吸引戦隊カービィファイブ
〜・・・あれ、誰?〜

 


「こーんにーちはー♪」

カービィ達はしばらく呆然としました。今まで、あったことがない人が家に入ってきたからです。首からひざの辺まで、袖がない灰色のコートで覆われ、髪の色は白と黒がごちゃごちゃに混ざり、瞳は濃い赤色をしています。

「・・・どちら様でしょう?」

「あ、そっかー♪僕の名前はね、『カイム』だよ♪」

「いや、そーじゃなくて・・・」

「・・・!カビちゃん!」

「何、キービィ?」

「この人・・・目つきが悪くて、髪がある!」

「・・・そうか!」

カービィはジリジリとカイムに近寄ります。

「・・・いい人だ!カービィファイブに入らない?髪の毛のツヤがいい人は無条件で入れるんだ。目つきが悪くてかっこいー人もおっけー♪」

「いやー・・・好かれてもらって、うれしいなー♪」

「こらこら、何やってんのよ、カーくん。他人の家に勝手に入ってくる奴なのよ。追い返さないと。」

今度はアドが近寄ります。

「ちょっと、葬式頭!」

「出た、アドちゃんの『頭シリーズ』!」

「まだこれで、2人目じゃない。」

「そ・・・葬式頭ぁ?・・・あぁ♪白と黒だからかぁー。面白いねぇ♪」

「笑ってんじゃないっ!勝手に入らないでくれる!?」

「勝手じゃないもの。『こんにちは』って言ったもの。」

「うるっさいわねっ!出てけっ!」

「むー・・・君ってさー・・・」

「何よっ!」

「かわいいじゃなぁ〜い♪」

「いい奴よ、カーくん。お茶とお菓子持ってきて。」

「栗タルトがいいなー♪」

「は〜い・・・そーゆーアドちゃん、好きだよ・・・」

「アドってゆーのかー・・・呼びやすくていい名前だねー・・・この家の中見せてくれるぅ?」

「おっけー!」

 

30分後。

「来てやったぜ。」

「やった、ジョー来てくれたんだね。呼んでも来ないかと思った・・・」

「何の用だよ。」

「えーとね・・・何とゆーか・・・その・・・葬式が来たの!」

「誰か死んだのか?えーと、1球、2球・・・5球いるじゃねーか。」

「違う、違うんだ!用事の内容も数える単位も!」

「・・・アドがいないな、あいつが死んだのか。香典なら出さねーからな。」

「違うんだーっ!」

5人で一生懸命説明しました。

「カイム?」

「うん、本人が言ってた。」

「また変な奴が増えたのか・・・」

「またってどーゆー意味?」

「・・・変だな・・・普段いない奴がいたら、気配で気づくはずなんだが・・・」

「またってどーゆー意味さーっ!」

ナックルジョーがカービィを片足で踏みつけます。

「そいつは今どこにいる?」

「アドちゃんがグーイを見せに・・・」

「お前ら、戦闘準備してろ。」

「えっ!?」

「行って来る。」

ナックルジョーはそう言い終わると、グーイの格納庫まで走り出しました。

 

「私が造ったのよ、このグーイ。すごいでしょー!」

注意。造ったと言っても、絵に描いて実体化させただけです。

「すごいねー♪」

「正直者に乾杯っ♪」

どこから出したのか、アドは赤ワインの入ったグラスを頭上に掲げています。

「ここにいるんだな、『カイム』って奴は!」

「あ、ナッシー。」

「ジョー、準備できたよ。」

「ねぇねぇ、ナッシー聞いてよ。こいつ、いい奴なのよ。」

「準備ばーんたーん、だよ。」

「うるせーっ!」

カイムがアドに近づきます。

「これで全員だね?」

「そーだけど・・・」

「よかった、全員そろったんだね♪何人か向こうにいるけど。」

「何がよかったのよ。」

「だあってさー・・・どーせなら、一度に終わらせた方がいいでしょ♪」

「何を?」

「殺すの♪」

「っ!?」

アドとカービィは一気に後ろまで下がります。かわりにナックルジョーが一歩前に出ます。

「1つ質問するぞ。」

「どーぞ♪」

「お前・・・何者だ?」

「・・・にらまなくてもいーじゃない♪僕は『カイム』だよ。邪悪なる者『ダークマター』を統べるお方、『ゼロ』様の分身『カイム』だよ。」

言い終わったと同時に、カイムの視界からナックルジョーの姿が消えました。次の瞬間、ナックルジョーのスピンキックの直撃を喰らいます。格納庫の壁を破壊するぐらいでは止まらず、近くの山にぶつかりました。

