吸引戦隊カービィファイブ
〜夫婦漫才・・・なんて言ったら、しばかれるなぁ〜

 

前回の大王的なあらすじ

大王・・・大王か・・・ふふ。やはり、そーだろぅ。ワシはプププランドの大王!デデデ・・・

さっさとあらすじしゃべりなさい。

・・・ち。えーと、前回のコトだな。カービィ達は、ピラミッドのステージをクリアしたみたいだ。くさもっち達は、ワシと一緒に遺跡のステージをクリア。今度は3球も乗るんじゃないぞ。そしてアドちゃん達は・・・何か、止まっとるみたいだな?強敵でも現れたのか?

 


「・・・モノクロ。」

「ふみゅ〜・・・」

カイムはうずくまって泣いています。

「あんたねぇ・・・無茶苦茶強いんだから、クモぐらいちゃっちゃとやっつけちゃえば・・・」

「やっつけるぅぅっ!?クモをぉぉっ!?」

カイムは勢いよく顔を上げました。驚愕と恐怖の表情がべったりと張り付いています。

「な・・・何よ・・・」

「ぃっやー!それこそ、絶対にしないもの〜!アドちゃん、いーぃ!?もし、僕がクモをやっつけたとするよ!?」

「う・・・うん・・・それで?」

「ひー!僕がクモをやっつけるだってー!いやー、いやー!」

「自分で言っておいて、取り乱してんじゃないわよっ!さっさと言えぇ!」

「やっつけたとするよー!?例えば、赤いのでざくーって感じで。その時さ・・・もし、そのクモのお腹の中にちっちゃいクモの子供がいたら、どーすんの!?うじょうじょこっちにやってくるんだよ!?ンなコトなったら、僕、ショック死するよ!?絶対する!必ずする!間違いなくする〜っ!」

「どーして、そんな突飛な発想をするのよーっ!」

「可能性は『ナキニシモアラズ』でしょーっ!?」

アドは大きなため息をつくと、再びしゃべりだしました。

「じゃ・・・マリエルの上を飛んでいけば・・・」

「ぃーやー!そーれも、いやー!」

「はぁ!?何でよっ!子供は、やってこないわよ!?」

「もし・・・もし・・・クモが僕のトコまでジャンプしてきて・・・しがみつかれて卵でも産み付けられたら・・・ショック死する〜っ!」

どがんっ

アドの筆殴りがカイムの頭にクリーンヒットします。

「どーゆー発想よ、それはぁーっ!」

「だって、だって、『ナキニシモ・・・」

「それは、もーいいっ!」

半ば・・・と言うより、ほとんど漫才状態になりかけている会話を、キービィは退屈そうに見ています。

「・・・ボク、暇ー・・・穴の上まで行って、お山でも作ろ・・・」

キービィはすり鉢状の穴から出て、砂遊びをし始めました。

「お砂がサラサラサラサラ・・・インドのカレーみたい・・・♪・・・砂カレーっておいしいかな・・・」

キービィはどこからか盛り付け済みのカレーを取り出すと、砂を適当にブレンドします。・・・見た目は適当ですが、本人は細心の注意を払ってブレンドしているそうです。

「んー・・・お口の中でじゃりじゃり♪何だか、大自然な感じ・・・♪試食してもらおー♪」

キービィは砂カレーを抱えて、マリエルの所へ持っていきます。

「アドちゃんとカイムは何だか忙しいみたいなんだー。ボクの砂カレー食べる?そーかぁ、食べたいのかぁ♪あーりがとー♪」

キービィは、無理矢理気味にマリエルに砂カレーを勧めます。そして、今、マリエルの口の中に砂カレーが入りました。

ぎゅわぁっ

奇妙な断末魔を発したマリエルは、細い4本の足をピンと伸ばし、そのまま固まってジバサミのいるあり地獄へと転がっていきます。そして、砂の中へずぶずぶ沈み、その姿は完全に見えなくなってしまいました。

「・・・おいしかったー?」

「はぁー!?何がよ、キーくん。」

「うぅん。アドちゃん達には、あんまり関係ないよ。それより、まだ先に進まないのぉ?ここって何だか涼しいよ。カレーは暑い所で食べてこそ、その味が・・・」

「あのねー、進もうにもマリエルが・・・あれ?いなくなってる?」

「マリエルならね、キリキリ舞いしながら、お砂に入っていったの。」

「ホント!?もー、クモはいないんだね!?よかったー♪」

カイムは、ない胸をほっとなで下ろします。

「えーと・・・ここから先は水中みたいね・・・私は普通の人間だから、無理っぽいわねー・・・」

「えっ・・・」

「普通の人間・・・」

「何よ、あんた達。その顔は。」

「普通の人間って、描いた絵をモノホンにできるの?」

「うーるっさいわねっ!とにかく!私は別ルートで外に出るから・・・キーくん、モノクロ。水中頼んだからね。」

アドはちゃきちゃきしゃべっている間に、素早くクラッコを描き上げます。そして、それに乗って飛んでいってしまいました。

「・・・じゃー、高くん、一緒にダイビ〜ングしよ♪」

「うん。・・・何かさー、ボクとカイムのコンビって、『さーいきょ〜っ!』って感じが鷹の爪みたくピリピリこない?」

最強のボケコンビでしょう。

 

