吸引戦隊カービィファイブ
〜10話記念特別編〜

 


「祝10話!と、ゆーことで、ボク達は温泉に行くことになりました〜♪たまにはさ、ゆーっくりと湯船につかってのんびりしたいよね♪」

「カビちゃん、誰に話しかけてんの?」

「そーゆーつっこみはやめよーね、キービィ。・・・ところでさ、ジョー連れてきた?」

「無理矢理連れてきたよ。」

思い切り不機嫌そーな表情をしたナックルジョーが立っています。

「・・・まだ朝の9時じゃねーか。俺は寒い日にはいつも昼まで布団の中でゲームボーイすると決めてんだよ。くだらない用事で呼んだんじゃねーだろーな?」

カービィはキービィに近寄り、小声で話しかけます。

「・・・キービィ。何て言って、来てもらったのさ。」

「すごー・・・・・・・・・く、大事な用事だよって。」

「そりゃ、大事だけどさ、ジョーにとったら温泉なんかどーでもいいことなんだよ!そーゆーこと言って、後で痛い思いするのはボクなんだからー!」

「は?温泉?・・・どーでもいいな、そんなこと。」

「あぁぁぁぁあぁぁ・・・やっぱりぃぃー・・・」

「ふふふ・・・かびりん、ボクにまかせて。」

「ソービィ!何かいいアイデアでも?」

「ボクらが今から行くのは、温泉のある旅館なんだ。そーゆー旅館には大抵・・・ゲームコーナーがある!」

「ついて行ってやってもいいぞ。」

「おー・・・ころっと変わった・・・」

「ソーちゃん、やるねぃ♪」

すると、アドが走ってきました。

「みんなー、グーイの調整終わったよ。」

「グーイで行くのか?」

「グーイも連れていってあげなきゃ、可哀想でしょ。グーイも温泉に行きたいはずよ。」

「でもさ、アドちゃん、グーイってロボでしょ?」

「ふふっ・・・頭脳はモノホンのグーイなのよ。」

「え・・・?」

「本来、人工頭脳を入れる所にグーイの脳を接続し、まわりに元気ドリンクをひたして栄養を与えているのよ!」

「えーっ!?」

「アド、俺の言った冗談をホントに実行したのか?」

「ジョー、そんなこと言わないでよ!」

「どー聞いても冗談にしか聞こえねーから、実行はしねーだろーと思ってたんだがな。」

「ジョーが言ったら本気にしか聞こえないよ!」

「アドちゃん、ウソだよね!?」

「ウソよ、ウソ。そーんなことしないって。グーイの性格をコピーした人工頭脳を使ってるの。」

「・・・あぁ・・・よかった・・・」

「元気ドリンクはホントだからね。入れたら燃料として使えちゃったんで・・・変な物を入れないでよ!ちょっとした刺激で暴走するかもしれないから。」

「は・・・話がずれてきたんじゃない?そろそろ出発しよーよ・・・」

うめぼっちが困った様な表情で話しかけます。

「そーだねぇ。じゃ、行って来まーす♪」

「カビちゃん・・・誰に話しかけてんの?」

「つっこまないでって・・・」

 

