吸引戦隊カービィファイブ
〜眠いのにバトル?〜

 

前回の荒立ったあらすじ

はあぁーい♪カービィだよん。えーと・・・あ、前回のあらすじを言うんだったね。10話記念として、みんなで温泉に行ったんだ。・・・他に言うことがないなぁ・・・とりあえず、今回ぐらいはバトルはないよね。・・・ない・・・よ・・・ねぇ?

 


「お布団敷くよー。」

キービィが無理矢理一番下の布団を引っ張ります。

「きびくん、そーっと取らないと・・・」

案の定、押入に入っていた布団が、キービィとくさもっちの上にどさどさと落ちてきます。

「わーぉ♪凄ーい。グリーンペッパーのよーな刺激だねぃ♪もっかいやろ。」

反対側の押入の布団も同じ要領で取り出します。今度はソービィとうめぼっちを巻き込みます。

「・・・ぷはぁっ!何すんのさ、ムーくん!」

「面白いじゃないのさぁ♪あはははは♪」

「そんなことやってないで、お布団敷かなきゃ。きびりん、当初の目的忘れてるでしょ。どっかのだれかじゃあるまいし・・・」

カービィはみんなにどの場所がいいかを聞いてまわってます。

「俺は壁際がいい。」

「えーっ、何でーっ!?」

「人に囲まれるのは好きじゃねーんだ。」

「私はここー。窓の前。寝ながらスケッチできるから。5階の景色っていいわねぇ♪」

「えーっ、じゃーアドちゃん、ジョーの隣をとっちゃうじゃない!ボク、ジョーの隣がいいの!」

「アド、お前、寝相悪そーだから、どっか別の場所にしろよ。」

「あんたがどっかへ行きなさいよーっ!」

「・・・」

ナックルジョーは素早く布団の中へ潜ってしまいました。

「あっ、・・・に・・・逃げやがったわね・・・ナッシー、あんた、別の壁際に行きなさいよーっ!」

「今さら冷えた布団に入るのはいやだ。」

「・・・もーいいわよ。こーなったら、意地でも窓の前にいるっ!」

アドも布団をかぶってしまいました。カービィはしばらくぼーぜんと見ていましたが、はっとした様に言いました。

「・・・結局、損したのはボクじゃない!アドちゃん、スケッチはどしたのさ!・・・いーよ・・・キービィ、隣いい?」

「カビちゃん、何か寂しげだねぃ♪」

「楽しそうに言わないで・・・」

カービィは哀愁を漂わせながら布団に潜りました。

 

真夜中。アドが目を覚ましました。

「・・ナッシー、ナッシー。」

「・・・何だよ。」

「のど乾いた。」

「自販機の前まで行ってこい。」

「1人じゃ怖いのよ!」

「餅についていってもらえ。」

「カーくんじゃ、何か起きても頼りになんないのよ。」

「何か起きても、俺はお前を助ける気なんてないからな。」

「それはわかってるわよ。何か起きたらナッシーを無理矢理巻き込むつもりだから。そしたら、いやでも助ける形になるでしょ?」

「・・・俺までのど乾いてきたじゃねーか。自販機まで行ってくる。」

「やった、『とにかくしゃべらせて、のどを乾かす作戦』成功ね!」

「・・・今考えついたんだろ・・・結果オーライと言い直せ。」

ナックルジョー、続いてアドが廊下に出ます。奥の方は薄暗くなっていて、よく見えません。

「・・・やっぱり怖い・・・」

「何で暗いと怖いんだよ。」

「幽霊出てきそーじゃない。」

「死んでしまったよーな奴に何ができる。」

「・・・いーわね・・・そこら辺の感情が欠けてる人は・・・あれ、ハチマキしてないの?」

「寝る時や風呂に入る時ぐらいははずす。」

「・・・グローブはしてるけど?」

「風呂とある時以外はどっちかをつけとくんだ。」

「ある時って何、何?」

「お前が知ってどーするんだ。」

「気になるじゃない。教えてよ。」

「当ててみな。」

「・・・ひねくれてるわね・・・」

「何を今さら。・・・着いたぞ。」

暗い廊下に自販機と非常口の明かりだけがあります。

「午後の紅茶にしよー♪」

ガゴンという音を立てて、缶が落ちます。

「あっ、間違えたっ。冷たいの買っちゃった。もう一回。」

今度こそ、温かい紅茶のボタンを押します。

「俺、抹茶ソーダ。」

「げっ、何それ。」

「抹茶味のソーダにつぶあんが入ってるんだ。」

「・・・気持ち悪いわね。」

「お前が飲むわけじゃないから別にいーだろーが。」

「そーだけど・・・」

しばらく沈黙が続いた後、アドがポツリと言いました。

「平和よねー・・・」

「そうか?」

「だって、いつもはダークマターと戦ってるじゃない。たまには敵のことを忘れてのんびりするのも、いーわよねー・・・」

「今、敵のことを忘れてんのか?」

「んー・・・今の発言で思い出しちゃった。今からすーっぱり忘れるわ!」

「いや、思い出したままでいろ。」

「何でよ?」

「この鏡をのぞいてみろ。」

ナックルジョーはどこからか、小さな鏡を取り出すと、頭の上の辺に斜めに掲げ、後ろにある窓の下が見えるようにしました。植え込みの所に、直径60センチほどの黒い球体がいます。

