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ブログ

2013年1月4日 

 新年あけましておめでとうございます。
 今年もよろしくお願いいたします。
  
 ところで、これからしばらくの間、ブログを新しく作った掲示板の方でだけ更新していきたいと思います。このページを見られた方には、お手数をおかけして申し訳ありませんが、上記クリックよろしくお願い申し上げます。

 ブログのトピック別一覧はこちらをご覧ください。



2012年12月29日 アメリカの電力事情:スマートグリッドと停電



 アメリカでは、使用電力の検針等をインターネットでおこなうスマートメーターが広く普及している。上の写真は、私の住んでいるアパートに設置されているGE社のスマートメーター。これが広く普及すると、人を介さず、コンピュター(ネットワーク)が自動的に電力のもっとも効率的な供給方法をリアルタイムで調整し続けるスマートグリッドができあがるそうだ(日本でも普及を目指す動きがあるようだが、その時には、現在の無骨な電力計の再現だけはとにかくやめて欲しい。こちらのメーターは、おしゃれな家の表にあっても、まったく問題ないようなデザインと小さなサイズになっている)。

 ところで、アメリカの電気代は日本よりかなり安い。地域(会社)によって価格は一様ではないが、たとえば私の先月の電気代(268KWH)は次のようになっている。ちなみに暖房代は家賃に含まれているので、これには含まれていない。

 発電料 17.95ドル
 送電料 28.66ドル(再生可能エネルギー料 0.13ドル含む)
 合計  46.61ドル=3962円 (1ドル=85円で計算)

 ちなみに東京で30Aの契約をしていたら、次のようになる。
 基本料金   819円
 電気量料金 約5994円
 合計 約6813円

 アメリカの電気が安いのには多くの理由がある。もっとも大きな理由はアメリカが石油や天然ガスの産出国だということだが(注1)、割り切ったサービスも低価格に大きく関係している。アメリカでは大きな災害でもないのに停電が多い。日本から来た人のなかには、アメリカ社会のダメさ、いいかげんさが表れていると言う人もいるが、それは違う。アメリカの電力会社は、停電を予防するために必要な投資と、停電の復旧などにかかる費用を比較して、投資をしないことを選択しているのである。それは、電気代を安くすることにつながり、電力会社だけでなく利用者のためにもなっているとされる。
 あたりまえだがサービスにはかならずコストがともなう。日本では停電がおきないのが普通なので、停電をなくすために多くのコストがかかっていることに気づきにくい。しかし、それはかならず電気料金に反映している。
 日本の「高」サービスに慣れていると、停電の多さ以外にも、アメリカでは憤慨することが多い。でも、気づきにくいが、その「高」サービスは値段に反映されているか、そうでなければサービス残業といった労働者の無償労働によって支えられている。値段に反映されている場合、しらないうちに需要を減らし、消費者の負担を増やしている面があるのではないか。労働者の無償労働に支えられている場合の問題は言うまでもないであろう
 サービスと価格(コスト)のあるべきバランスについて、もう少し考えてみたい。

注1: 電力売買の自由化をしている州の電気料金は、自由化していない州の電気料金より高いことが多く、自由化が電気料金を安くしているとは言い難い。



2012年12月24日 七面鳥



 
七面鳥を焼いてみた。初めてなのでスタッフィング(お腹に詰め物をする)はせずに、香りづけとしてローズとセージをお腹に入れて、オーブンで5時間焼いた結果が上のとおり。思ったより簡単だ。
 ひょっとすると贅沢に見えるかもしれないが、先日書いたように七面鳥はたったの1300円。後ろにあるメロンとスイカは、真冬だというのにそれぞれ2.99ドル(240円)なので、合わせても2千円いかない。
 七面鳥は1週間持ちそうな量があるので、これからしばらくの間は七面鳥ばかり食べることになりそうです。