「クラッコ、雷!」

どかんっ

クラッコが放った雷は、洞窟の天井の一部分を破壊しました。どさどさと岩の破片や砂が降り注ぎます。

「・・・う〜ん・・・なんか、ポケモントレーナーになった感じね・・・」

しばらくして砂がやみ、薄暗い洞窟に一筋の光が射し込みました。

「ありがと、クラッコ。ちょっと強引だケド、この穴から外に出られるハズ・・・」

アドは穴の下に潜り込むと、砂をわしわしと掻き出しながら、上へ上へと登っていきます。

「・・・・・・ぷはぁっ!・・・きゃー!?まーぶしー!」

暗闇に目が慣れきっていたので、いきなりの直射日光(砂漠バージョン)はかなり堪えたようです。

「・・・・・・んーっ!・・・ダメっ!体、持ち上げらんないっ!・・・あ。」

十数メートル先に、歩いてくるナックルジョーを発見します。

「ナッシー!ナッシー!ちょーっと持ち上げ・・・」

ナックルジョーはどこかの国の人間より無関心に通り過ぎようとします。

「待て、コラぁーっ!やるかと思ってたけど、ホントにやりやがったわねっ!」

アドは、ナックルジョーの無駄に長いハチマキの端をひっつかみます。

「つかむな、てめーっ!」

「文句があるのは私の方よ!無視すんじゃないわよっ!引き上げるまで、離さないんだからっ!」

ナックルジョーは、胸から下が砂に埋まっているアドの姿をまじまじと見ます。

「・・・絵描きに行きづまりでも感じて、モグラに転職したのか?」

「違うーっ!・・・つーか、モグラは職業じゃなーい!」

「・・・そーだな。砂漠だから、ヘビやトカゲの類・・・」

「さっさと引き上げろっつってんのよぉーっ!」

ナックルジョーはハチマキの端をつかんでいるアドの手を振り払うと、低い口調でしゃべります。

「こーゆー時のお決まりのセリフを知っているよな?『人にモノを頼む態度を知らないのか?』」

「・・・う。」

見下ろされてるわ、太陽の逆光で顔に影がかかっているわで、かなり怖いコトになっています。

「・・・あーもーっ!わかったわよーっ!引き上げて下さいぃーっ!どぉ!?これでいいんでしょーがぁっ!」

アドは右手をナックルジョーに差し伸べながら喚きます。

「・・・こんな暑い所でよくそんなに騒げるな・・・」

ナックルジョーはアドの襟首をつかむと、一気に引き上げました。

「ちょっと!人が手ェ出してんのに、何襟首つかんでんのよっ!」

「引き上げてやっただけ・・・」

「『ありがたいと思え。』って言うんでしょーがー!きぃーっ、ムカつくぅーっ!」

「・・・お前、そんなに元気があるなら、自分で登れたんじゃないか?」

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

ナックルジョーとアドは、無言で砂漠を進んでいきます。

「・・・・・・」

「・・・・・・あーっ、もー耐えらんないっ!」

「しきりに『暑い』と言ったり、騒いだりすれば、暑くなくなるってモンじゃ・・・」

「違うわよっ!この雰囲気が耐えらんないの!」

「・・・はぁ?」

「少しは何かしゃべりなさいよ!誰かいるのに会話がない状態とか、ただ単に教室に入っただけなのに、がばっと注目される瞬間とか、大っ嫌いなのよ!」

「・・・この炎天下の中、しゃべれと?・・・冗談じゃねぇ。のどが渇くだろーが。」

「どーせ、こんなに暑いんだから、しゃべんなくても渇くわよ。なら、しゃべっておかないと損でしょ?」

「妙な理論だな。」

「あんたに言われたかないわーっ!」

ナックルジョーは大きくため息を吐き出します。

「・・・砂だらけだな。」

「そーねぇ。」

「・・・・・・」

「・・・・・・はっ?ちょと待った!これで終わり!?」

「だって、他に何をしゃべれっつーんだよ。」

「う、うーん・・・じゃ、怖い話とか・・・」

「この間、久々にポケモンしよーと、ゲームボーイカラーの電源を入れたら・・・」

「あー、待って。確かに別の意味で怖いけど、あっちゅーまに話が終わりそうだわ。・・・うーん・・・他に長い間持ちそうな話は・・・・・・ん!」

アドはナックルジョーの腕を引っ張り、自分の方に向かせます。

「人の腕をいきなり引っ張・・・」

「格闘、教えて!」

「・・・・・・」