「・・・ダークマター!?」

「まだ、こっちの気配には気づいてないみてーだな。いつもの奴より小さいってことは、俺達に気づかれないよう近づいて、不意打ちを喰らわそうって魂胆か・・・」

「どーすんの?」

「逆にこっちが不意打ちを喰らわせてやろーじゃねーか。」

ナックルジョーはいきなり窓を開けると、缶の残りをどぼどぼとダークマターにかけます。普通のジュースなら、平気ですが、炭酸系なので、ダークマターはかなりひるみました。

「・・・で、どーすんのよ?」

「ギリギリまで引きつけて、カウンターで殴り倒す。」

ダークマターはナックルジョーがいる階まで、一気に飛んできました。ナックルジョーは、後ろへ跳び、窓から離れます。

がしゃんっ

窓ガラスを砕きながら、ダークマターが突進してきました。ナックルジョーは紙一重でかわそうとしました。しかし、いきなりダークマターが3メートルぐらいの大きさになりました。

「ぅわっ!?」

かわしきれずに直撃を喰らいます。ダークマターはナックルジョーに体当たりしたまま、部屋のドア、その部屋の窓ガラスを突き破ります。そして、窓からナックルジョーを放り出しました。近くにつかまる物が何もなく、そのまま落ちていきます。

「ちょ・・・ちょっと!マジ!?ナッシー!」

ダークマターはその部屋から出ると、音を立てずに廊下を移動していきました。アドはガラスがこなごなに破壊された窓を覗き込みます。

「・・・お・・・落ちちゃった・・・?」

次の瞬間、窓からナックルジョーが飛び込んできました。

「きゃーっ!?・・・落ちたんじゃないの?」

「落ちた。」

「・・・ここ5階よ!?何で無事なの!?何で戻ってこれるの!?」

「受け身をとった。猫にもできるだろ?で、跳んで戻ってきた。」

「・・・無茶苦茶ね・・・あ、それより、ダークマターがあっちに行ったんだけど・・・もしかして、カーくん達・・・」

「ああ。向こうは不意打ちを喰らわすつもりだったんだからな。」

「ナッシー、こーゆー状況でも、カーくん達を助ける気はないの?」

「ない。」

「何よそれーっ!ダークマターを倒すぐらいはしなさいよっ!」

「誰が倒さないと言った。」

「え?」

「あいつらを助ける気はないが、あの目玉に仕返しをする気はある。・・・あの目玉・・・よくもこの俺を寒い中に放り出しやがったな・・・氷漬けにしてやる。」

そう言うと、ナックルジョーは廊下に飛び出しました。

「ナッシー、ちょっと待って。置いていかないでよ。」

「めんどくせーな。」

ナックルジョーはアドの首の後ろの襟首をつかみました。そのまま、走ります。部屋の中で眠っていた人達は、呆然と見ていました。

「く・・・苦しい・・・降ろしなさいよ・・・」

「お前の走る速さに合わせてやれるか。置いていかないだけありがたいと思え。」

ちょうど、カービィ達の部屋の前で追いつきます。ナックルジョーはアドを降ろしました。見た目には、放り捨てた様に見えました。

「痛っ!」

「目玉ぁ!」

ナックルジョーはダークマターを両手でつかみ、窓の方へ走ります。

「よくもこの俺を・・・」

窓ガラスを突き破り、外に飛び出します。

「外に放り出しやがったなぁぁっ!」

5階もの高さから、ダークマターをつかんだまま地面にたたきつけます。そこは、ちょうど温泉で、盛大な水(お湯?)しぶきがあがります。

「カーくん達、起きて、起きて!」

「むぅー・・・何ぃ?」

「もー・・・じれったいわね!このっ!」

アドは5人の足をつかむと、廊下に出て走っていきました。

「きゃーっ!?」

 

「・・・ぷはっ!」

ナックルジョーが湯船から顔を出します。近くにはダークマターがプカプカと浮いています。

「・・・後はソーダの能力で氷漬けにするだけか。」

ナックルジョーは温泉から出ようとしました。しかし、気絶していたと思われていたダークマターがぶつかってきました。体半分がお湯につかっているので動きが鈍り、うつぶせにお湯の中に倒れ込みます。

(このっ!)

すぐさま起きあがろうとしますが、ダークマターが押さえ込みます。

(やべっ、溺れるっ!)

