吸引戦隊カービィファイブ
〜VS皆無〜

 

前回の荒だったあらすじ

・・・カイムだけど・・・今、すっごい怒ってんだよね。・・・・・・悪いけど、前回読んでくれる?

(・・・だそーです。タイトル通り、荒だっているので、近づかない方がよいでしょう。一触即発。触るな、危険)

 


ナックルジョーとアドが床に倒れています。2人とも、気絶しているようです。

「・・・」

カイムは、床に押さえつけられたまま、皆無をにらみつけます。

「そのままでいい。私の話を聞け。」

「・・・いヤだね。僕、今すっごい怒ってんだよぉ!」

皆無の手を無理矢理引き剥がします。

「お前の話なんか聞くもんかぁぁっ!」

カイムは、皆無につかみかかろうとします。しかし、きれいにかわされます。逆に、首をつかまれてしまいました。

「ぅわぁっ!?」

「・・・聞けと言っているんだ。」

皆無はそのまま、壁に叩きつける様にして、カイムを再び押さえつけます。

「・・・けほっ・・・」

「むやみに暴れるな。時間の無駄だ。とにかく、聞け。」

「聞かないって言ってるでしょーっ!」

カイムは両手を皆無に向かって飛ばします。

「・・・」

皆無はカイムの両手を、片方の手でつかみ取ってしまいました。

「これが、『逆上』というやつか?攻撃がワンパターンになっているぞ。」

「離せよぉ!」

「・・・別に私がわざわざ離さなくても、逃れる事はできるだろう?私を、一瞬でいいから、『攻撃対象』と思わなければいい。」

「・・・」

「・・・無理のようだな。仲間を倒された事によって、感情のコントロールが鈍り、私を『攻撃対象』以外の者には思えない様になってしまった・・・こんな所か。」

「・・・いちいちうるさいなぁ・・・離せぇ!」

「まず話を聞け。・・・思い直す気はないか?」

「・・・何をさ。」

「ゼロ様を裏切る事をだ。」

「ないね。万が一、今、裏切るのを思い直しても、いつかまた裏切るよ。絶対にね。」

「・・・感情があるせいだろう?それさえなければ、裏切るなどしまい。」

「残念だねぇ。元々、この感情は他人のモノだけど、今はもぅ、僕の一部になってるんだ。この感情を消すなんて、出来ないよ。」

「いや・・・少々荒っぽい方法をとれば、分離は可能だ。」

「・・・え?」

「感情を取り込む時、直接、『核』に同化させなかったようだ。ある程度本体にダメージがあるが、完全に分離出来る。」

「・・・」

「感情と一緒に、その持ち主の『邪悪な物質』もあるな。ダークマター達のエネルギー源に使えそうだ。」

「・・・何だって・・・?」

「この感情の持ち主の『邪悪な物質』は有効に利用させてもらう。」

「・・・君の話を聞いてあげたんだ・・・僕の話も聞いてよ・・・」

「何だ?」

「・・・裏切り者である僕を処分するコトについては、何の文句もない。自然なコトだと思うよ。・・・でも・・・ユーアを悪用するなぁっ!」

皆無につかまれている両手から、赤い物体を飛ばします。皆無は思わず、カイムと、その両手を離します。

「・・・それに、思い直す気はない。僕は・・・感情がなかった、あの頃の僕が嫌いだ。・・・好きな子が死んでも・・・涙1つ流せなかったあの僕なんか、大嫌いだぁぁっ!」

カイムは再び、皆無に向かって手を飛ばします。皆無も手を飛ばします。空中でお互いの両手が相手の手を押さえつけあいます。

「・・・つまらない理由だな。感情がなくなれば、『嫌い』でなくなるのにな。」

「君には絶対わかんないよ。・・・桃くん達が、大技使って倒れた僕を助けた理由知ってる?・・・『僕の歌を聴きたかった』だって。・・・他人を助ける理由や寝返る理由なんて、こんなモノなんだよ!」