 ところで、見た人が書き込める掲示板方式のブログページ(ミラーサイト)を作ってみた。しばらく様子をみたい。


2012年12月22日 クリスマスとTPP



 
もうすぐクリスマス。クリスマスはほとんどの店が休みになるので、今日、早めに食料の買いだめに行ってきた。そこで買ったのが、上の七面鳥。見てのとおり子供の頭ぐらいの大きさがあるが(重さは5sほど)、値段はたったの16ドル1300円:1ドル=80円で計算)。アメリカの家庭には、だいたいでかい電気オーブンがついているので、下ごしらえをしたあと、そこにほうりこんでおけば焼きあがるはずである。多分。
 ところでTPPが成立すれば、こうしたものがどっと日本国内に流れ込んでくることになる。日本では、TPPによって影響を受けるのはおもに農業と保険分野と言われているが、影響はもっと広くに及ぶはずである。これまで日本の経済学や経営学は、自動車など国際的に強い産業ばかりに目を向けてきたが、日本にはそれと同時に国際的に弱い産業がたくさんある。不況に強いということで就活で人気の食品産業も、たとえばそのひとつ。そのほかにも医薬、家庭用品など、低迷する日本経済にあって、それを下支えしている多くの産業が実は国際的には弱い産業である。建設業も、欧米諸国より高コスト体質で競争力が弱いと言われている。TPPは、こうした産業に大きな影響を及ぼす可能性があり懸念される。



 TPP推進論者は、日本企業の国際競争力の高さを信じている人が多いのではないだろうか。TPPで利益を得るのは結局は日本企業、日本経済だというわけである。しかし、上で述べたように、かならずしも楽観できない。上の写真は、アメリカでよく売れている携帯GPS。値段は80ドル(7千円)ぐらいからあり、200ドル(1万6千円)を超えると高い部類になる。今、家電量販店で見かけるのは、おもにGarmin(米)とTom Tom(オランダ)の製品である。どちらも生涯無料で地図の更新が受けられる仕組みになっている(ただし広告がつく)。高度の機能はついていないが、実用的には十分なレベルである。日本メーカーのものは、まったく見かけない。しばらく前に、ソニーが携帯GPSからの撤退を表明したが、欧米市場で今後日本メーカーが巻き返す可能性は小さい。日本企業の国際競争力は、過大評価されていることが多いように思う。TPPを前に、慎重な再評価(評価替え)が必要とされているのではないだろうか。



2012年12月13日 New reality in Japan: Nationalism prevails

World news about nationalism in Japan is here.


2012年12月12日 インフレターゲットから失業率ターゲットへ

 今日、連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は、失業率が6.5%以下になるまで現在の低金利政策を継続すると発表した。現在の失業率は7.7%。失業率が6.5%以下になるのは2015年末以降になると見られている(注)。

 バーナンキ議長はインフレターゲット論者として有名な経済学者。日本では、インフレターゲットというのは、デフレ解消の夢の特効薬のように理解されているが、アメリカではそのような意味合いは少なく、むしろ金融政策の透明化が強調されている。すなわち、従来は、インフレ率のほか失業率など様々な要因を考慮して金融政策が決定されていたため、市場は金融政策がいつ転換するかさまざまに憶測するしかなかった。しかし、インフレターゲットは、金融政策決定の基準としてインフレ率だけを利用する。つまりたとえ失業率が高止まりしていても、インフレ率が一定の水準を超えたら金融引き締めがおこなわれることになる。市場は、インフレ率の推移を見て金融政策を正しく予測することが可能になる(しかし高失業にもかかわらず、金融政策が引き締められる可能性があり、雇用軽視の問題がある)。
 しかし今回、FRBは、逆にもっぱら失業率を金融政策決定の基準にすることを明らかにした。FRBの雇用重視の姿勢が明らかになるとともに、政策決定の透明化もなされることになった。

Fed Ties Rates to Joblessness; 6.5% Is Target (2012/12/12) by New York Times

(注)私はもう少し楽観的な予測をしている。2011年と2012年、アメリカでは失業率がそれぞれ約1%低下している。大きなリセッションがなく、現在のペースで雇用回復が続けば、2013年末ないし2014年中に失業率が6.5%となる可能性もあるのではと思われる。ただ景気回復とともに、これまで雇用をあきらめていた人が新たに仕事を探し出し、失業率を押し上げることがよくあるので、実際に失業率が6.5%になるのはもう少し後になるかもしれない。