すると、上から声がします。

「ビームマシンガンっ!」

「プラズマスパークぅ!」

湯船に電撃がバチバチと流れます。ダークマターはお湯の中から飛び退きました。

「・・・ぷはぁっ、げほげほっ、あー、鼻いてー・・・」

「ジョー、大丈夫?」

ナックルジョーはキービィとくさもっちの頭を押さえつけます。

「てめーら、俺がこの中にいるのに、電撃流しやがったな!」

「た・・・助かったんだから、いーじゃない。」

「後で覚えてろよ。」

アドがソービィを抱えて走り寄ります。

「ナッシー、氷漬けにするんでしょ?はい、これ。」

「アドちゃーん・・・『これ』はないんじゃない?」

「おい、ソーダ、あの目玉を凍らせれるか?」

「ダメージを与える位ならできるけど、氷漬けにするんなら、湯船につけて、お湯ごと凍らせないと・・・」

「隙さえ作れば、氷漬けにできるか?」

「うん。」

「おい、梅干し。」

「梅干しじゃないもーん!」

「俺が合図したら、目玉に向かって火ふきこうげきをしろ。あとの奴らはグーイを連れてこい。・・・アド。」

「何?」

「間違えて買った紅茶があったよな。あれを目玉に投げつけろ。」

「・・・何の役に立つかわかんないけど・・・えいっ!」

アドはダークマターに向かって紅茶の缶を投げつけます。

「今だ、梅干し!」

「火ふきこうげきぃ!」

ダークマターと紅茶の缶が炎に包まれます。炎はたいして効いてません。すると、いきなり紅茶の缶が膨張し、破裂します。ダークマターはアルミの破片と熱湯で一瞬視界を遮られました。

「ソーダ!」

「スクリュードライバぁ!」

ダークマターを湯船の中に沈めます。

「・・・あーんどっ、こちこちブリザードぉ!」

凄まじい冷気が発生し、ダークマターはお湯ごと氷漬けになりました。

「やったぁ、勝ったよ!」

「ナッシー、缶が破裂したのはどーゆーこと?」

「炎の熱気で中身が一気に蒸発し、缶がその圧力に耐えきれなくなったってことだ。」

「こんなに上手にいくの?」

「疑った奴は試してみろ。どーなっても知らねーけど。」

「回りくどいことするわねぇ・・・」

「寒くて動きたくねーからな。」

ソービィとうめぼっちはあきれていました。

 

その頃、グーイでは・・・

「グーイ、起きて、起きて、起きてぇっ!」

「巨大ロボのくせに、熟睡してるよ・・・」

「カビちゃん、くさもっちゃん、ボクにまかせて♪」

そう言うと、キービィは人工頭脳がある所へ走り出します。

「キービィ、何するつもりなの?」

「これね、グリーンペッパーの粉なの。えぇーいっ!」

グーイの燃料の元気ドリンクの中に全部流し込みます。

「あーっ!?何すんのさ、キービィ!変なモノ入れるなってアドちゃんが・・・」

すると、グーイがガタガタと動き出します。カッと目を開きました。

「ほーら、起きた♪」

「・・・」

 

「・・・あいつら、遅いな・・・」

「ホント。グーイが眠り込んでて、なかなか起きてくれないんだったりして。」

「ジョー、アドちゃん!」

「何だよ。」

「何よ?」

「氷が・・・」

ダークマターの回りの氷に無数のひびが入り、砕け散ります。

「やばっ、氷割れちゃったわよ!」

「お待たせーっ、グーイだよーっ!」

旅館の一部をなぎ払いながら、グーイが現れます。ダークマターは、不利だと判断したのか、上空に逃げていきました。

「あっ・・・せっかく来たのに・・・」

「それより・・・何か、ひどい有様じゃない?」

旅館はもちろん、温泉も氷漬け、アルミの破片が飛び散りと、かなりひどいことになっています。

「俺は帰るからな。」

「・・・ボク達も・・・」

「私も・・・」

全員、グーイに乗り込んで、温泉をあとにしました。ごごごごご・・・という音でしたが、こそこそという音の方がふさわしい光景でしょう。

 

一方、ダークマターはどんどん上昇していっています。そして、一気に加速をつけようとしました。しかし、何かに押さえつけられたかの様に止まりました。

「・・・失敗でもしたのぉ?」

(・・・なぜお前がここにいる?)

「えーとね、君の戦いぶりを見に来てたの♪・・・このまま帰る気?」

(・・・もう一度あの方にチャンスをもらう。)

「くれるわけないじゃ〜ん♪おめおめと戻ってくる奴なんかにぃ♪」

(じゃあ、どうしろと?)

「僕の伝言役になってよ♪」

(伝言役?)

「うん♪・・・あの方に伝えて♪『次は僕が行く。』ってね♪」


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