「・・・」

アドとカービィは開いた口がふさがらず、呆然と見ています。

「・・・ジョー、いきなり・・・」

「やってくれるわね・・・」

ナックルジョーは格納庫から出て、少し離れた所からカイムに話しかけます。

「本気は出さねーのか?」

カイムは何の攻撃も喰らわなかったかの様に起きあがります。

「君もね♪・・・て、ゆーかー、僕が本気出したらさ、君死んじゃうし♪」

「可能なことだけを口に出せよ。」

「・・・君ならさ、気づいてんじゃないかなー、僕の名前の由来に♪」

「・・・ああ。『気配がない』『ダメージを与えられた様子がない』『ボスの名前の意味は無』『そいつの分身』この4点から考えるに・・・『皆無』だろ?『無に近い』って意味の。」

「当たりー♪分身って言っても、身体を形作っている物質の構造や技が同じって位で、強さはぜーんぜん『あの方』に及ばないけど。・・・でも、ダメだなー♪『気配がない』とわかってるなら、ちゃんと注意しなきゃ♪」

いきなりナックルジョーの首に「何か」がぶつかります。気配が全くと言っていいほどなかったので、身構えることができず、そのまま後ろに倒れます。

「いてっ!」

「何かに首を絞められてる感じがするでしょ?ま、この程度じゃ君は死なないね。・・・安心して♪ウソだから♪」

「何がだ?」

「殺すってこと♪今日は別の用事で来たんだー♪ちょーっとね、返して欲しいモノがあって。」

その頃、戦闘準備をして静まり返っているカービィの家にある音が響きました。

がちゃんっがちゃんっがちゃんっ

「ぅわっ、何、何?」

「あーっ、つくだに君とかんきつ君とはちみつ君のビンが全部棚から落ちて割れてるっ!」

ダークマター達は、窓を突き破ると、カイムの方へ飛んでいきました。

「こいつらを返してもらうよ♪首を絞めてる『何か』のナゾは自分で解いてね♪」

ナックルジョーは起きあがり、首から「何か」を引き剥がします。

「利子払え。」

「えー、返してもらうって言っても、別にぃ、こいつらを貸してたってわけじゃないもの。おまけに逆じゃない。普通は僕に払うんじゃ・・・」

「払え。」

「んー、じゃ、今度来るとき、ヨーカン持ってくるからさ。おみやげ兼利子ってことで♪」

ナックルジョーは腕を前方に突き出し、親指を立て、地面に向けます。

「別にしろ。」

「わかったよ♪ヨーカンとおセンベ持ってくるよ♪」

ようやくカービィとアドがやって来ます。

「ジョー、どーゆーことが起こってたのかは知らないけど、大丈夫?」

「僕そろそろ帰んなきゃ。じゃあ・・・ね♪」

カイムは地面から浮かび上がると、ダークマターを連れそのままどこかへ飛んでいってしまいました。

「ジョー・・・いい人だったでしょ?」

ナックルジョーはまた、片足でカービィを踏みつけました。

 

「ただいま戻りましたー。」

「・・・」

「こいつら、どーします?殺しちゃうんなら、僕に下さいよ♪」

「・・・好きにしろ。」

「やたっ♪ありがとーございますー♪ちょーど・・・」

カイムはダークマター達をにらみつけます。

「お腹、すいてたんですよ♪」

静かな空間にぐちゃぐちゃというハンバーグを作る様な音がします。

「ナカナカねー、面白い連中でしたよ♪殺しちゃうのがもったいないぐらい♪」

黒い液体でベタベタになった口で笑います。

「金髪の奴、いーなー♪あーゆー性格イカす♪」

「・・・」

「やっだなぁー♪心配しないで下さいよぉ。ちゃーんと全員殺しますよ♪」

「・・・」

「やっぱりあなたもそー思います?」

ダークマターの仲間と思えないくらい、明るく笑います。

「楽しくなりそーですよねー、これから♪」

 

「きびりん、びっくりしたね。」

「みんな逃げられちゃった。」

「こーゆーことにならねー様に準備しとけって言ったんだ・・・」

キービィ達は凄まじい殺気を感じます。

「どーなるか・・・わかってんだろーな?」

野原に、悲鳴が響き渡りました。


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