「温泉に着きましたー♪」

「おぉー、すごーい!湯気だらけ!みんなしてカレー作ってんのかなぁ!?」

「え?きびくん、ボクはお客さんからダシとって、ラーメン作ってるとこって聞いたけど?」

「もちりん、それは違うと思うなー。この広さなら、おでんじゃない?」

「みそ汁でもいいよねー♪」

「・・・はい、そのへんで終わりにしましょ。温泉はそーゆーとこじゃないの。大きな岩のお風呂なの。」

「なーんだ、つまんないなー・・・」

「湯の中にゼラチン入れたら面白いと思わないか?」

「ナッシー、余計なことを言うんじゃないっ!・・・さっさと行きましょ・・・」

しばらくして、カービィ達は温泉の入り口の前までやって来ました。

「じゃ、カーくん、温泉出た後にトランプでもして遊ぼーねー♪」

カービィはアドの方へ走って行きます。

「ボク、男でも女でもないから!ご一緒させていただきます!ジョー、温泉出た後にトランプでもして遊ぼーねー♪」

がづんっ

アドがカービィの後頭部を殴りつけます。

「いったー、何するのさ、アドちゃん!」

「そのセリフ、そっくり返すわよ。カーくんは男湯に決まってるでしょーっ!」

「・・・ちぇ」

「何か言った?」

アドはカービィの両手をつかみ、左右におもいきり引き延ばします。

「いたた・・・いたいたた・・・・・・痛い、痛い、痛い!ごめんなさぁぁーいっ!」

「・・・じゃ、カビちゃん、ボク達は先にお風呂に入っとくから。」

「今日って、お客さんはボク達ぐらいなんだって。貸し切り状態らしいよ♪」

「ぃやーっ、待ってーっ、助けてぇぇーっ!」

だだっぴろい廊下にカービィの声が響き渡りました。

 

「あー、痛かった。・・・キービィ、ほっていくなんて、ひどくない?」

「何でボクだけに言うのさ。」

「・・・それより、ジョーは?」

「先に入っちゃったよ。」

「温泉って、泳いでもよかったっけ?」

「・・・話題をごろごろ変えないでよ。」

「わぁーお♪凄い湯気ー♪」

「・・・ついには無視?ま、いーや。カビちゃーん、いっしょにシャボン玉作って遊ぼー♪」

温泉はかなり広く、カービィの家が軽く入ってしまうくらいあります。

「ねぇねぇ、ジョー。」

「何だよ。」

「どーして、お湯が白く濁ってんの?」

「俺が知るか。」

「じゃー何で、ジョー、肩まですっぽりお湯につかってんの?」

「何期待してんだ?てめーは。」

どこに隠し持っていたのかは知りませんが、ナックルジョーはシャンプーを取り出すと、カービィの口の中へドボドボと入れました。

「やめて、やめてーっ!」

しゃべるたびに、カービィの口の中からシャボン玉が飛び出します。

「おっ、カビちゃん、さっそく遊んでるねぃ♪」

「どっちかとゆーと、遊ばれてるんだけど・・・」

くさもっち達は、別の所で遊んでいます。

「めぼくん、洗面器の中に入って♪」

「・・・何するつもり?」

「湯船につけて・・・そぅーれぃ♪」

くるくると洗面器を回します。

「きゃーっ、やめて、やめて!目がまわ・・・まわ・・・」

くるくる回りながら進んでいきました。そして、お湯が出ている所にぶつかり、転覆します。

「ほしりん、撃沈ー♪」

「ふわぁぁぁ・・・目がまわったぁぁ・・・ババロアの上を歩いてるみたひぃ・・・」

うめぼっちは2,3歩ふらふら歩くと、ぼしゃんとお湯に倒れました。

「ほーら、5歩以上歩けなかったでしょ。もちりん、賭けはボクの勝ちだね♪後でジュースおごってよ♪」

「じゃー今度はさ、かびくんときびくん、どっちが廊下を腹でより長い距離滑れるか賭けよ♪」

「いいね♪かびりん、きびりん、お風呂あがって、廊下に行こー。」

「もうあがるの?」

「いーじゃない、カビちゃん♪面白そーだよ。廊下をすべるんだって。スパイシーな遊びだと思わない?」

「どんな遊びなの、それ。・・・いーけど。ジョーはまだ出ないの?」

「勝手に行ってこいよ、お前ら。」

「あ、そぅ。じゃ、出よ。」

温泉から出ると、カービィ達は、床にタオルを敷き、その上をごろごろと転がります。普通に拭くより、こうした方が早いみたいです。そして、みんなは廊下に出て滑り易そうな所を探しだします。しかし、カービィだけは今出た扉の前でじっとしています。

