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過去ブログ(2012年6月-8月)

2012年8月16日 オンとオフの明確な区別

 

 ボストンは、暑さの峠を越えたようで、上の写真のように紅葉がはじまっています。日本では夏休みが8月過ぎに始まる大学が増えていますが、ハーバード大学では新学期に向けて人が戻り始めています。
 ところで、ハーバード大学は図書館が大変充実しているのですが、夏休み中は原則として5時閉館となるため、館内でしか閲覧できない資料を利用する場合、時間に制約を受けることになります。私はそれを不便だと感じているのですが、アメリカの先生や学生は、休みと研究のオン、オフをきっちり分けているので、大きな不満はないようです。アメリカにおけるオフの充実ぶり(オフへの強い欲求)は、日本と大きく違うところで、それが普段の仕事の効率性や創造性にもいい影響を与えているように思います。オン、オフがきっちり分かれていることで、オンの集中力を高めることができますし、オフがなければ、自分の関心や専門を広げて、その知見をオンの時に生かすこともできません。頭で理解しつつ、それを不便と感じてしまう私は、まだまだ修業が足りないようです。


2012年8月2日 8月16日追記 在インド日本企業における非正規雇用問題

 少し前にインドの某日系自動車メーカーで大きな暴動が発生した。暴動の引き金になった事件については、今後、解明が進んでいくと思うが、 ニューヨーク・タイムズは暴動に関する記事の中で次のような事実を指摘していて興味を引いた。
 暴動のおこった工場の正社員の給与は月18,000ルピー(約2万5千円)で、他社に比べかならずしも見劣りするものではないが、その工場では月7,000ルピー(約1万円)で働く非正規労働者が多数雇用されている。某社の説明によれば、暴動のあった工場には4,700人の労働者がいるが、そのうち正社員は2,000人で、残りは臨時雇用者である。ニューヨーク・タイムズは、これが労使間で大きな対立事項になっていると指摘している。このこと自体は、今回の暴動とは直接の関係はないようであるが、この記事を読んで2つのことを強く考えさせられた。
 ひとつは、90年代後半から日本とアメリカの日系自動車工場では、非正規雇用の活用が飛躍的に進められたが、それが実はインドにまで及んでいたのかということである。日本では、戦後復興の過程で、多数の臨時工が生み出されたが、高度経済成長の過程では臨時工の正社員化が進められていった。企業間競争が激化しているとはいえ、経済成長のさなかにあるインドで、臨時工の増加に理解を得るのははたしてそんなに簡単なことなのだろうかと深く考えさせられた。
 もうひとつは、日本におけるメディア報道についてである。最近少しずつ変わってきているようにも思うが、日本のメディアは欧米メディアと違って、自分たちが取り上げるべきと判断した一方の当事者(今回の場合では企業あるいは現地治安当局)の意見だけを報じる傾向が強いので、日本のメディアだけを見ていると、労組側の主張がまったくわからないし、したがってインドで日系企業の一部が多数の非正規労働者を雇用しているという事実にもまったく気づくことができない。
 以上、日本では、ほとんど論じられていないことのようなので、書いておきます。

8月16日追記
 PTI(インドの通信社)によれば、某社は、8月21日から工場を部分再開すると発表。同社は、暴動にかかわった(疑いのある)正社員500人を解雇するとともに、やはり事件にかかわった(疑いのある)臨時工500人の再雇用をおこなわないことを決めた。
 なおPTIによれば、今後、同工場では需要変動に対応するため20%程度の臨時工を雇用するのを除けば、臨時工の雇用をおこなわない予定
 臨時工の大幅削減は、労使関係の安定に大きな力になると思われるが、今回の事件(の発端)については労使で主張が大きく異なっており、大量解雇は将来に大きな火種を残すことになるかもしれない。
 

2012年7月14日 MITの産業遺産



 ハーバード大学から地下鉄で2駅行ったところにMIT(マサチューセッツ工科大学)があります。MITが紡織工場を再生利用していると聞いて撮ってきたのが上の写真です。なかなかモダンです。
 日本でも、岡山の大原美術館や名古屋の産業技術記念館など、紡織工場の跡を利用した施設はありますが、大学の施設として利用されているというのは聞いたことがありません。MITは、科学技術で世界の最先端をいく大学ですが、同時に、文化や歴史、芸術の探求にも力を入れている大学でもあります。上の建物には、それがよく現れているように思いますが、どうでしょう?


2012年6月8日 誰にとっても住みやすい社会とは

 今日、ボストンの中心街で、たまたま偶然にゲイの方々の権利を訴えるパレード行進(ゲイ・プライド)に遭遇しました。数千人の参加者が、工夫をこらした衣装を身にまとい、目を引くパーフォーマンスを演じながら行進する様子は興味深く、つい最後まで見入ってしまいました。
 最近アメリカでは、オバマ大統領が同性婚を認める発言をしたことが大きな話題になっていますが、州レベルではマサチューセッツ州(ボストン含む)など数州ですでに同性婚が正式に認められています。同性婚に賛成のアメリカ人と話をしていてよく聞くのは、ゲイの方々に寛容な社会は、自分とことなるものに対して寛容な社会であり、だれにとっても住みやすい社会だ(だから同性婚に賛成だ)、という意見です。たしかにボストンは、よそ者の私にも住みやすい地域です。




 
 ところで今回のパレードには、いろいろな団体が参加していて、その点でも興味深いものでした。なかでも、1)教会(おもにユニタリアンの方々)の参加が多いこと、2)警察官が参加していること、3)バンカメなど企業の協賛も多いことに興味を覚えました。 
 アメリカでは、1791年施行の憲法修正第一条で、すべての人に自分の意見を公に表明する権利(表現の自由)が認められており、警察官を含む公務員にも政治活動の自由が認められています。保守、リベラルの違いに関係なくアメリカ人の多くは、これをアメリカの国是民主主義の根幹にかかわるものととらえています。ですから、このように警察官(公務員)がゲイ・プライド(行進)に参加することに少なくとも法律上の問題はありません。選挙活動も自由です。これはカナダも同じです。民主主義あるいはアメリカといっても、いろいろあって、本当にひとくくりにはできないなあ、と改めて感じた一日でした。


 上はどちらも教会のバーナーです




  パトカーは警備のためのものでなく、パトカー自体がパレードに参加しています。



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