇー。」
アドとカービィは、デデデ大王の後を走って追いかけていきました。
「つくだに君を入れるびんを用意しなきゃ!新しい海苔佃煮のびん、あけるよー。」
「急いで中身食べちゃお!」
キービィがカレーを持ってきました。ご飯の上に、4等分された海苔佃煮をかけます。
「つくだにカレー!佃煮とカレーをいっしょに味わえるお得な一品だよ!さ、食べて食べて!」
くさもっち達は、ため息をつきながら、食べ始めました。