ナックルジョーは文字では何とも説明しがたい表情をします。

「何よ、その顔。」

「お前、俺の普通の笑い顔でも見たいのか?」

「冗談で言ったんじゃないわよ。長く持ちそうで、なおかつ、今後役に立ちそうな話よ。んー、私って頭イイ〜♪」

「先行くぞ。」

ナックルジョーはスタスタと歩き出します。

「ちょっとー、教えなさいよ〜。」

「何で命令口調なんだよ。」

「私、女の子だから、素早さはいけてると思うのよね。」

「・・・挫折感を味わいたくないなら、やめとけ。」

「何よ、それ。・・・・・・あんた、10歳よね。てコトは、6、7年コツコツ頑張れば、私もソコソコは・・・」

「そんなにすんのか。」

アドはムっとした表情で言い返しました。

「じゃー、あんたは何年でそこまで出来るよーになったのよ!」

「俺はほとんど何もしてない。」

「・・・はっ?」

「あえて何かしたと言うなら、年上の奴の手本を一度見たぐらいだな・・・」

「・・・ちょちょちょっと待って!・・・じゃ、何!?目の前で何か格闘の技を見せてもらったら、それだけでその技マスターしちゃったの!?」

「まー、そーゆーコトだな。」

「うわっ!何ソレ、すっご頭くる!いわゆる『天才型』!?勉強せずに首席取ってるみたいな!?」

「そーゆーコトになるな。」

「無茶苦茶反感買うわよ、ソレ!」

「お前、漢字を並べすぎだぞ。かなり見苦しい。」

「そんなこたー、どーでもいいのよっ!ムカつくコト、限りなしな感じ!」

「何で、何もせずに実力があるだけでムカつかれなきゃならねーんだよ。」

「うるさいっ!この『出る杭』!打たれちゃえ!」

「逆に打ち返してやるよ。」

「・・・はー・・・あれ?何で歩いてるんだっけ・・・」

「騒ぎすぎて、頭のねじでも飛ばしたのか?カレーとカイムを迎えに行ってやってんだろーが。」

「そうそう。ナンカ、言い方ムカつくけど・・・・・・あ!待って!」

「今度は何だよ。」

アドはクリスタルのかけらを取り出します。わずかですが、輝きが強くなっています。

「この近くのかけらが・・・あ!あの建物!」

アドは高くそびえ立つ塔を指さします。

「いかにもって感じであやしい!」

「そう遠くねーな。・・・行くのか?」

「うん。日陰がありそーだから、休めると思うし。」

ナックルジョーとアドは進路を変更し、塔へと歩いていきました。

 

塔は天井がなく、吹き抜けでしたが、太陽がわずかに傾いているので、塔の内部には影ができていました。塔の中心には、柱がそびえ立っています。かなりの高さです。おそらく、塔と同じだけの高さはあるでしょう。

「あー、涼しー♪・・・でも、クリスタルってドコにあるのかしら。」

アドはその柱にはまるようにしてあるリング状の足場に腰を下ろします。ナックルジョーはその足場に上ります。その瞬間・・・

がこんっ

「きゃっ!?」

足場が塔の上へと上がり始めました。

「何、何!?何よ、この仕掛け!?・・・あ、でも、上へ動くだけなら、そぅ害は・・・」

「動くだけならな・・・」

ナックルジョーは素早く身構えます。視線の先には、1メートルほどの大きさの真っ赤な正八面体が浮いていました。

「なっ・・・何・・・アレ・・・」

正八面体の中心あたりから、平べったい二等辺三角形の様な物体が地面に水平に出現します。

侵入者を確認しました。これより「ピクス」は攻撃モードへ移行します。

ぶんっ

ピクスはその物体でなぎ払うように動きます。

「きゃーっ!?」

アドはとっさに身を低くしてかわします。

がっ

上に跳んでよけたナックルジョーは、ピクスの一番上にある頂点をつかみます。そこを支えにして、身をひねり、ピクスにスピンキックをたたき込みました。

「・・・・・・!」

ナックルジョーは微妙に表情を変え、ピクスから離れました。

「何やってんのよ!ドンドンたたき込んじゃいなさいよ!」

「・・・物理攻撃が効かねぇ・・・」

「え・・・」

「本気で蹴ってみたが、全然ダメージを与えられなかった。・・・となると、俺の攻撃は全部ダメだな。」

「・・・ひっ・・・・・・他人事みたいに言うなぁ〜っ!」


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