「・・・つまり、そいつらに好意を持っているのだな?殺したくなかったと・・・あの2人も同様か?」

「当たり前じゃない。」

「では・・・あいつらがいなくなれば、裏切る理由はなくなるな。」

「え・・・」

「とりあえず、1人消す。聞くぞ。・・・性別が同じ方か?それとも、似ている方か?」

「・・・ユーアのコト、知ってんの?」

「私達の体は、『無』と『邪悪な物質』で構成されている。色々な元素で構成されている普通の生物の記憶を読むより、簡単だろう?・・・もう一度聞く。・・・性別が同じ方か?それとも、似ている方か?」

「・・・やめてよ・・・」

「・・・これ以上は待てんな。・・・私にダメージを与えた、『似ている方』にするか。」

皆無はナックルジョーの方をにらみつけます。皆無の顔の1メートルほど前方に、あの赤い球体が出現します。

「待って!やめてぇ!」

 

(・・・カイム、その人を絶対に死なせないでね。私は・・・もぅ・・・カイムといっしょに見られないから・・・)

 

「・・・今度も死なせて、たまるかぁ!」

カイムは赤い球体の前に出ます。そして、皆無と同様、赤い球体を出現させました。髪の毛の前髪を除いた黒い部分が、凄まじい勢いで消えていきます。赤い球体は、同時に放たれました。

ずがぁんっ

全く互角の力がぶつかり合い、大爆発が起こります。

「ぅわぁっ!?」

カイムは爆風に吹き飛ばされ、後ろに転がります。

「向こうは僕と同じなんだから・・・いくらハイパーゾーン内でも、しばらくは動けないはず・・・その間に、せめてナックルジョーだけでも起きてくれれば・・・」

突然、皆無が煙を突き破って飛び出してきます。

「・・・うそぉ・・・あの技を使った後は、動くことなんか・・・」

「・・・同じ・・・だと・・・?『感情』と言う不純物が混ざっているお前と、私がか?それに、お前は試作品だ。エネルギーの調節すら満足にできない。・・・だが、色々と厄介だ。消えてもらおう。」

皆無の前方に、再び赤い球体が出現します。

「・・・」

「よかったな。仲間が死ぬところを見なくて済むぞ。・・・!?」

皆無はいきなり横へ跳びます。皆無の頭があった場所を、横一文字に包丁の刃が通り過ぎます。

「ちっ。よけるんじゃねーよ。」

「ナックルジョーっ♪」

「貴様・・・もう動けるのか?」

「普通ならまだ動けねーけどな。・・・俺のモットーは『喰らったダメージは1秒でも早く返す』だ。」

「ぅわ〜・・・こめかみから、血が出てるよ〜・・・ハチマキとグローブは?」

「どっちも取った。お前、アドを起こしてこい。」

「おっけー♪だいぶ回復したし・・・何とか動けるよ♪」

カイムはアドの方へ走ります。

「・・・逃がすか。」

「それは、俺のセリフだ。」

ナックルジョーは包丁を持っていない左手で、皆無の頭をつかみます。そのまま、思い切り床に叩きつけました。さらに、包丁を逆手に持ち、皆無の顔面に向かって振り下ろします。

がきぃんっ

包丁の切っ先が、床に当たります。

「・・・よけるなっつっただろーが。」

「ファイターなのに、武器を使うのか?」

「ファイターを直訳すると、『戦う者』だ。格闘だけが、戦法じゃねー。・・・確か、俺を頭から壁に叩きつけたよな。となると、殺し方は・・・『頭を串刺し』・・・だな。」

ナックルジョーは包丁を順手に持ち替えると、あの笑いを浮かべました。

 