「カビちゃん、何やってんの?」

「ジョーの体型知りたいと思わない?あとさ、ハチマキの巻き方!時々ハチマキはずすんだけどさ、知らない間に巻いてんだもん。」

「いいねぃ♪ボクはどーやってあの服着るか知りたいんだけど。」

「何2人だけしてこそこそしてんのさぁ。」

5人が一斉に扉の前に群がります。

「やだ、やだ、やめてよぅ。きついじゃない!」

「誰っ、ボクの足踏んだのはっ!」

「何やってんだ、お前ら。」

いきなり背後にナックルジョーが立っていました。

「うぅうわぁぁぁっ!?」

「ジョー、いつの間に出たの!?」

「お前らがのろのろとタオルの上で転がっている間に。」

「奇妙な行動しないでくれる?気配なかったよ。怖いじゃない。」

「知るか。」

「あれ?ジョー、ハチマキは?巻いてないよ。」

「まだ髪が乾いてねーんだ。ドライヤーはどこだ?男湯のは故障してたぞ。」

「じゃあさ、アドちゃんに借りたら?」

「じゃ、借りてくるか。」

スタスタと女湯の方へ歩きだします。

「ちょ・・・ちょちょちょ、ちょっと待った、待った、待った!」

「何だよ。」

「アドちゃん出るまで待ちなよ。」

「俺は髪の毛がしめっているのが嫌いなんだ。」

「アドちゃんとはち合わせしたら、殺されるよ。」

「何で俺が殺されなきゃならねーんだよ。」

「いや・・・あのね・・・」

「常識がないのもほどがあるよ。」

「何やってんの?カーくん達。」

「あっ、アドちゃん!よ・・・よかったぁ・・・」

「何がよかったの?」

「アド、ドライヤー貸せ。」

「ドライヤー?いいわよ。はい。」

ナックルジョーはドライヤーを借りると、男湯の方へ戻っていきました。

「あー・・・ドキドキだった・・・」

「カーくん、何が?」

「な・・・何でもないよ♪ゲームセンター行こ、ゲームセンター!」

カービィ達は、ゲームセンターへ向かって走り出します。

「ねー、何なのよー。」

 

アドが真剣な表情でクレーンを見つめています。クレーンの先には、カービィのぬいぐるみがひっかかっています。

「あと少し、あと少し・・・」

穴の数センチ前でポテンと落ちます。

「あーっ!?また落ちたーっ!」

「アドちゃん、これ読んでる人の中に受験生がいたらどーすんのさ。」

「うるっさいわね!カーくん達だって、廊下で滑ろーとか言ってたくせに!」

「何だ?ぬいぐるみの1つもと取れねーのか?」

「あーっ、ジョー、ハチマキ巻いてる!」

「髪乾いたからな。」

「また結ぶとこを見逃したーっ!くーっ・・・」

カービィは、敵に負けた時にも見たことがないほど悔しそうな顔をします。

「あーっ、また落ちたーっ!カーくんのバカーっ!」

「ぬいぐるみのモデルがボクだからって、それはないんじゃない?」

「カーくん、何で落ちるのよっ!」

「ボクのせいじゃないよ!」

ナックルジョーがアドの頭にカービィのぬいぐるみを投げつけます。

「?ナッシー、これどしたの?」

「今取った。」

「取ってくれたのぉ?きゃーっ、ありがとーっ!」

「200円。」

「は?」

「200円払え。」

「これ100円で取ったんでしょ?」

「ああ。」

「何で200円なのよ。」

「手数料。」

「何よそれーっ!」

「1000円使って何も取れないより、200円払って取ってもらった方が得だろ?」

「・・・それもそーね。じゃ、今度はコックカワサキ取って、カワサキ!」

「先に200円払え。」

「わーぉ♪カビちゃーん、「すりぃせぶん」だよ、ほらほら♪じゃらじゃらじゃらー♪カレーの神様、ありがとう♪」

「神様のおかげなの?」

「アクセルに足が届かないよぉー・・・」

「お客様。あなた様にはこのレースゲームは無理かと・・・」

それぞれ楽しい時間を過ごしていますが、黒い雲が少しずつ近づいてきていました。


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