(2014年3月1日追記)
 結局、2013年12月の失業率は6.7%、2014年1月の失業率は6.6%と私が予想したとおりになった。ただしイエレンFRB新議長は、今年2月におこなわれた議会の公聴会で失業率が6.5%以下になってもかなりの間、低金利を継続する必要があると述べ、今後はいつどのような基準、タイミングで低金利を見直すかが大きな問題となる。


2012年12月11日 新自由主義と労働組合: ミシガン州でユニオンショップが禁止へ 

 今日、ハーバード大学で Peter A. Hall と Michèle Lamont 両氏による新自由主義が文化、価値観、アイデンティティーにどのような変化をもたらしたかをテーマとした講演があった。
 新自由主義というと政治や経済の変化が注目されがちだが、それは人々の考え方にも大きな影響を与えている。今日の講演では、新自由主義(1980年以降)による「政府はとにかく非効率であり、民間そして個々人の創意(起業精神)こそが活用、重視されなければならない」という考え方から、利己主義や自己責任論が強くなっていることがデータを使って示された。「自己責任論の強まり」はことさら新しい指摘ではないが、興味深かったのは自己責任の中身である。アメリカでは勤労といった努力の価値が失われ、失業などの問題は、労働者の努力に報いない企業や社会の問題というより、起業精神の不足(たとえば社会の変化に合わせて新しい知識を身につけられなかった個人の失敗)とみなされるようになってきたと言うのである。さらにHall氏は、こうした傾向と労働組合の退潮、格差問題との関連なども指摘し、興味深かかった。
 余談となるが、ハーバード大学には非常に多くの研究所があり、それぞれの研究所が毎週1回のペースでこうした講演会を開いている。そしてハーバード大学の研究者、学生は、こうした講演をつうじて著名な政治家、実業家、学者と交流することができるようになっている(講演参加者の規模は多くてもせいぜい50人ぐらい。2-30人ぐらいの参加のことが多い)。3兆円の基金を持ち、1年の学費が300万円を超えるアメリカのトップ私大だからできることである(注)。日本にも同様の仕組みがあればいいとは思うが、資金的にも時間的にも現在の日本の大学にはとても真似できない(単なる創意の不足ではないw)。

 関連して大きなニュースをひとつ。今日、ミシガン州で、公務員と民間労働者にユニオンショップ(組合加入の義務づけ)とエイジェンシーショップ(組合への費用の支払の義務づけ)を禁止する法律が成立した。アメリカでは、ミシガン州を含め24の州がユニオンショップを禁止している。しかし、そのほとんどの州は、組合に入らない労働者も、労働組合が会社と交渉することによって賃上げなどの利益を得ていることから、会社との交渉費用(組合費相当)を労働組合に支払う義務(エイジェンシーショップ)を定めている。しかし、今回、ミシガン州は、エイジェンシーショップも禁止とした。
 ミシガン州は、自動車産業の中心地でアメリカで5番目に組合組織率が高い州だが、労働組合や民主党の力が弱まっているように思われる。ミシガン州では、共和党が州議会の上院と下院で過半数を握り、知事も共和党である。今年の大統領選挙ではオバマ氏がミシガン州を制したが、同時におこなわれた州憲法修正案(ユニオンショップの保障の追加)の住民投票は57%対42%で否決されるなど、民主党や労働組合への支持の弱まりを示す事例にはこと欠かない。今日の講演との関連をいろいろ考えさせられる出来事だった。
 補足をひとつ。アメリカは多様な社会である。労働組合や民主党は、製造業の衰退によってミシガン州など中西部の工業地帯で支持を弱めているが、ヒスパニック系の移民が多く人口が増えている南部の一部州では逆に支持を増やしつつある。共和党が移民に厳しい姿勢を取り続ける限り、この傾向はかわりそうにない。現在は共和党の牙城(レッドステーツ)とされるテキサス州も、このままヒスパニック系住民の増加が続けば、将来は民主党の牙城(ブルーステーツ)にかわるだろうとも言われている。

(注1) ハーバード大学では、世帯収入が6万ドル以下(約500万円以下)の場合、学費は無料になる。また世帯収入が18万ドル以下(約1500万円以下)の場合、学費は世帯収入の10%となる(つまり50万円から150万円)。なおアメリカの大学には、入学金という制度はない。  <1ドル=80円で計算>