「アドちゃん、アドちゃん、起きてよ〜!」

「・・・」

アドは一向に目を覚ましません。

「うーん・・・あ♪・・・アドちゃ〜ん、『ヴァーミリオン』の油絵の具が落ちてるよ♪」

「どこっ!?」

アドはいきなり目を覚まします。

がづんっ

アドは、思いっきり、カイムと頭をぶつけます。

「アドちゃ〜ん・・・いたいぃー・・・」

「どこに落ちてんのよっ!持ってない色なんだから!」

アドはカイムのコートの襟をつかんで、前後にがくがく振り回します。

「やめてっ、やめてっ!ウソ、ウソ、ウソなんだよ〜!」

「はぁー?ウソぉ?あんた今、何月何日だと思ってんのよ。」

「アドちゃんこそ、今、どーゆー状況だと思ってんのぉ?」

「・・・・・・・・・あ!絵を描かなきゃ!・・・いたた・・・何か、おでこが痛い・・・」

アドは、今更、カイムとぶつかった所をさすります。

「・・・おっそいんじゃなーい?」

 

「よけるなっつってんだよ!」

ナックルジョーは皆無に向かって、包丁を振り下ろします。皆無はそれを蹴り飛ばします。包丁は弧を描いて飛び、アドのキャンバスに突き刺さりました。

「きゃ〜!?何すんのよーっ、絵が描けなくなったじゃない!」

「これで、普通の格闘家だな。」

「そう思うのか?」

ナックルジョーはスマッシュパンチの構えをとります。1つ違ったのは、構えた拳の指と指の間に、小型ナイフを全部で6〜7本はさんでいたコトです。

「喰らえっ!」

スマッシュパンチ(ナイフ付き)を皆無の顔面にたたき込みます。そして、すぐさま拳を引っ込めます。盛大な血しぶきが起こりました。

「・・・やっぱり、ナイフじゃいまいちだな。刺した感じがしねー。」

「・・・目つぶしでも狙ったつもりか・・・?」

皆無は顔の血をぬぐいます。ナイフによる刺し傷は、全て消えていました。

「・・・『核』を狙わねーと、ダメみてーだな。」

「ナックルジョーっ、加勢するよーっ♪」

「カイム、あいつを動けなくしろ。解体して『核』を探す。・・・アドはどーした?」

「あぁ、アドちゃんは・・・」

「よくもキャンバス壊してくれたわねーっ!」

アドは、皆無に向かって突進します。

「このぉ!」

筆を振り下ろします。しかし、軽くかわされてしまいました。

「筆なんかで、倒せると思っているのか・・・?」

「思ってないわよ。でも・・・少し動けなくしたわ!」

「何・・・?」

皆無のコートのすそから、アイスドラゴンの上半身が飛び出してきます。アイスドラゴンは、皆無にしがみつき、動きを封じました。

「一瞬だけど、接近した時に、あんたのコートに描かせてもらったわ!さらに、そいつの足は描いてないから、完全には実体化しない・・・つまり、絶対にあんたから離れないってわけよ!」

「・・・ちっ。」

「モノクロぉ!あんたの出番よ!」

「おっけー♪」

カイムの前方に赤い球体が出現します。

「わかってないのか・・・?お前はその技を使う前も後も、動く事は出来ないのだぞ・・・」

皆無の前方にも、赤い球体が出現します。しかし、大きさはカイムが出現させたやつの2倍はあります。

「・・・面倒だからな・・・フルパワーでいかせてもらう。・・・消えろ。」

皆無の赤い球体が放たれました。それは、カイムに向かって一直線に飛んでいきます。

「確かに僕は動けない・・・だけど、イコールよけれないじゃない。」

カイムは、赤い球体を浮かべたまま、横にかわします。そのまま、皆無に向かって突進しました。

「・・・何だと・・・?」

「君の負けだぁ!」

カイムは、皆無に赤い球体を叩きつけました。そして、後方へ跳びます。赤い光の大爆発が起こりました。

「うーん・・・戦隊モノのお約束って感じ?」

「モノクロ、何で動けたの?」

「ぷはっ!」

コートの中から、ナックルジョーが出てきます。

「あー・・・息苦しー・・・」

「・・・なるほど。」

「動けないんなら、動かしてもらえばいいんだよねー♪名付けて、『二人羽織砲』!」

ぼてっ  

カイムは、いきなり仰向けに倒れました。

「最後の言葉が『二人羽織砲』か・・・墓石に刻んどいてやる。」

「ま・・・まだ、死んでない・・・」

「・・・『まだ』な。」

「やめてよー・・・そんな言い方・・・ぅわっ!?」

カイムが、凄い勢いで皆無の方へ引きずられます。そして、皆無の前に押さえつけられました。

「何ぃ!?まだ生きてんのぉ!?しつこいんだよーっ!」

「さっき・・・言っただろう・・・?消えてもらう・・・」

「はぁ!?今の君に何が・・・ぅああっ!?」

カイムの体全体から、黒い電撃がバチバチと放電します。同時にカイムの髪の毛の黒い部分が消えていきます。

「いったーっ、いたたたたぁ!」

「お前の体から・・・『邪悪な物質』を分離させる事ぐらいは出来る。」

アドが頭を抱えて叫んでいます。

「ちょっと、ちょっと、どーすんのよーっ!?ねぇ、ナッシー・・・ナッシー?」

ナックルジョーはアドのキャンバスの前に立っていました。おもむろに、包丁を引っこ抜きます。そして、振り返るとすぐさま、皆無の方へ走り出しました。

「邪魔を・・・するな。」

皆無はもう片方の手をナックルジョーに向かって飛ばします。ナックルジョーは、かわさずにつかみ取りました。包丁を逆手に持ち替えます。

どすっ

皆無の頭に突き刺しました。

「敗者に、ごちゃごちゃ言う権利はない。」

さらに、柄の部分を踏みつけ、深くめり込ませます。

「お前が消えろ。」

皆無の姿が一瞬薄くなり、黒い霧となって消えていきました。包丁の先には、黒いピンポン玉の様な物が突き刺さっています。それは、「パキン」という音を立て、まっぷたつに割れてしまいました。ナックルジョーは、そのまっぷたつに割れた物を拾い上げます。

「これが『核』か・・・」

「モノクロ、モノクロ!」

「・・・」

アドは、また襟をつかんで前後に振り回しています。カイムの髪はほぼ全体が白くなっていました。前髪の先も、灰色になっています。

「どーしよー、これじゃ、回復待ってる間に、消えちゃうわよ!」

「何騒いでんだよ。」

「あんたこそ、何落ち着いてんのよ!」

「今は、騒ぐ状況なのか?」

「当たり前じゃない!元敵だけどねー、寝返った以上、仲間なのよ!?仲間が大変なコトになってんのに、騒がずにいられないわよ!・・・ちょっと、モノクロ!消えるんじゃないわよ!消えちゃダメだからね!」

「・・・確かに、今、戦力が減るのは防いでおきたいな・・・」

ナックルジョーはカイムの口をこじ開けると、無理矢理に「核」を押し込みました。

「・・・何やってんの・・・?」

「黒いから、『核』も一応、『邪悪な物質』なんじゃねーか?」

「あーっ、死ぬかと思ったーっ!」

「きゃーっ!?」

カイムがいきなり起きあがりました。髪の毛がいつもの様に黒と白のごちゃごちゃになっています。

「びっくりするじゃないのーっ!」

「ごっめぇ〜ん♪」

「・・・ふぇぇ・・・」

「あれぇ?アドちゃん、何、泣いてんのぉ?ほらほらー♪僕、大丈夫だって♪」

「・・・大丈夫だったからよー・・・余計な心配させるんじゃないわよぉ・・・この・・・葬式頭ぁ!」

がこんっ

アドはカイムの頭に筆を振り下ろします。そして、振り上げ、また振り下ろします。

がこんっがこんっがこんっがこっがこっがこっがこっがこっ・・・

「いたっ、いた、いた、いた!アドちゃん、やめてぇ!マジで、マジで!頭が割れる!」

「消えちゃうと思ったんだから!消えちゃうと思ったんだから!消えちゃうと思ったんだからぁ!」

「わかったから!わかったから!わかったからぁ!」

「先行くぞー。」

「待って〜、助けてぇー・・・」

カイムの悲鳴が、ハイパーゾーンに響きました。


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